30年ぐらい前は私も大学生でした。

当時はバブル景気で、

世の中が全体的に浮かれていました。


クリスマスイブになると、

「カップルで過ごせない人は恥ずかしい」

という雰囲気でした。

彼女がいない人も、

いるふりをしなければいけない

ぐらいだったのです。


しかも、なぜかカップルで

フランス料理のフルコースを

食べなければいけなかったのです。

「なぜ?」と聞かれても困りますが、

世の中全体が、「そうするのが当たり前」

という雰囲気だったのです。


でも、世の中にフランス料理の

フルコースを出す店は、

それほど多くはありません。

ですから、普段はただの喫茶店や

洋食屋なのに、

クリスマスイブだけはなぜか

フランス料理のフルコースを出す店が

あちこちにありました。

当然ながら、ちょっと調理するだけで

それっぽい料理が出せる

業務用の食材があったのでしょう。


そんなフルコースでも、

1人前で2万円近くしたのです。

しかも、そういう店でも

すぐに満員になっていました。

よくわかりませんが、

そういう不思議な時代だったのです。


私は当時、今の家内と付き合っていて、

なんとなくフランス料理の

プレッシャーを感じていました。


もちろん「エセフランス料理店」であれば、

予約できないことはありません。

ただ、そんな料理に2万円近いお金を払うのは、

どう考えても納得できなかったのです。

それで私が提案したのは、

「ふぐ料理のフルコース」でした。


フランス料理の店ならば、

クリスマスイブは大混雑です。

ところがふぐ料理の店であれば、

それほど混雑してはいません。


しかもフランス料理よりは値段も安いし、

「美味しさ」という点においても、

「エセフランス料理」には負けないでしょう。

当然食べたことはないので、

もともと食べてみたいという気持ちもありました。


提案してみたところ、

うちの家内の反応は微妙でした。

とにかく当時は、

「フランス料理のフルコースに

 連れて行ってもらえない女の人は負け組」

という雰囲気だったのです。

そういう雰囲気のときに

「ふぐ料理」を提案されたら、

それは微妙な反応になるでしょう。


ただ、私の強い意向もあって、

結局ふぐ料理を食べに行くことになりました。


最初はあまり乗り気ではなかった家内ですが、

ふぐ料理はかなり美味しかったようです。

特に最後の雑炊は、

相当気に入ったようでした。


何を言いたいのかというと、

私は世間一般の人がどう思うかとか、

世間体がどうかとかいうことは

どうでもいいのです。

自分が良いと思うものは

自信を持って「良い」と言うし、

逆に良いと思わないことは、

周りの全員がやっていたとしても、

やろうとは思いません。


明日がクリスマスイブなので、

そんなことを思い出しました。