四国の風穴~愛媛県編~ | 次世代に遺したい自然や史跡

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毎年WEB初公開となる無名伝承地や史跡、マイナーな景勝・奇勝を発表。戦争遺跡や鉄道関連、坂本龍馬等の偉人のマイナー伝承地も。学芸員資格を持つ元高知新聞主管講座講師が解説。

<四国屈指の冷風の風穴も>

四国の風穴・後編は風穴の数が四国一多い愛媛県編。それだけに自然洞穴タイプ、産業用貯蔵庫タイプ共、前編の風穴を超える冷気・冷風力を誇る風穴がある。

 

 

(1)風透風穴(西条市)

西条市藤之石風透(かざすき)にあるこの風穴は自著「四国の鉄道廃線ハイキング」の馬車軌道の項で取り上げた。四国の風穴の中では景観、冷風力共、理想のものだが、藪蚊が多いため、長居はできない。

入口に石積みはあるものの、穴自体は自然の洞穴で、麓の止呂ヶ淵と繋がっているとされ、淵と外気との気温差から冷風が吹く。穴の高さは1mほど。

風穴の近くには止呂ヶ淵の主である大蛇の妻になった、四万十町出身の薄雲姫の墓がある。

国道194号沿いに風穴の指導プレートが出ているが、風透集落上部を東西に走る道路からも下りていくことができる。

 

(2)豊受山風穴(四国中央市)

法皇山脈東部の豊受山(1247.4m)の最高所(三角点南方)直下、豊受神社奥の風穴神社の神体が、一見すると小動物位しか入れなさそうな小さな風穴。しかしこれに纏わる伝説は壮大で、この地方に吹く日本三大局地風「やまじ風」の源が、この風穴であると言われている。

それ故、毎年旧暦の6月13日と新暦9月13日の各直前の日曜日には、団子を風穴に投げ入れ、風を鎮める神事が執り行われる。

因みに当方は過去、鋸山(1017.3m)、七々木山(1140m)、豊受山、赤星山(1453.2m)と縦走し、アケボノツツジとカタクリの花の群生を愛でたことがある。→東部法皇山脈縦走

 

 

(3)皿ヶ嶺風穴(東温市)

皿ヶ嶺連峰の主峰、皿ヶ嶺(1270.5m)の風穴コース登山口を上がってすぐの所にある産業用風穴で、愛媛県の産業用風穴の中では第2位の規模を誇る(1位の風穴は未確認)。

面積が広く、標高も高いため、下から湧き上がる冷風も前編で紹介した香川県のものより強力。

建造時期や貯蔵していたもの(蚕卵の可能性高し)は不詳だが、現在は地元の植物愛好家がヒマラヤの青いケシを栽培している。

皿ヶ嶺の推奨登山コースは→皿ケ嶺連峰(5)皿ケ嶺~面白嶽~引地山半回遊

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(4)大成風穴群(久万高原町)

八辻ノ峰(1273.3m)南西の標高1040m前後にある、3基の産業用冷風穴と1基の温風穴からなる風穴群だが、温風穴は平成28年の松山大学の調査時でも発見できなかった。だが、後記リンク・サイトの右端の写真がそれだとしたら、発見は容易い。但し、温風は感じられない。

3基の冷風穴は明治45年に建造され、蚕種蔵庫として使用されていた。登山口から5分ほど登った所にあり、2基は覆屋が再現されている。扉が施錠されていた時期もあったが、道標が一新されて以降は常時、開放されている。

 

 

1基目のものは一番小さく、覆屋の中に竪穴としてある。2基目はすぐ奥にあり、大成(おおなる)風穴群で最大のもの。それ故、入口の手前から冷気が感じられる。

香川県の高鉢山風穴のように石垣通路を通って覆屋の中に入り、右、左と直角に曲がった奥に広い石積みの空間がある。地面から冷気がまるで水蒸気のように湧き上がっているのが見える。それ故、200ルーメンのヘッドランプも明るさが半減する。

 

 

 

 

 

3基目はその上方にあるが、覆屋は再現されていない。大きさと冷気は2番目の規模。入口を入ると左に曲がり、すぐ直角に右に曲がった先に小部屋がある。ここもフラッシュを焚かないと撮影できない。

紹介サイト→大成風穴群

余談だが、風穴群登り口前を通る林道の終点からは、八辻ノ森と気多山(1218m)を往復登山できる。但し、両山共、展望地は山頂の少々先にある。

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