脳内ポイズンベリー(2015年) 
【キャスト】
真木よう子…櫻井いちこ役
西島秀俊…吉田役
神木隆之介…石橋役
吉田羊…池田役
桜田ひより…ハトコ役
浅野和之…岸役
古川雄輝…早乙女亮一役
成河…越智役

【ストーリー】
櫻井いちこは以前、飲み会で出会って気になっていた年下男子の早乙女に偶然再会する。

声をかけるべきか、かけないべきか?食事に誘うべきか、誘わないべきか?

いちこの脳内では男女5人のメンバー(理性、ポジティブ、ネガティブ、衝動、記憶)が会議を繰り広げ、大パニック状態に。いちこ自身が思いもよらないような大胆な行動をとりはじめるが…。

【感想】

「失恋ショコラティエ」で知られる漫画家・水城せとなの同名コミックの映画版です。原作ファンなので映画化されるのをとても楽しみにしてました。

ストーリー自体は、魅力的な年下君と心安らぐ大人の男性に揺れ動くアラサー女性っていうもので目新しさはないです。が、この漫画の魅力っていうのは、脳内にある5つの思考を擬人化して描き、それらに会議を開かせることによって、恋愛中に感じるときめきや喜び、モヤモヤや苛立ち、それから相手の一挙手一投足に一喜一憂してワチャワチャしちゃうところなど、女性の心の揺れっていうのをとても細やかに丁寧に表現しているところにあると思ってます。

ということで、映画版ではこの脳内会議がどんな風に描かれるのか、とても興味がありました。しかも監督が映画『キサラギ』と同じ監督ということで、それだけでもう、脳内会議がどんな感じかイメージできてしまうというか。これは面白くならないはずがないなと。

で、感想ですが…、二つの芝居を見ているような気分になりました。見終わった後は軽く疲れました。現実パートと脳内パートが同時進行してて、その間を行ったり来たりするので、何かあると自分もいちこと同じように自問自答を繰り返してパニックになるような気分にさせられるというか。感情移入してしまって他人ごととしてストーリーを追えないんですよね。

いちこが一目惚れした相手・早乙女。アーティストタイプで自分の思うままに生きているようなタイプ。何を考えているか分からなくてちょっと冷たい感じの人なんですけど、恋愛においては感情をストレートに表現するし、ルックスもよくていざというときに狙った獲物をサーッとかっさらっていくようなキャラなんですよ。女がだめだだめだと思いつつ引っかかってハマッてしまうような人。

対して越智さんは一緒にいて心が安らぐいい人なんですけど、心がときめかない。自分に好意を寄せてくれているのに、いちこの気持ちはイマイチ盛り上がりません。

早乙女と付き合い続けることで一旦は納得したいちこですが、結婚、仕事、相性など、「本当にこの人でいいの?」という迷いは消えません。勝手気ままな早乙女に対して合わせてばかりで、険悪になるのが怖くて思っていることも言えなくなってきてしまい、どんどん疲れていってしまうんですね。楽しいばかりじゃいられないこういう部分が結構漫画も、映画もリアルに描かれていました。

さて、私が一番楽しみにしていた脳内会議のキャストはこちら↓

メンバーは漫画のイメージにほぼ忠実だと思いました。石橋と池田が重要だなと思っていたのですが、この二人だったので安心して見れました。

まず、池田役の吉田羊。年齢も年齢だし、感情だけでは突っ走れない、恋愛で痛い思いもしてきたがゆえのネガティブさっていうのを巧みに表情とセリフの言い回しで表現していたと思います。

吉田羊本人が「池田が話すことによって見ている人がイラッとしたら成功」と言っていたとおり、ギスギスしてるしよく怒鳴るしこわいし池田が口を開くと緊張するんですが、決してそれだけではなくて、彼女が時折見せる疲れた顔や寂しそうな顔からアラサー女性の悲哀というか、もろさみたいなものが出ていて共感できました。

続いてポジティブ石橋を演じている神木隆之介。常に楽観的に考えようとする底抜けに明るいキャラを溌剌と演じていました。元気すぎて暑苦しいところが気に入りました。若さ溢れる力の入った演技は見ていて楽しかったです。

石橋と池田は何かにつけて意見が食い違って口論(というか討論?)になります。あーいえばこーいうといった感じで怒濤のセリフの応酬を繰り広げるのですが、この時の二人の必死な形相、動きは見ていて思わず笑ってしまいました。

議長で理性担当の吉田は常にオロオロしていて石橋、池田、ハトコに振り回されっぱなし。会議の収拾がつかなくなることもしばしば。いちこの思考が限界MAXになると謎の女「本能」に会議を乗っ取られてしまうこともあったり…。クールでおだやかなイメージの西島秀俊がここではうろたえ、わめき、頭を抱えたりともう大変。でも、こういうキャラが意外とハマってるなと思いました。

対して現実パートのキャスト。この三人は、原作とはちょっとイメージが違いました。でも、映画は映画として見れば違和感なく見れました。

映画版は、約2時間のなかで話をまとめなくてはいけないため、ところどころ原作のエピソードを端折ってます。が、原作の世界観を保ちつつ作品が作られているので、見ていて物足りないと思うことはありませんでした。

クライマックスの脳内会議シーン、それからいちこの携帯小説の出版パーティー後に早乙女と越智さんが言い争いをするシーンは映画版ならではの面白さがあって良かったと思います。あの言い争いシーンがあったからこそいちこの越智への印象が変わり、映画版のラストにつながったのかなとも思いました。オリジナルエピソードを盛り込んではいますが、脚本家が恋愛ドラマの名手・相沢友子なだけあってストーリーがしっかりした恋愛映画になっていました。

いちこにとって本当の幸せとは何なのか?崩壊寸前にまで追い込まれた脳内チームが出した答えとは?結末はぜひ映画館でチェックしてみてください。
白ゆき姫殺人事件


白ゆき姫殺人事件(2014年) 

【キャスト】
綾野剛…赤星雄治役
井上真央…城野美姫役
菜々緒…三木典子役
蓮佛美沙子…狩野里沙子役
小野恵令奈…満島栄美役
金子ノブアキ…篠山聡史役
谷村美月…前谷みのり役
貫地谷しほり…谷村夕子役

【ストーリー】
国定公園・しぐれ谷で誰もが認める美人OLが惨殺された。全身をめった刺しにされ、その後、火をつけられた不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まる。
彼女の名前は城野美姫(井上真央)。同期入社した被害者の三木典子(菜々緒)とは対照的に地味で特徴のないOLだ。

テレビ局でワイドショーを制作するディレクター・赤星雄治(綾野剛)は、彼女の行動に疑問を抱き、その足取りを追いかける。

取材を通じてさまざまな噂を語り始める、美姫の同僚・同級生・家族・故郷の人々。
テレビ報道は過熱し、ネットは炎上。噂が噂を呼び、口コミの恐怖は広がっていく。

果たして城野美姫は残忍な魔女なのか? それとも──。

【感想】
いやー、怖かった。

チラシのイメージ、それからタイトルからポップな話を想像してたのですが、結構ズシンとくる内容でしたね。見終わったあと、自分のことではないのに落ち込んでしまいました。

三木典子


物語は菜々緒演じる三木典子が殺される場面からスタートします。彼女の勤めていた日の出化粧品の大ヒット商品が『白ゆき石鹸』だったこと、さらに彼女が絶世の美女だったことから事件は白ゆき姫殺人事件と呼ばれるようになり、世間から注目を集めることになります。


番組制作会社の契約社員である赤星は、被害者を慕っていた日の出化粧品の後輩社員で、自分の同級生である狩野里沙子からのリークにより、周囲から犯人と疑われている女性社員、城野美姫の存在を知ります。「これは大スクープになるぞ」と色めき立った赤星は独自で彼女に対する取材を始めます。

で、城野美姫のことを色々、女性社員だとか、恋人だと思われる男性社員だとか、はたまた彼女の地元の住民とかに聞いて回っていくのですが、そこで浮かび上がってくる城野美姫の人物像っていうのが、陰湿で、ストーカー気質で、執念深くて…ってものなんですね。しかも、事件の夜から行方不明になっているという。

「これは怪しい、絶対怪しい」ってことで、赤星は城野美姫をほぼ犯人と断定したかのような番組を作って放送に乗っけてしまうわけです。名前は伏せてますが、見る人が見ればすぐに対象者が誰だか分かってしまうような内容で。

これを見たネット住民たちが騒ぎ始めて、あっという間に疑われている人物というのが城野美姫ということがバレてしまい、彼女は犯人扱いされて個人情報を晒され、追い詰められていくんですね。

赤星雄治

ここまで読めばわかってしまうと思うのですが、城野美姫は犯人ではありません。ではなぜ、無実の彼女が殺人者に仕立て上げられてしまったのか?

それは、赤星がインタビューした人々の証言を鵜呑みにして、城野美姫が犯人だと思い込んで番組を作ってしまったから。

満島栄美

証言者は、城野美姫について自分の先入観、彼女に抱いているイメージや感情、過去に起きた出来事なんかから事実を歪曲したり、自分流に味付けして話を作ったり、嘘を言ったりしてしまうんです。「彼女は犯人だと思うからあの行動もきっとそうだったんだろう」的な憶測で決めつけたような証言をする人もいるんですよね。

城野美姫の親友は二人出てきます。

前谷みのり

一人は大学時代の友人。

谷村夕子

そして、小学校時代の友人。

二人とも城野美姫のことを心の底から心配し、「彼女は殺人なんて犯すような人間じゃない」と言うような証言をします。ですが、そのうちの一人の行動は、すごく、すごく歪んでいます。私は彼女がこの映画の登場人物の中で一番怖いと思いました。

犯人は一体誰なのか?それは映画の続きをご覧下さい。

SNSって、メディアって怖いな。と、時々事件なんかを通して感じることがあります。この映画はその怖さを淡々と、でも、毒々しく描いていると思いました。

最後に、城野美姫には唯一心を許せるダイアナという存在がいて本当に良かったなと思いました。それが、この作品の救いであり、希望ですね。クライマックスのロウソクを使ったシーンは思わずジーンときてしまいました。
城野美姫

愛なんていらねえよ、夏 (2002年放送) 

【キャスト】
渡部篤郎…白鳥レイジ役
広末涼子…鷹園亜子役
藤原竜也…芥川奈留役
鈴木一真…五十嵐彰役
ゴルゴ松本…一条晴男役
半海一晃…真壁恭一役
西山繭子…名波季理子役
松尾玲央…伊藤楓役
石田えり…須之内あさみ役
森本レオ…ウエダタクロー役
坂口良子…中田咲子役

【ストーリー】
新宿歌舞伎町のキングとまで言われ、絶頂を極めたホストのレイジ(渡部篤郎)は、自分に貢いでいた客の女が勤めている信用金庫で横領を働いたため、横領を教唆したとして逮捕される。

半年後、出所したレイジを待っていたのは7億3千万円もの借金だった。返済期間は二ヵ月。返せなければ命はないと知り、途方に暮れるレイジの前に一人の弁護士が現れる。彼は、鎌倉に豪邸を構える令嬢・鷹園亜子の生き別れた兄・鷹園礼慈を探していたが、同じ名前のレイジがその人物だと勘違いする。

礼慈が交通事故で既に亡くなっていることを知っているレイジは、礼慈になりすまして亜子に近づき、彼女の財産で借金を返済しようと企む。女性をだますことを仕事にしてきたようなレイジにとって、小娘一人を丸め込むなどたやすいことに思えたが、そこにいたのは心をかたくなに閉ざした盲目の少女だった。

【感想】

ああもう、このオープニングタイトルの画像を見ているだけで泣けてくる…。

脚本、役者の演技、演出、音楽の全てにおいて素晴らしいドラマでした。私が見てきたドラマのなかでダントツのNO.1です。

龍居由佳里の書いた脚本が最高に良かった。

主人公のレイジは莫大な借金を背負い(その額なんと7億3千万!)、返済しなきゃ殺しますと脅され、生きるか死ぬかって時に、事故死した自分の子分が実は最近亡くなった大手IT会社社長の息子だったことに気づく。子分はタメゴローってあだ名なんですけど、タメゴローは両親が幼い時に離婚して、母親と二人、ひっそりと生きてきたんですね。生き別れた妹がずっと気がかりだったけれど、会えないまま事故死してしまう。


広末涼子演じる妹の亜子はそのことを知らない。ならばその妹に「生き別れたお兄ちゃんだよ~」と近づいて、騙して、必要になったら得意の色仕掛けで迫ったりして遺産を根こそぎ奪っちゃおう、目も見えないことだし、シメシメと思って接近するんですね。

ですが、猜疑心の塊みたいな亜子に自分と同じ匂いを感じてしまったことでレイジの計算が狂っていきます。内心では亜子に対して徐々に心を開きたくなっていくのに自分の命をかけて大嘘をついちゃったもんだから騙すことをそうそう簡単にやめられない。亜子の財産が手に入らない=死を意味するので罪悪感に苛まれながらもレイジは彼女を騙し続けようとする。金か良心かでグラグラと揺れ動くレイジの不安定な心がとてもリアルに描かれていたと思います。


最初はレイジのキャラが本当に受け付けなくてねー。「なんて性悪なキャラなんだ!」ってムカつきながら見ていたんですよ。女に貢がせるためなら手段も言葉も選ばないし、しかもその言葉が歯が浮くくらい気持ち悪い。さらに鷹園家に図々しく入り込んで、人間不信になりながらも健気に生きている亜子を陰では鼻で笑っているし。史上最低の主役だと思ってました。

それがいつの間にか感情移入して見るようになり、最終的にはレイジ大好きになってしまったのは、龍居マジックか、はたまた篤郎マジックか?

渡部篤郎は、このドラマで演技についてかなり悩んだそうですが、特に悩んだシーンがこのシーンなのだとか↓

「自分のキャリアやキャパシティじゃ無理」と思うほどいっぱいいっぱいになりながら演じていたそうですよ。このシーンはレイジがゴミ箱を前に自分の出生について淡々と亜子に話して聞かせるシーンですね。自分が偽物の礼慈だと亜子にバレたくないけれど、本音では全てをバラして自分をさらけ出してしまいたい、そんなレイジの気持ちが透けて見えるようなシーンです。


広末涼子も亜子をとても魅力的に演じていましたね。表情がとても良かったです。狭い世界の中で、幼少の頃からほぼ咲意外とはかかわらずに生きてきたせいで、亜子は子どものまま大人になってしまったような部分があります。そういう幼さが上手く表現されていたし、時折見せる、怒ったような、泣き出しそうななんとも言えない表情がとても印象的でした。

そしてこの二人の存在感は凄かった。

発言が男前な女ブラックジャック、須之内先生と地獄の借金回収人のタクロー。借金を返済しないと注射1本で殺して内臓とか売っちゃうって…。闇金ウシジマ君の借金回収方法を見ていても思ったけど、この人たちの世界って怖いよー。

毎回楽しみにしてたのがタクローとレイジの軽口を叩き合うシーン。ゾッとするような話を笑顔で話すところは見ていてゾワゾワっとしました。

グラウンドでのレイジ土下座のシーン、それから最終回での病院前のシーンは圧巻です。森本レオと渡部篤郎の役者魂がぶつかり合うような素晴らしいシーンでした。


その他、一癖も二癖もある脇キャラの皆様。ここに普通なんだろうけどどこか変態っぽい五十嵐(鈴木一真)が加わります。


パッと見は無邪気な仔犬キャラなのに、レイジへの強い憧れがどんどん違った方向に進んでいって「こいつはいつか絶対何かやるで」とワクワク、いや、ハラハラさせてくれた奈留。こういう役をやると藤原竜也はハマリますよね。

おばさんの哀愁と凄みを見せてくれた咲。亜子に殺意を抱きながらも表向きは良き母親がわりを演じるお手伝いさん。この人が一番何を考えているか分からなくて怖かった。

それからこのドラマ、メインの演出家が堤幸彦ということで、今回も作品の随所に小ネタというか、ツッコミを入れたくなるような笑えるポイントがちりばめられていました。例えば、なぜか伊勢海老にガッツく真壁&五十嵐コンビ。真壁、手も口もベッタベタです。



季理子と奈留の後ろで繰り広げられる謎の胴上げ。


なぜか突然ナイルが大繁盛。かまくらカレーに狂喜するおばちゃん。

とかね…。いろいろ探してみると面白いかもしれません。

LAST10のお経本の印刷文字のドットからカメラを全体に引いていくシーン、それからLAST2の指輪を闇夜に投げ捨てるシーンなどは堤監督の独特な感性が活かされたシーンで自分にとっては特に印象的でした。LAST1でタクローと春男ちゃんの会話シーンで差し込まれるザラついた海の映像もノスタルジックで良かったです。

そして、一番のお気に入りは、タイトルバックの映像です。光の中で微笑む亜子と暗闇の中でこちらを見つめるレイジが交互に映し出されるというただそれだけの映像なのに、見入ってしまうんですよね。この映像の広末涼子の表情はとてもピュアで綺麗です。


最初の方は亜子だけ見えてレイジの顔が暗くて見えない。それが回を追うごとに徐々にレイジに光があたり、少しずつ見えるようになっていくのに、中盤からまた見えなくなりはじめ、LAST2では全くレイジの顔が暗くなって見えなくなってしまうという演出。たったこれだけで二人の関係性やレイジの死を上手く暗示しているなと思いました。

ラストで亜子が見せる笑顔。この後に続く泣き笑いの表情を見て「良かったね、良かったね」と思わず大号泣。


エンディングの最後には「thank you,so long Autumn has come…」の文字が。二人にとって夏が終わり、秋がやってくることの幸せ。このドラマを見てきて本当に良かったと心から思った瞬間でした。

あなたは私の婿になる(原題: The Proposal) 2009年製作 アメリカ映画

【キャスト】
サンドラ・ブロック…マーガレット・テイト役
ライアン・レイノルズ…アンドリュー・パクストン役
ベティ・ホワイト…アニー・パクストン役
クレイグ・T・ネルソン…ジョー・パクストン役
メアリー・スティーンバージェン…グレイス・パクストン役
オスカー・ヌニェス…ラモーン役
デニス・オヘア…ギルバートソン役
マリン・アッカーマン…ガートルード役

【ストーリー】
ニューヨークの出版社で編集長を務めるカナダ人のマーガレットは、40歳独身のキャリア女子。彼女は性格が気難しく、部下に無理難題を押し付けるため、社員からは“魔女”とあだ名をつけられ嫌われていた。

ある日マーガレットは、忙しさのあまりビザの申請を怠ったため、国外退去を命じられてしまう。これまで築いてきたキャリアを失いたくない彼女は、3年間部下として使ってきたアメリカ人で28歳のアンドリューと偽装結婚をして難を逃れようと企む。

市民権・移民局の局員であるギルバートソンは二人が偽装結婚をしようとしているのではないかと疑うが週明けにもう一度面会して決定を下すと伝える。

マーガレットは成り行きでアンドリューの祖母の誕生祝に出席することになり、彼の実家のあるアラスカへアンドリューとともに向かう。

【レビュー】
アメリカンラブコメディ、好きなんです。設定を見た段階でもう話の展開が読めるけど、楽しそうでついつい見てしまう。

ラブコメの設定って、もう、ありとあらゆるものが出尽くしてる感じがします。なのでありきたりな設定でも特に気にしません。それよりも話の過程でいかに面白いエピソードを盛り込んで笑わせてくれるかが肝心だと思う。そこがおざなりだと「あー」ってがっかりしてしまいます。

まー、そんな私のラブコメへの思いは置いといて、この映画の感想を書く事にしましょう。

仕事には厳しいしツンツンしてるし冗談はきかないし部下の希望にも耳を傾けないしで社員からは敬遠されている鬼編集長マーガレット。…なんだけど、超嫌な奴に見えないのはなぜだろう。サンドラが演じているから?

ビザの申請を怠って、国外退去しなければならなくなったマーガレットはとっさにアシスタントとしてコキ使ってきたアンドリューと結婚することを思いつく。で、『私たち結婚するので国外退去なんてしなくていいよね?』とボスに報告。なんのことやらさっぱり意味が分からないアンドリュー。この時のボケーっとした顔がおマヌケな感じで良かったです。

アンドリューは自分が編集者に昇格することと気に入った作家の原稿を出版することをマーガレットに認めさせ、偽装結婚の申し出を受け入れることにします。
2500ドルの罰金と懲役5年の重犯罪者になるかもしれないというリスクを負いながらたったこれだけの条件のために結婚しようとするとはなんてリスキーな。そんな簡単に決めてもいいの?と思わず突っ込みたくなりました。


ギルバートソンに『週末は祖母の誕生日会に出席するため実家に二人で帰る』と言ってしまったため、アンドリューとマーガレットはアラスカへ旅立ちます。で、帰ってきてそうそう大勢の参加者の前で『僕たち結婚します』と報告する羽目に。色めき立った周囲からキスを催促される二人。お互い嫌がってるので軽くチュッで済ませようとしますが周りはもちろん納得しない。『もっとちゃんとやれよ~』とけしかけるアンドリューの親友。いるいる、こういうヤツ。

マーガレットを歓迎したアンドリューのママやおばあちゃんが
『女性だけの秘密の場所に連れて行ってあげたいの』と言って連れて行った場所がココだ~!!(やっぱりコレか!!)
村でただひとりのストリッパー・ラモーンの前に引っ張り出され、ニヤニヤしながら怪しげな動きをされて引いてしまうマーガレット。

犬抱いて走ったり、

祈りのダンスをおばあちゃんと踊ったり…

意外と天然で可愛らしいマーガレット。無邪気だったり、素朴な一面を見て彼女に対する感情が少しずつ変化してくるアンドリューなのですが…という話。さーここからどうなるんでしょうか?続きはDVDで!(と、いきなりまとめに入ってみる)

本作ではサンドラがコメディエンヌとしての才能を大いに発揮しています。本作はサンドラを見るための映画といっても過言ではありません。表情の作り方、セリフの言い回し、間合いの取り方が抜群に上手い。そして可愛い!オロオロしながら笑いをとっちゃうところがサイコー。

サンドラの体を張った演技も素晴らしかったです。大女優なのにこんなことまでして、(この画像だとタオルで上下隠れてますけど、実際は上を腕で隠し、下をタオルで隠して部屋中を走り回ってます)この潔さに拍手を送りたい!!

あと、私、この映画で初めてライアン・レイノルズを知ったのですが、彼が脱いだ時のナイスバディぶりに驚かされました。草食系のキャラとのギャップが…。っていうかどうやったらこんな体作れるの?

こんなんですから!!こんなんですから!!

脇役もいい味出してました。さっきのストリッパー兼雑貨屋の店員兼牧師のラモーン。怪しくて、気持ち悪いラモーン。会うたびマーガレットにドン引きされるラモーン。

そしてめちゃめちゃきれいなアンドリューのママンと、お茶目でキュートなおばあちゃん。このおばあちゃん、とってもいい味出してました。

たくさん笑えて見終わったあとほっこりできる作品です。カップルで見ても楽しめると思いますよ。
今までドラマ、映画のレビューを書いてましたが、MVでもストーリー仕立てで面白いものが結構あるんで紹介していこうと思います。

今回紹介するのは久保田利伸の『声にできない』。
この曲は東野圭吾の同名ベストセラー小説を映画化した『夜明けの街で』のエンディングテーマです。

映画は不倫の恋に溺れていく男女を描いたサスペンスらしいです。制作者側は「大人の恋を歌い上げてほしい」と久保田利伸に楽曲制作をオファー。久保田利伸は以前から彼の代表曲『missing』と同じ世界観の曲を制作したいと考えていて、そのアイディアを制作者側に提案したところ、映画のテーマにピッタリとハマり、この曲が作られることになったそうです。

『missing』と同じ世界観ということをふまえて二つの歌詞を比べると面白いですよ。『missing』には「言葉にできるのなら 少しはましさ」というフレーズがあります。この歌詞にリンクするかのようなタイトル『声にできない』。そして歌詞には「たどり着く場所もないまま 閉じ込められたmissing you」とある。聞いていて思わずニヤリとしてしまう仕掛けがニクいです。

同じ世界観を歌った曲でも雰囲気がまた違うのも興味深いです。ひたむきでナイーブさを感じさせる『missing』の歌詞。『声にできない』では刹那的で離れられない感情を歌っています。ちょっと青さのある20代に書いた歌詞と艶のある40代の歌詞の違いにぜひ注目してほしいです。

さて、MVですが、この世界はまさに映画『CUBE』の世界ですね。でも、『CUBE』は死のトラップをくぐり抜けて脱出を試みるホラーなのに対し、こちらは脱出を試みるというよりも引き離された恋人を追いかけ続けるラブストーリーになってます。

場所はこんな感じ。謎の立方体の小部屋が無数にある集合体みたいな異次元空間。この部屋の位置はランダムに引っ込んだり出っ張ったり、左右にズレたりして変化していると思われます。

この空間にある別々の部屋で目覚める男女。男は意識を失って横たわっている。女は何かを思い出したような、そうでないようなぼんやりとした表情をしている。

自分が奇妙な空間に閉じ込められていることに気づいた女は脱出ルートを探そうとする。しかし、出口はどこにも見つからない。

突如二人の前に出現する扉。

目覚めた男は扉を開けて、隣の部屋に移動する。

別の部屋から脱出した女は部屋を移動する男の後ろ姿を見つけ、喜び、追いかける。

…が、扉がまた突然消えてしまう。

女は悲しみの涙を流す。

女の流した涙が、雨となって男のいる部屋に降ってくる。

悲しみから女の真っ白な服は赤く染まっていく。

その瞬間、重なり合っていた男のいる部屋と女のいる部屋の壁がスケルトンに変化し、互いを見つけた二人は必死に壁越しに手と手を重ね合わせる。

しかし、赤く染まった女の服がまた白く戻っていくのに合わせて壁も見えなくなってしまい、二人の部屋を隔てる新たな空間が生まれてしまう。

動き始める立方体。

男は再び見つけた扉を開くが、そこには無限に広がる空間が存在するだけ。

女はいつか見た風景の絵を眺めている。


この後また冒頭の横たわっている男の映像が出てくるんですよね。
なので、また同じことがループするんでしょうね。恐らく、だから最初の方のシーンで女が何かをぼんやりと眺めている映像が出てくると思うんです。この絵を見て何かを思い出してる設定だと思うんですけど。男は記憶を失い、女だけ記憶が蘇り、相手を求めてさまようという設定が切ないです。

絶望の中で一瞬だけ起こる奇跡、その喜び、高揚、そしてその後に訪れる喪失感。楽曲の「許されない愛」というテーマが独特の世界観で上手く表現されたMVだと思います。

ちなみにこの女性は中国の有名な女優さんらしいです。50数名のアジアの有名女優の中から選ばれただけあって見ているこちらまで胸が詰まるような演技ですね。

MVは下記から見ることができます。