お別れの会にはたくさんの人が集まっていました。

 

古びた木造の二階建ての二階には

 

部屋の両脇にテーブルが置いてあり

 

そのテーブルには故人の持ち物が置いてありました。

 

部屋には一周の円を描く様に椅子が並べてありましたが

 

その椅子の数では足りないくらいの人が集まっていて

 

みんな床に座ったり、後ろの方に立ったりしていました。

 

私たちは床に座りました。

 

亡くなった青年の母親が会を始める言葉を唱えたのですが

 

東から始まって、西、南、北にそれぞれ話しかけ

 

大地、空、そして自分自身の中にある物

 

7つのエレメントに呼びかけました。

 

彼女はドイツ人なのですが

 

以前、離婚がきちんと成立した時に友達を集めて

 

森の中で儀式の様なお祝いみたいな事をやったのですが

 

とってもスピリチュアルな人で、良い魔女・・・みたいな感じがしました。

 

今回も大事な息子の魂を見送るお別れ会に

 

7つのエレメントにも集まって貰う、という様な感じで話しかけていました。

 

そしてみんなの前で彼女が話をして

 

それから、亡くなった息子さんについての話を録音すると言って

 

そこに集まる人たちがボランティアで名乗り出て話をし始めました。

 

息子を亡くした母親に

 

『大丈夫?』と聞く人が居るそうですが

 

『は?大丈夫なわけ無いわよ。ね?』とスピーチで言っていました。

 

私もどんな言葉をかけるのが良いのか

 

もしも自分が彼女の立場だったらどうしているだろうか?とか

 

色々考えていたので

 

彼女には大きくうなずいてしまいました。

 

彼女の話から分かった事は

 

ハリと同じ歳の息子さんは14歳の頃から鬱病を発症していて

 

鬱病とずっと折り合いをつけようと努力をしてきたそうでした。

 

親子で人の生命や死についてたくさん話し合ったそうです。

 

そして息子さんは、14歳の2倍の28歳までは生きると

 

お母さんと約束したそうでしたが

 

その6年後に、もうこれ以上は無理だと言って

 

自らの命を絶ってしまったそうです。

 

母親の何も知らないところで何かが起きていたのでは無く

 

親子できちんと向き合って、一緒に対処しようと努力してきたけれど

 

彼は自分自身を平和な場所に連れて行きたいと遺書を書いて

 

亡くなってしまったのです。

 

カウンセリングにかかりたく無いと言って拒否していたとか

 

そばにいた人たちは、親以外は気付いていない人もいたとか

 

お母さんのスピーチの後に話をしてくれた人々から

 

今までずっと遠のいていて知らずにいた彼の一面を知る事が出来ました。

 

ガールフレンドが居て2年半付き合っていたそうですが

 

そのガールフレンドからの手紙にも涙が止まりませんでした。

 

彼との思い出を幾つか語った後に、彼に対して書いてきた手紙をみんなの前で読んだのでした。

 

彼のおかげで自分を大切にする事を知り、自分を見つめる事を知った彼女は

 

彼の病気を理解し、寄り添おうと思っていたみたいですが

 

だんだんと彼の精神がおかしくなっていき

 

これ以上一緒にいると、彼女も壊れてしまう、

 

そばにいて自分を傷つけたく無い・・・と思い

 

彼女は別れる事を決めたそうです。

 

彼女から別れを告げられた時に彼はとても怒っていたそうですが

 

彼女は

 

『でも私を大切に考えてくれていたあなただからこそ、あなたのせいで私が傷ついたりしたら

 

自分自身を許せなくなっていたと思うよ、だから別れた私を許してね。』という様な事を

 

言っていました。

 

大好きだからこそ、お互いにとって何が大事なのかと考えたのでしょう。

 

同級生の女友達とその家族も、

 

『あの子は毎日の様に家に遊びに来ていたけど

 

鬱で悩んでいるなんてそぶりは見せなかった、いつも笑っていたのに・・・。』と

 

天にいるであろう彼に向かって怒っていました。

 

彼は小さい頃からなんでも知っていて

 

なんでもできて

 

それに対してとても自信を持って居る様な人で

 

話す人みんなが

 

『こんな事を手伝ってくれた。』

 

『こんな風に助けてくれた。』と口々に言っていました。

 

でも本人は

 

『僕は誰の役にも立たない人間だ。』と言っていたそうで

 

その話を聞いて集まっていた人たちが涙を流しながら笑いました

 

『あんなに人が嫌いだって言っていた人の為に、こんなにも多くの人が集まっているね。

 

人が嫌いという言葉の背後に、人類を愛している・・・・という言葉が隠れていた気がする。』と

 

みんなが話していました。

 

パーティーとか集まりがある時は、誰よりも早く来て裏方に回り

 

準備などを手伝ってくれたし

 

何かが壊れたらすぐに直してくれたそうです。

 

話を聞けば聞くほど、彼の魅力が聞こえてきて

 

長いことその姿を見ないで居たことを悔やみました。

 

みんなが話している彼をもっと見てみたかった

 

知っていたかった。

 

私にとっては彼が苦しんでいた時期の気持ちなどは想像できないのですが

 

それでもたくさんの友達や仲間たちや大人たちに見守られながら

 

内容の濃い人生を歩んでいたのだなあと感じました。

 

お母さんの話から始まり

 

近所の人だとか、同級生の友達だとか

 

ふっと思いついた人たちがみんなの前で彼についての思い出を語って行ったのですが

 

私は涙がどんどん出てきて、ずっと泣きっぱなしの状態でした。