はい、今回はご夫婦ともども好きな作家さんである綾辻行人さんの『眼球綺譚』です。

もうね、大好きな話です。

何作か入っている中でも『再生』が最も好きです。

綾辻先生というのはなんでしょう、グロテスクなものだとしても「あれ?これはなんだかイケる気がするぞ?もしやこれは許容範囲内の話なのでは?」と思わせる天才です。実際自分の指なんかいくら新鮮にいただけだとしても食べたくはない!(特別料理より)

 

短編集なので複数の話が入っていますが、私が最も好きな話をご紹介。

『再生』というタイトル通り(って言っていいのかな)、四肢を切っても切っても生えてくる女性を妻にした男性の話です。←これだけ聞いても「??」って人がいるのはわかる。しかし、待て。

この話の何が良いって、言葉選びや話の中の雰囲気です。特に、

「あたしの体、呪われてるの」

言ってみたいですね、このセリフ。

でも、生えてこないから無理だ。←

男性が見る夢の中で、女性(由伊ちゃん)が「あたしを食べて」と言って、男性は「だめだよ、食べるだなんて」と驚くと、「いいんだよ。どうせまた生えてくるから」という会話があります。

これもう最高に素敵な会話ですよね。←?

歪な空間で呪われた体の女性とそんな女性を愛そうとしている男性。

夢かと思っていたら、実際に由伊ちゃんは特異体質でした。

けれど、そんなことで愛が途絶えるわけではない!と言わんばかりに2人は結婚します。

しばらくは平和に日々を過ごしていたのですが、由伊ちゃんがある日クロイツフェルトヤコブ病になってしまい、痴呆が進んだ頃から雲行きが怪しくなっていきます。

狂いに狂っていく由伊ちゃん。

ついに暖炉で頭燃やします。

驚き、慌てふためく夫。そこで不意に思い出します。

 

…ああ、頭切っても生えてくるのか。

 

また、あの美しい顔が見たい。生えてくるなら切ろう。

ところが、実際は顔(頭?)から体が生えてきてくれるという構造だったようで、顔を切ってしまえば、全ての機能が停止します。なので、由伊ちゃんはずっと首なし。

でも体は腐らない。

夫は永遠に待ちます。

けれど、そこで待っていたのは、切り落とした頭からの『再生』でした。

 

最高ですよ、はい。

何度でも読み返すことができます。

タイトルにもなっている『眼球綺譚』も詩的な雰囲気がとても綾辻さんらしくて、情緒不安定になるような気分です。それが良い。

グロテスクだったり、ありえない設定だったりしても、きっちりと伏線を貼って、きっちりと回収してくれるので納得できて理解したような気にさせてくれるのは、やっぱり素晴らしい作家さんなのだと実感します。

では。

 

 

 

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