○財政収支の均衡など無意味。政府は、社会的課題の解決を政策の最優先とし、必要な財源は自らの通貨発行権と債券発行能力を以って賄えばよい。

 

○税を主体とする歳入構造は異常。歳出財源は国債発行や貨幣製造を主軸として賄うべき。

 

○税の役割は、過熱した景気の調整機能、所得再配分に限定すべき。

 

我が国では、これまで、こうした“常識”が完全無視され、議論の俎上にすら載せられることがなかった。

 

最近、アメリカのMMT論議が盛り上がり、ようやく日本国内でも積極財政の是非に関する議論が緒についたばかりだ

 

海外のMMT論者は、「財政赤字なんて心配無用」、「自国通貨建て債務をデフォルさせるのは不可能、「財政再建より失業者の解消が先決」と訴え、国内の緊縮主義者どもを大慌てさせている。

 

「日本は借金まみれで破綻寸前」、「財政再建のためには大増税や社会保障費引き上げが不可避」という大嘘をさんざん吐き散らかしてきた反国民主義者たちは、突然の黒船襲来に虚を突かれ、フンガフンガと論理整合性ゼロの幼稚な言い訳を並べたて醜態を晒している。

 

結果的に議論が盛り上がり、「緊縮政策は不景気を呼び込むだけのクソ政策だ」という意見が一定の支持を得られるのを願っているが、正直言って、積極財政論が、MMTという“外圧”なくして、議論の糸口すら掴めなかったことを非常に情けなく思っている。

 

同趣旨の主張をしていても、海外発の理論には素早いレスポンスがあり、活発な議論がなされるのに、国内の論者がいくら声を張り上げても、ガン無視されるのは本当に腹立たしい。

 

 

『MMTが間違った政策提言を導き出しているワケ~「インフレは昂進しない」という前提の危うさ』(櫨 浩一 : ニッセイ基礎研究所 専務理事)

https://toyokeizai.net/articles/-/278558?page=1

 

櫨氏は、もともと緊縮主義や構造改革主義的色彩の強い人物ゆえ、当然、積極財政論に拒絶反応を示し、MMTにも批判的だ。

 

以下、櫨氏の発言を取り上げ、誤りや矛盾点などを指摘しておこう。(カッコ内は筆者追記)

 

失業者の発生や、企業の投資の減少といった経済活動の縮小均衡を避けるために、財政再建をせずに財政を拡張させるべきだという、(MMTの)問題解決の方向性は間違っていると考える。財政再建を成功させるためには、歳出削減や増税で財政部門の収支を改善させる努力をするだけでなく、民間部門の経済構造も変える必要があるというのが正しい理解であろう

 

▶まず、財政再建を成功させるためという言葉を使うこと自体がおかしい。

日本という国が抱える最大の問題は「長期不況の常態化がもたらした社会構造の崩壊」であり、国民は「所得・雇用・社会保障」の瓦解という大きなリスクに怯えている。

▶かような国家的緊急時に最優先すべきは、速やかな景気浮揚と十分な分配政策であり、財政再建なんて政策選択項目の候補リストから真っ先に除外すべき

歳出削減や増税で財政部門の収支を改善させる努力をする(=民需大縮小)」民間部門の経済構造も変える必要がある(=所得と雇用の不安定化)」という櫨氏の提案は、不況をより深刻化させ、財政再建とやらをさらに遠退かせるだけの赤点必至の大愚策でしかない。

 

 

経済のどこかにボトルネックがあれば、完全雇用が実現する以前にインフレが起こってしまうことはレイ教授も認めている。ボトルネックを回避するための職の保証制度のような仕組みが主要国には存在せず、少なくとも当面採用される見通しもない現状では、財政赤字を使って経済を刺激し続けると、どこかで物価上昇が加速していってしまうおそれが大きいだろう

 

▶「日本はもう成長できないと信じ込むバカ」、「日本人労働者の給料は高すぎるという時代遅れのバカ、「お金を使わずに成長する方法を考えるべきと思い込むアホ」…。これこそが、経済ボトルネックだろう。

▶櫨氏はインフレを過度に警戒しすぎ。積極財政論者が目指すのは、緊縮経済下のコストプッシュ型インフレではなく、所得UPが内需を刺激するディマンド・プル型の望ましいインフレである。

高度経済成長期は、消費者物価上昇率4-8%のインフレが続いた(Wikipedia)」とあるとおり、好況に伴い多少のインフレが生じるのは当然のこと。高度成長期は、そうしたインフレを加味してもなお、平均で10%を超える実質経済成長率をした史実をきちんと勉強すべき。

▶インフレに怯える暇があるのなら、いまから半世紀も昔の政府が、インフレを適度に制御しつつ国民の生活レベルを大幅に向上させた経済運営手法を学べ、と言っておく。

 

 

MMTの提唱者は、政府が問題が深刻化する前に財政赤字を減らせば大丈夫だと言っているが、こうした場合に政府が最適な行動ができるとは限らない。歴史の教訓は、政治家も選挙民も近視眼的で最適な行動はできず、行きすぎを回避するのは極めて難しいということだ

 

“近視眼的で最適な行動ができない”愚鈍な政治家に賛辞を送り、“行きすぎを回避”できなかった愚民とは、国の借金という妄想に騙され、聖域なき歳出削減に拍手喝采を送り、自らの意志で生産力も、科学技術力も、生活力も破壊しつくしてきたことにいまだに気づけない多くの日本人ではないか。

▶緊縮主義という反国民思想の大暴走を止めるのは極めて難しい、という事実こそが“歴史の教訓”なのだ。

 

 

政府に自由に通貨を発行できる権限を与えると、必ずと言ってよいほど乱用して経済的な大惨事を引き起こすことを、歴史は教えている

 

少なくとも我が国においては、自由に通貨を発行できるという当然の権限をきちんと行使した政府は見当たらない。

▶櫨氏には、朝鮮特需以降、政府が通貨発行権を乱用して経済的大惨事とやらを惹き起こした事例を一つでも挙げてみろ、と言っておく。

世界でたった一つの非成長国に転落し、国民の所得が20年以上も上がっていない体たらくこそ、“経済的大惨事”と呼ぶべきだ。

 

 

国内発のインフレにせよ、為替下落によるインフレにせよ、いずれにしても富裕層は影響を緩和する手段をたくさん持っているが、所得や資産の少ない層ほど対応策が少なく苦しい思いをすることになるはずだ。その危険性を考えれば、財政赤字を拡大して完全雇用を目指す方法は低所得者にとってはリスクが大きすぎる

 

望ましい経路で発生したインフレは、生産サイドの企業に、自社製品の付加価値を上げるバッファーを与え、そこで働く労働者の給与水準引き上げの財源を生む。

▶インフレで低所得者が苦しめられるのが嫌なら、櫨氏は、最低賃金の大幅な引き上げや積極的なベースアップを即時実行するよう、先頭切って大企業の連中に訴えるべきではないか。

▶それが気に食わないとしたら、低所得層のインフレ耐久性を強化するために、筆者が提案する国民一人当たり月3-4万円の生活給付金支給制度に賛同すべきだろう。

▶国民生活を引き上げる政策に関して、何ら具体的提案のない緊縮主義者なんて、ゴミくず以下の害虫でしかない。


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