一人での弾き語りから、オーケストラルなモノ、エレクトロニカ
コンテンポラリー、ビッグバンド。。。。
ライブでの音楽表現方法は、数限りなくあります。
その中でも、今回は
「一般的な歌モノポップスのバンドサウンド」
というモノに絞って考えてみようと思います。
僕が今まで、サポートやアレンジ、ディレクションしてきた
多くのバンドが抱える問題というのは、大きく言えば
ほぼ同じモノです。
それは何かというと
「元の歌メロ(曲、詩)は良いのに、バンドでやると上手くいかない」
というモノです。
「上手くいかない」どころか、曲によっては「破綻してしまう」
この場合の「バンド」というのは、4リズム
ドラム、ベース、ピアノ、ギターという事にしましょう。
原因は簡単に見つかります。
皆がバラバラな演奏をしているからです。
「そんな事は分かってますよ~。。。」
じゃあ、何故バラバラな演奏をしてしまうのか。
それを知る為には
曲を作った「一番最初の状態」まで「戻る」必要があります。
UK、USロックやメタル、ハードロック、オルタナ系バンドなどで
バンドサウンド先行型、もしくはリフ先行型で曲を作る以外は
通常、いわゆる歌モノJ-POPなどは
「作曲者 + ピアノ or アコギ」
で曲を作るパターンがほとんどでしょう。
「作曲者がヴォーカリスト」という場合も多いと思います。
という事は、楽曲が出来上がった最初の状態、というのは
ピアノ or アコギ による「弾き語り」
という事になります。
この「弾き語り」から「バンドサウンド」に持って行く訳ですが
ここで問題が発生すると、上記のような「破綻」が起きてしまう訳です。
しかし、問題が起きてしまうのは、ある意味「必然」とも言えます。
何故かというと
「演奏人数が増えれば増えるほど、アンサンブルは難しくなってくる」
からです。
1つの楽器による弾き語りの場合は
演奏内容にしても、リズム、テンポ、コード感…
全て自由に「自分一人で」決めて表現できます。
これが、楽器が一つ増えるごとに
演奏の「役割」を「分担させる事」が必要になってきます。
ベース、ピアノ、そしてコード楽器がまたひとつ。。。と
楽器が増えれば増えるほど
個々の楽器の「演奏の自由度が減って」いきます。
逆の言い方をすれば
「ある程度制約のある、縛られた演奏」
をしないといけなくなる、という事です。
「破綻」してしまうバンドサウンド、というのは、この
「制約のある縛られた演奏」を無視して、各々が好き勝手に
演奏してしまっている状態とも言えます。
いわゆる「音楽の3大要素」と言われているモノがあります。
「リズム」「メロディ」「ハーモニー」
現代的な目で見ると、古典的な要素かもしれませんが
歌モノポップスでは今だ重要な3大要素です。
ここまで書くともう分かるかもしれませんが
最初の「1つのコード楽器による弾き語り」の状態で
すでに、この3大要素は「満たされた状態」なのです。
つまり、言い換えると
最初の弾き語りの状態が
「楽曲を最もシンプルな形で聴かせられる最高の状態」
とも言えます。
例えば、アコギの弾き語りなら
8、16、4ビート、シャッフルのリズム
コード、要所要所のキメ、「ダイナミクス」
これらを全て表現する事が出来ます。
ピアノでも同じですね。
こういう話になると「アレンジ論」みたいな事も
多少絡んできますが。
僕は実際多くの「歌モノ」をアレンジする場合は
最初にピアノかアコギで、この作業をやります。
「ベーシックとなる全ての要素」を1つのコード楽器で作ります。
それが出来上がれば、アレンジは70%完成したと言えます。
あとは、場合によって、バンドサウンドに振り分けるのか
オーケストラルに分けるのか、エレクトロニックに行くのか…
どういう形になろうが「ベーシック」が固まっているので
楽曲の方向性がブレる事はありません。
もちろん、これはアレンジ方法の一つで、全く違うアプローチを
する場合もあります。
ちょっと話を戻しますが
その「1つのコード楽器による弾き語り」の状態に
すでに、作曲者が求めている
「楽曲の方向性」「色」「温度」
など様々な情報が詰め込まれ、完成している状態…
で、その状態を聴いて
「良い曲なのに、バンドでやるとね…」
という事であれば
楽器を足していく際に、それぞれのメンバーが
弾き語りの状態の「方向性、色、温度」を
きちんと把握している必要があります。
すでに「完成形で最高の状態」のモノに音を足していく…
と言っても、「おそるおそる」やる必要はありません。
1つの楽器でやっている事を
「大きく」していくだけの事です。
イメージ的には
アコギなら「5倍大きさのアコギに」
ピアノも同じく。
その楽曲、歌メロ自体が始めから持っているリズムを
ドラム、ベースに。
コード、またはリズムを、ギター、ピアノに。
そうやって、全員が
「最初の弾き語りの状態」を意識して演奏できれば
自ずとバンドサウンドはまとまるはずです。
もちろん、これは
「かなり歌メロに寄り添ったバンドアレンジ」
というモノを意識したものですが、
全く正反対のアプローチ、というモノもあります。
しかし、そういう場合でも
「最初の弾き語りがどういうモノだったのか」
という事をチキンと理解してなければ
それに相い対するサウンドアプローチというのは
できないでしょう。
それこそ
「意図のよく分からない破綻サウンド」
になると思います。
ちょっとまた話が逸れますが
この事を逆に表現すると
「世の中に在る全ての歌モノポップスは
ピアノ or アコギの弾き語りとして演奏表現できる」
という事になります。
どんなに難解な大編成のアレンジでも、です。
正確に言うと、音楽的には、アコギよりもピアノに軍配が上がります。
しかし、アコギには「パーカッシブな表現」という必殺技があります。
いずれにせよ、その形こそが
「元々の楽曲が生まれた形」
なのです。
この話は、オリジナル楽曲を演奏するバンド
に限った話ではありません。
アマチュアのコピーバンドでも全く同じ事が言えます。
「それぞれメンバーが自分のパートをコピーして
一生懸命演奏してるんだけど、なんかイマイチ…」
という場合の原因も、上記した内容である場合がほとんどです。
完成形である「完パケ」の音源を「表面的にコピー」する
という事に気を取られ
「この曲の本質は何なのか?」
という事を考えずに演奏しているからです。
なので、そういう場合は、まず
「歌 + ピアノ」
という部分で、徹底的に楽曲への理解を深め
この「弾き語り状態だけでも十分聴ける」
という状態にまで追い込んでから
その「方向性、色、温度」を保ったまま
バンドサウンドとして広げていくのが良いと思います。
そうやって、出来上がったモノは
本来の完パケ音源とは「違うモノ」になっているかもしれません。
でも、それが、カバーとはいえ
自分達のバンドで、このメンツで出来た最高のサウンド
だったら、それでもイイんじゃないでしょうか。
というか、それこそが
「このメンバーで出せる最高の正しい音」
なのです。
無理矢理コピーして「?」なサウンドを作るよりも。
今、こういう内容のブログを連投しているように
現在、自分の中では「演奏」という事に意識が強く向いています。
その次に来るのは必然的に
「ライブの話」
です。
これに関しては、かなり濃厚な内容になるでしょうし
今まで書いた事とも、もちろん繋がってきます。
僕のこれまでの活動を知っている方からすれば
かなりショッキングな内容になる可能性もあります。
しかし「自分の考えをさらけ出す場所」というのが
このブログの存在理由でもありますので
そこは包み隠さず書こうと思います。
では、また次回
お楽しみに。