以前このブログで、

 

宮城谷昌光の「孟夏の太陽」という連作短編集について

 

書いたことがあります。

 

この中で一番好きなエピソードは次のようなものです。

 

 

四作の短編の中の最終話である

 

「隼の城」の中にある話です。

 

 

主人公は趙無恤(ちょうぶじゅつ)。

 

あまり知られていない名前かもしれませんが、

 

今大人気の漫画「キングダム」で、

 

主人公の属する「秦」の国のライバルとして登場する

 

「趙」という国を事実上作った人です。

 

 

「趙」は「晋」という国から分かれてできた国です。

 

当時の「晋」は4人の卿が実権を握っており、

 

趙無恤はその4人の中の1人でした。

 

 

ところが趙無恤は、

 

4人の中で最大勢力だった知瑶(智瑶)と対立します。

 

他の2人の卿も実力者である知瑶についたので、

 

趙無恤は単独で3人の卿の軍と

 

戦うことになるのです。

 

 

このとき趙無恤は、「晋陽」という邑に立てこもって

 

戦うことを決意します。

 

ところが晋陽の邑は城壁が破れ、

 

食糧も、財物も武器もないのです。

 

とても籠城戦ができるような邑ではありません。

 

 

ところがその「晋陽」の邑は、

 

有能な家臣が税を軽くし、

 

善政でもって治めた邑でした。

 

ですから民は趙氏に心服しており、

 

豊かでもあったので、

 

掛け声ひとつで倉庫からあふれるほどの

 

食料と武器、財物が集まりました。

 

破れた城壁もわずか5日で修理が完了したのです。

 

 

結局趙無恤は、知瑶以外の2人の卿も味方につけ、

 

知瑶を滅ぼします。

 

この戦いを「晋陽の戦い」といいます。

 

 

この戦い以降、晋の国は事実上趙、韓、魏に三分されます。

 

そしてこの戦いを境にして、

 

「春秋時代」から「戦国時代」になるのです。

 

 

ちなみに、中国人が最も好きな故事として、

 

「趙氏孤児」という話がありますが、

 

その話もこの「孟夏の太陽」に載っています。

 

それとどちらにするか迷いました。