認知症には抑肝散? | こだま堂漢方薬局のブログ

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抑肝散(ヨクカンサン)

「効能・効果」:虚弱な体質で神経が高ぶるものの次の症状:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症


近年、認知症の症状改善を目的に、病院で処方されるようになった漢方薬です。

 

効能書きでは、子供の漢方薬?、と思われるでしょう。もともとは小児に使われていました。

 

東洋医学的な説明をすると、「肝気が高ぶる」ことで、怒りっぽい、不眠、歯軋り、引きつけ、痙攣、神経症・・・の症状が起こりやすくなり、そんな体質の方に用いる漢方薬です。なので、もちろん子供だけでなく大人が飲んでもかまいません。


認知症の方の中には、怒りっぽくなったり、暴言、暴力、不眠、徘徊・・・などの「気が高ぶる」症状が出る方がいらっしゃいますので、そういう方には「よく効いた!」というお話が多いです。

 

また、介護者もストレスでイライラする場合は、患者さんと一緒に服用すると、お互いが落ち着けて良い関係に向かいます。(疳症の赤ちゃんには、お母さんも一緒に飲んでもらう=母子同服と言います)

 

また、抑肝散に陳皮と半夏を加えた、「抑肝散加陳皮半夏」という漢方薬もあり、こちらは痰が絡みやすい、吐き気、胃腸の弱い・・・方にオススメです。


 ただ残念なことに、認知症自体が治るわけではありません。あくまでも認知症に伴う症状の改善と考えて頂いた方がよいかもしれません。(実験レベルでは神経細胞の再生を促す・・・という結果もあります)

しかし、老年期うつ病も認知症と似た症状が起こることもあり、その場合は回復するケースもあります。

 

注意すべき点は「認知症だからと言って、漫然と投与しない」ことです。老人には「陰虚」と言う体質が多く、そのような体質の方に「抑肝散」を長期投与をすると「陰虚」が進行する場合があります。

 

その場合、「補陰」の働きをする漢方薬を使用べきなのですが、東洋医学的な体質の判断をせず「病名投与」しために、「間質性肺炎」の副作用が新たに報告される・・・という残念な事例が出てきてしまいました。

 

漢方薬は「副作用が出ないように使用する薬」という原則が守られず、本当に残念です。

 

一言に「認知症」と言っても、患者さん一人一人の症状や体質はさまざまです。

歴史的に認知症に使われてきた漢方薬は他にもありますので、きちんと体質を考えたうえで使用してもらいたいものです。