習近平の“焦り”…中国国内の「不満爆発」に“奥の手”で、いよいよ“米中衝突”のカウントダウン!



9/8(水) 7:32 Yahoo!ニュース 

現代ビジネス





◾️習近平が「米国への意趣返し」



 米中のデカップリング(分断)がついに「金融」の分野にも及んできている。



 中国政府は7月6日、海外上場を目指すほぼすべての企業に対してサイバーセキュリティー審査を義務づける新たなルールを提案したことで、米国市場に上場する中国IT企業の株式が軒並み下落する展開となった。



 中国政府が自国企業の海外上場に対する規制強化に乗り出した理由として、金融面でも中国への締め付けを図る米国への意趣返しの側面があると言われている。



 バイデン政権は、トランプ前政権からの対中強硬姿勢の継続を鮮明にしている。



 冷戦時代の米ソ対立ではヒト、モノ、カネの往来が制限されていたが、現在の米中対立は経済面での相互依存が強い分、決定的な対立には発展しにくいとの楽観論があった。



 しかし実際には、貿易、技術や人権問題に加え、米中の分断は経済活動の根幹ともいえる「金融」の分野にも及んでしまっている。



 実際、米国と中国の間のカネの流れを見てみると、米国から中国への証券投資総額(資本と負債の合計)は1.2兆ドル、中国から米国へは証券投資総額は2.1兆ドルに達する(7月8日付け日本経済新聞)。



 そもそも、改革開放以降の中国経済の急速な成長を支えてきたのは海外から流入した大量の資金である。






◾️中国国内で「高まる不満」



 世界銀行によれば、中国への直接投資のネットの流入(対内投資から対外投資を引いた額)のGDPに対する比率は、1990年代中頃は6%程度と他国に比べて飛び抜けて高い水準だった。



 この数字は最近では1%台にまで低下しているが、IT企業などの先端産業が巨額の資金を海外から調達していることは間違いない。



 米中経済安全保障調査委員会(米国連邦議会の諮問機関)によれば、今年5月時点で米国の主要取引所に上場する中国企業は248社で、時価総額は2.1兆ドルに上る。



 マネーの分断は中国企業が海外市場開拓や人材獲得の面でグローバル競争に後れをとることにもつながりかねず、中国経済の成長が鈍化すれば、共産党の一党支配の正統性が揺らぎかねない事態となるだろう。



 米国との金融分断が与える自国への悪影響は計り知れないほど大きいにもかかわらず、中国政府が今回の措置に踏み切った背景には、貧富の差の拡大や機会不平等に対する国内の不満が高まっていることも関係している。



 政権への批判をかわす目的で、政府のコントロールが緩く、最も強い社会的な不満を生み出しているとされる巨大IT企業に狙いを定めてお灸を据えたというわけである。






◾️ウォール街の落胆



 世界第2位の経済大国となった中国は、いまだに資本取引を厳しく制限している。



 「無秩序な資本の拡張防止」を掲げて社会主義に傾倒し始めている習近平指導部のもとでは、海外の市場ももはや「聖域」ではなくなりつつある。



 そんな中国政府の今回の決定に最も落胆しているのは米ウォール街である。



 新型コロナウイルスのパンデミック時の米国市場で、中国企業の新規株式公開(IPO)やその大株主の株式売却の動きは際立っていた。



 米国の投資銀行は直近の1年で中国企業のIPOなどで利益は前年に比べ452%増の492億ドルとなった。



 しかし中国政府のせいで、今後見込まれている合計500億ドル規模のIPOなどの案件の実現が危うくなっている。



 ウォール街からは「自ら米中の資本市場の分断を進める中国政府の行為は理解できない」との怒りの声が上がるとともに、「共産党の支配は常に投資家の利益よりも優先される」として中国経済全体に対する不信感が急速に強まっている。



 今後ウォール街の中国離れが進むとすれば、米中関係にどのような影響をもたらすのだろうか。






◾️「戦前の日米関係」に似てきた米中関係



 ウォール街がこれまで米中関係の安全弁であった可能性が指摘されている。



 中国共産党指導部の顧問を務める国際政治学者が昨年11月下旬に上海で開催された討論会で「1992年から2016年までの米中間に起きたすべての問題が2カ月で解決できたのは、ウォール街にいる中国当局の友人が米国政府に働きかけたおかげである」と発言した。



 この人物は中国外交部、統一戦線部、共産党中央対外宣伝弁公室、軍事科学院などに助言を行っているとされている。



 彼の発言の真偽は置くとしても、「金融が良好な外交関係を醸成する」という前例がある。それは、1920年代の日米関係である。



 当時の日米関係は、ウォール街の金融資本家と日本のリーダーとの間の信頼関係によって支えられていた。



 ウォール街の金融資本家とはモルガン商会のトーマス・ラモントのことであり、日本のリーダーは金融・財政政策を担った井上準之助のことである。



 ウォール街が日本との関係を深めた契機は、1920年代に成立した中国に対する日英米仏の4ヵ国借款だった。



 借款の実務を担ったのがウォール街だったからである。



 彼らの活動はもちろん利潤に基づいていたが、結果として日米両国の国内政治に影響を与え、日米相互の信頼関係を形成する支えになっていた。



 しかしその井上が1932年に暗殺されると、金融の力で支えられた日米の協調体制は瓦解し、両国の関係は急速に悪化したことは周知の事実である。






◾️高まる「米中衝突リスク」



 前述の中国の学者は「ウオ-ル街と深いつながりを持つバイデン政権が誕生すれば、中国政府は再び米国政府を動かすことができるようになる」としていたが、その安全弁が消滅しかかっているのである。



 「歴史が繰り返す」と断言するつもりはないが、米中の金融分断により、今後、米中間の衝突リスクが飛躍的に高まってしまうのではないだろうか。




藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)







中国の弱みって、通貨ですね。


世界第2位の経済大国でありなが、人民元での貿易決済が、出来ないのですから。


ドル頼りです。そのドルですが、過去は、香港ドルを自由に決済に使えた訳ですが、香港を取り込んだ為、今では、イギリスの後ろ盾を失い、価値の下落は止まりません。


中国政府としては、自国内で完結する経済に転換しようと、デジタル人民元に転換を図ろうとしてますが、現実問題として、ドルの支配から抜け出せないままです。


中国大企業のアメリカでの上場って、良いドルを取り込む為の場だったんですが。


今後は、どうなって行くのでしょう。


抜け穴は、あるそうですが。