どうも、わたしです。

川上弘美さんの『溺レる』をご紹介。

『センセイの鞄』で有名な著者ですが、わたしはダントツこの作品が好きです。

水中にいるような、不安定な感覚。

誰もが感じる感覚、というわけではないと思います。

それにもし感じたとしても川上弘美さんしか表現できない気がする。

わたしね、作家さんもアーティストも「この人しかできない」っていう表現をする人が大好きです。

 

性描写多め、と言うと、官能的なのか!エロースか!と鼻息荒くなるかもしれませんが、きっとこの作品は女性向き。

伏し目がちな女性をイメージできるアンニュイ感たっぷりの描写。いやらしさというよりも透明感のある文章です。

わたし、実は精神的に潔癖で、あんまり性描写多かったり、手当り次第○○X!みたいなの本当にダメなんですよ。

吐きそうになっちゃって。何言ってんだ30女が、とか言わないでください。認めます。

ですが、川上弘美さんの文章はいやらしさというよりも清らかな体と体の体温調節、みたいに感じます。

文字に湿りがあって、それが吐息に変わり、体温になっていくような。

この作品に出てくる男女は割と現実離れしてます。でも、小説ってそれぐらいがこちらとしては良い距離感に感じることも多いです。

そして、どちらかが安定していてどちらかが不安定なんですよ。そんな2人なもんだから、結末はお別れだったり心中だったりするんですけど。あ、書き忘れてた短編集です、これ。

タイトル通り、行くあてが見えない男女が溺レるように出会い、2人きりになったら溺レるように絡み合う話が多いです。だけど、その手前で溺レ苦しんでる人の話もあります。好きなのに、あまりにも立ち位置が違いすぎてどうしようもない。人が出会う、ということは業を背負うことだと思ってまして。出会い、共鳴し、重なり合う。その覚悟というのは相手の業を背負う覚悟と同じだと。

だけど、その覚悟もないまま、溺レるように一緒にいて、意味がわからないまま、それでもついていくというのも、ある種恋愛特有の業なのかもしれない。その結果がどうであろうとも。

 

この作品を読むと、しばらく引きずります。

こんな恋愛したいって思わないけど、それでも、なんとなく憧れる。

破壊って、最大の刺激だと誰かが言っていたよ。

では。

 

 

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いつか魚も溺れる