「湖底のマチュピチュ」の新ルート(四国中央市) | 次世代に遺したい自然や史跡

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毎年WEB初公開となる無名伝承地や史跡、マイナーな景勝・奇勝を発表。戦争遺跡や鉄道関連、坂本龍馬等の偉人のマイナー伝承地も。学芸員資格を持つ元高知新聞主管講座講師が解説。

<若干のヤブ漕ぎを要する>

去年2月、愛媛県の地方紙等で「湖底のマチュピチュ」と騒がれた遺構がある。それは昭和50年、新宮ダムの完成により、湖底に沈んだ四国中央市新宮町馬立川渕の一部地域の石垣。

 

渇水期、ダム湖(銅山川)の水位が下がって何段かの石垣が露わになり、銅山川対岸の市道から見下ろすと、マチュピチュ的風景になるとSNS等で「湖底のマチュピチュ」と命名され、マスコミが取り上げることになった。

新宮ダムの完成により、湖底に沈んだ家屋は民家100戸と公共施設4棟。その内、旧新宮村の民家は65戸(75戸説あり)で、川渕集落は17戸。川渕の南に隣接していた古野集落は14戸で、公共施設4棟の内の1棟は古野小学校。

 

現存民家の内、人家は古野で2戸、川渕は4戸。川渕集落の4戸の内、3戸は同じ姓なので一族だろう。

ダムができる前は、銅山川は幅約10mの澄んだ河川で、子供たちが素潜りをして魚を獲っていたという。

マスコミが取り上げると当然見物客は多くなった。その頃、ゴミステーション前のI氏(同一姓3戸の一つ)の車庫脇から見物客らは湖畔に下りて行っていたのだが、その後、I氏がそこを立入禁止にしてチェーンを張ったため、現在、訪れる者は減っている様子。

 

ネットには貯水位が200m以下にならないと石垣は現れない、とする情報も見られるが、現在の218mの水位でも、最下段中央部の広い石垣以外の遺構は見ることができる。

ただ、マチュピチュと言っても宇和島市の遊子水荷浦の段畑のような広大なものではなく、数段程度の石垣に過ぎない。それでも南北には広く、巨石と接したものもある。探訪した感覚では、民家の石垣より、田畑の石垣が大半のように思える。

 

当方は市道を北上して行ったので、目的地へ行く前に古野の中山神社石段口向かいの古野小学校跡地の碑に寄った。昭和49年3月の閉校時の児童数は45名で、その後、新宮小学校に統合された。

実際の跡地は当然湖底になっている。尚、湖底のマチュピチュに一番近い公共トイレは中山神社のトイレ。神社専用駐車場はないので、少々北の路肩に駐車。

 

その北方の狭い沢を越えて少々行った所の廃屋小屋北方や、更にその北側の路肩に駐車スペースはあるが、気づかず、川渕集落に行ってしまったため、集落北端にある空き家側のカーブ部に駐車した。

 

私道を通らずにマチュピチュに下りて行くコースは本来一つだけで、それは集落南側の二軒並ぶI氏宅の向かいから、山城四社神社(大山積神社の下段)に向かう参道を下り、神社(上の航空写真)手前で右後方に折り返す道に入り、廃屋化した小屋の北側の一段高い所から下の石垣に下りて行くコース。

 

しかし現在、小屋付近は藪の密林となっており、そこに道があることは集落以外の者では分からない。それ故、当方もそのコースを辿ることは断念し、二軒並ぶ方のI氏に断った上、その南の茶畑の中を下って行った。

茶畑の一番下まで下ると北に折れる。北方の藪化した石垣の手前に下れそうな藪があったので、それを下って湖畔に出たが、身体中、引っつき虫であるオナモミやセンダングサが付いてしまった。

 

マチュピチュ感は対岸から俯瞰したほどではないにしろ、南側の長大な石垣は一見の価値がある。水中にある前述の中央部の石垣北側の水際には狭い区画の石垣があり、その上には意味ありげな3基の立石がある。これがもしどこかの山の山頂にあれば、超古代文明遺跡ではないかと疑うことだろう。

その少々手前の上方には、水路穴のようなものがあるので、一帯は水田跡だろう。

3基の立石の北方上方の石垣の端には巨石がある。水田跡の巨石は風景的には不自然だが、山間部の水田ではたまに見かける光景ではある。石垣の上は、日照りが続いた水田のように、地面がひび割れている。

 

最上段の石垣の所には、ダム湖の水位が少々上がっても水が来ることはないと思うが、そこから上の藪には分け入らない方がいい。もし立入りを禁止したI氏の土地だったら面倒だからである。

帰路はその最上段の石垣下を歩いていて、石垣上に上がる藪化した小径を見つけたので上がり、藪の石垣上を南に進むとすぐ石段があったので、これを上がると前述の廃屋化した小屋の手前に出た。そこ自体は藪化していたため、本来のコースであろうと思われる一段高い所に這い上がり、四社神社に続く小径に出た。

これで一応回遊ルートにはなったものの、茶畑は私有地なので、地権者が側にいない場合は廃屋小屋から下るルートを探した方がいい。また、一部ヤブ漕ぎもあるので、長靴を履き、ハイキンググローブのようなものを着用した方がいい。

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