『「希望者全員に毎月20万円の給付金を配れ」京大教授が訴える最強のコロナ対策~命より財政を優先する財務省の異常』
https://president.jp/articles/-/46004

上記は京都大大学院藤井教授とジャーナリストの田原氏との対談の一部が収められたものだ。

田原氏が、
「政府がお札を刷り、日銀が市中の国債はじめ株式や債券をガンガン買い入れ、出回るおカネを増やし、インフレターゲット2%を設定して、内需を拡大させようとした。「機動的な財政政策」で公共事業もやった。「成長戦略」と合わせて、アベノミクス三本の矢で日本経済をよくすると。
ところが『日本銀行「失敗の本質」』という本を書いた朝日新聞の原真人編集委員によれば、その結果、日本の長期累積債務は1200兆円、GDP比で220%に膨れ上がった。このままいけば間違いなく財政破綻で「第二の敗戦」だ、早ければ2025年にもそうなるという。藤井さんの反論を聞きたい。」
と問うている。

これに対して藤井氏は、次のように述べ、財政破綻論の大嘘を見事に喝破している。
「その話は完全にデマです。いたずらに危機を煽あおって人を不安にさせて注目を集めようとしているに過ぎません。本を買って嘘を読まされた人は、賠償請求をしなければいけないくらいです。
なぜか? 簡単なところから申し上げますと、財政破綻論者は、かつて政府の累積債務がGDPと同じ水準に達すれば破綻するといった。800兆円になったらとか、1000兆円を突破したらとか、ずっと「破綻すそして、理論的な視点から説明するとすれば、彼らはいろいろなところで間違っていますが、最大の間違いは、「破綻する。破綻する」と叫んで財政を緊縮させ、景気をますます悪化させ、その結果、税収が減って財政を悪化させてしまっているところです。つまり、原さんたちが心配で心配でしかたがないといっている財政悪化という状況を作っているのは、他ならぬ彼ら自身なのです。
彼らが騒がなければ国債をもっと出して政府支出を増やしたり消費税を減税・凍結したりでき、それを通して経済がよくなって、財政問題が自ずと解消するのですが、彼らが騒ぎ立てることで、そういう改善プロセスを邪魔してるんです。これが彼らの最大の間違いです。る。破綻する」といい続けてきた。にもかかわらず、日本政府はまったく破綻していない現実があります。」

田原氏は、日本人に根強い財政破綻論や緊縮礼賛論にどっぷり染まった論者の一人だが、藤井氏のように、緊縮脳の大家を向こうに回して、その誤りや罪悪を正面から指摘し、堂々と反論できる論者は滅多に見かけない。

こういった対談が、ある程度目メジャーな雑誌や電子媒体に掲載される意義は大きい。
巷の経営者やサラリーマン層は、自分の業務範囲内のミクロな知識やスキルには一家言持っているが、ことマクロ経済常識となると、彼らの知識は一気にそこいらのオバちゃんや中高生レベルに低下する。

一般人のマクロ経済に対する理解や基礎知識が一向にレベルアップしない原因は、知識の供給源をマス媒体に頼り切り、自分の頭で考え反論する癖や気概を持っていないからだ。

彼らはマクロ経済に関して常に受け身で、自分の生活とは別世界の言葉や文字の羅列だと認識し、マス媒体が垂れ流す誤った常識を、何の疑いもなく受け容れ、それに反する理論や意見を不浄な邪教と忌み嫌う。

こうした主体性のない茹で蛙体質に長年どっぷりと浸り切ってきた結果が、「失われた30年と所得が伸びない衰退国家日本の姿」なのだ。

さて、“反緊縮派”を称する一部の腰抜け論者の中には、藤井氏に対して、
「『コロナ・デマ製造機』に成り果てた」
「コロナに関して暴走と妄想を続けている」
「コロナ軽視論者」
などと誹謗中傷するアホがいるが、“ゼロ・コロナ”という幻を追って社会を衰退に追いやる自らの愚論を棚に上げ、コロナ禍という悪条件の中で懸命に不況脱却に向けた経済提言を行っている藤井氏の献身や奮闘ぶりとは比べるべくもない。

藤井氏に噛みつくアホ論者は、「コロナは封じ込め戦略が正解」と叫んでいるが、その具体的な行動計画について何ら明らかにしていない。

“封じ込め”の具体的な期間、対象範囲、補償範囲、対象となる行動、その間の社会インフラの維持方法等々、最低限提示すべき具体的な項目は幾つもあるはずだが、アホ論者は藤井氏を中傷するだけで、自らの提言には何ら具体的な方針を示そうとしない。

かつてロックダウンの優等生・先進事例として称賛されたドイツやフランス、オーストラリア、台湾ですら、コロナ新規感染の再拡大を避けることができず、いまだに右往左往し、経済的大損害を被ったままだ。

アホ論者のみならずYahoo!ニュースのコメ欄にも、ゼロ・コロナを前提とした強権的ロックダウンを支持する幼稚な論者が多いが、「これだけやれば確実にコロナを撲滅できる」と断言できる期間や方法を具体的に明示し、その責任をきちんととる覚悟を示せぬ限り、厨二的妄想まみれのロックダウンに賛同する声が大きくなることはない。

藤井氏は、コロナ感染拡大防止策として、
「もし2020年4月の段階で、安倍さんが徹底的な政府補償を提供することができ、「緊急事態です。徹底的に自粛してください。そのかわり毎月20万円を配ります。毎月必ず払います」といったとしたら、国民はほとんど何の文句もいわずに自粛したでしょう。実際、ヨーロッパの国ぐにもアメリカも、それに近いことをしています。」
と提言するとともに、諸外国の対策を参考に、財政規律の凍結・所得損失の補填・消費税の減税などを訴えている。

こうした提言内容は、筆者の従来からの主張ともほぼ一致しており、個人的には賛同したい。

長らく続く不況の上にコロナ禍という面倒事が重なり、減収や失職、リストラの憂き目を見た国民も多い。
コロナ禍による経済不安を抱える民心を落ち着かせるには、傷んだ所得を名実両面から補填し、「コロナでいろいろと大変だけど、お金の心配だけはない」という経済環境を用意してやることが肝要だ。

国民から雇用や所得面の不安を取り除き、“感染予防・療養・治療”に専念できる社会情勢を創ることが、コロナ撲滅に最も効果的だろう。
敵があちこちにいては有効な対策が打てず、すべて後手後手に回ってしまう。

何より重要なのは、コロナという病だけに的を絞り、正面から対峙できる環境を要することだ。
そのためには、政府は無限に発行可能な貨幣の供給を惜しんではならない。

必要な対策費が、たとえ300兆円になろうが500兆円になろうが構わない。
カネを出し惜しんで社会機構がズタボロになるより遥かにマシだ。

先のコロナ特別給付金により、政府はほぼ全世帯の振込口座を把握できているんだから、自粛の対価としての給付金や、過去の失政による減収補填としてのBIを実行しても、大した事務コストはかからない。
なにせ、届け出のあった口座に自動振り込みするだけで済むんだから…。