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『トランプ大統領に多くを学ぶべき日本~好調な米経済と低迷する日本経済、その差は何か』(9/19 JBPRESS 堀田佳男/ジャーナリスト)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54132

「(略)ホワイトハウスの国家経済会議(NEC)委員長のラリー・クドロー氏は9月8日、フォックス・ニュースに登場して自信たっぷりに述べた。

 「ほとんどの経済専門家は2018年の米経済が好景気に沸くことはないと否定的な見方をしていましたが、全くの見当違いでした。経済政策だけでなく、あらゆる指標で良好な数値が出ています」11月6日の中間選挙を前に、トランプの汚点をあぶり出したい民主党としては、経済ではケチをつけられない状況にあるのが現実だ。(略)

トランプに批判の声を上げる最右翼的な存在のワシントン・ポスト紙は9月13日、「編集委員会」の論説として米経済の好況を認めた。

 「米経済に良好なことが起きています。8月の失業率は3.9%ですし、インフレ率も連邦準備銀行(FRB)が目標にしている2%に近い」

 「最新の統計局のデータでは、平均世帯年収は6万1400ドル(約678万円)で、2008年の金融危機以前とほぼ同じレベルにまで戻りました。(中略)トランプの功績を認めていい」

 

アメリカ経済の好調さは漏れ聞こえてくるが、それを伝えるマスコミやジャーナリストは、バカの一つ覚え「株価・失業率」しか云わぬから、一般国民の所得水準や雇用条件が改善したのかいまひとつ判然としない。

ただ、サラリーマンの平均給与が、いつまで経ってもダダ下がり状態の我が国より相当マシなことくらいは判る。

 

好調の要因がトランプ大統領の大型インフラ投資によるものか、大型減税や輸入関税強化、移民制限、貿易協定見直しなどによるものか、現時点で詳細に分析するデータがない以上、早急な判断は避けたい

 

だが筆者は、インフラ投資の重要性を理解し、国家の基盤を揺るがす不法移民や、富や技術の流出を促進させるだけの野放図なフリートレードを善しとしないトランプ大統領の経済観念を高く評価している。

 

少なくとも彼は、経済政策に興味がなく口先だけ煽動家だったオバマやブッシュとは比べ物にならぬほど有能だろう。

なにせ、世界中のマスコミやエセ左翼の連中から総攻撃を受け、年中袋叩きに遭いながら、これほどの経済成果を上げた手腕と強靭な信念には敬意を表したい。

 

あとは、自分を支持した労働者や低中間層の国民の所得をもっと引上げ、政策の果実を遍く行き渡らせるよう努力を続けるべきだ。

 

さて、今回冒頭のコラムを採り上げたのは、堀田氏の結文に違和感を覚えたからだ。

 

堀田氏は、トランプ経済政策によるアメリカの力強い経済発展と比べ、我が国の成長率のみすぼらしさを嘆き、「安倍晋三政権は国内産業にエネルギーを注入する意味で、法人税の減税を真剣に考えてもいい」と結んでいる。

 

日本の低成長率を善しとしない彼の姿勢には賛同するが、いま日本が採るべき経済政策のいの一番に「法人税減税」を挙げる理由がまったく理解できない。

 

既にご承知のとおり、我が国の法人税率(基本税率)は、昭和59年ころの43.3%をピークに段階的に引き下げられ、いまや23.2%と半分近くにまで下がっており、法人税収は平成元年の19兆円をピークに、平成28年には10.3兆円にまで46%も減っている。

 

一方、法人企業統計調査によると、全産業(金融業,保険業を除く)の売上高は平成元年/約1,300兆円→平成28年/1,455兆円と12%近くの上昇率だが、同期間中の経常利益は約40兆円→75兆円と87.5%も増えている。(労働分配率も長期間低下したまま)

 

要は、大企業や中堅企業を中心に企業サイドの担税能力大幅に増え続けたを放置したまま、法人税収を減らすに任せてきた、つまり、歴代政権によって、企業サイドは存分に甘やかされてきたと言えよう。

 

これだけ過保護な扱いを受けた企業にさらに減税の恩恵を与える、端的に言うと「泥棒に追い銭」するのが最適な経済政策だと言う堀田氏の提言には、まったく首肯できない。

 

法人税収を全事業所数(※平成10年以前の企業数データがないため事業所数を使う)で割った事業所当たりの納税額は平成元年/289千円→平成28年/184千円と、企業の納税負担は単純計算で36%も減っており、これ以上甘い汁を吸わせる必要など微塵もない。

 

堀田氏は自身のコラムで日本の個人消費の低調さを指摘しており、それなら、GDPの6割を占める個人消費を直接かつ即効性を以って刺激する政策、つまり、消費税廃止や社会保険料引き下げ、医療費負担率引き下げ、年金受給年齢引き下げ、定率減税、ガソリン税軽減、教育費無償化などを主張すべきではないか。

 

さらに、収益力に劣る中小企業や地方経済にエネルギーを注入するため、公共投資の増進や設備投資や人材確保への補助金、地方交付税の大幅引き上げといった政策が求められる。

 

法人税減税なんて、正直言って経済効果はゼロに近い。

 

個人にしろ、法人にしろ、損益計算書の最上位項目、つまり、所得や売上をダイレクトかつ大幅にUPさせ、消費や投資に使える資金の自由度を上げてやらないと、個人消費や法人投資は活発化せず、アメリカとの経済格差はますます拡がる一方だろう。

 

経済成長に躓いた日本を立て直すのに必要な政策は、消費性向や投資性向の高いセクターへの聖域なきバラマキである。


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