1 弁護士は安心を売る仕事
弁護士は,安心と納得を売る仕事です。このことは以前,ブログに書きました。
トラブルに巻き込まれた人は,「この先どうなるのだろう」という不安で心が一杯になっています。弁護士は,まず傾聴し,共感して,解決策を分かりやすく説明しなければなりません。解決の見通しが立つと不安はかなり解消されます。
事件の依頼を受けた場合は,打合せを重ね,定期的に進捗状況を報告します。「しばらく報告がないけれども,どうなっているのだろうか」という不安を与えてはなりません。
2 預り金についての不安
弁護士が依頼者から金銭を預かることはよくあります。弁護士の側から言うと預り金であり,依頼者から言うと預け金になります。
時々,弁護士が預り金を横領したというニュースが流れます。依頼者は言葉にはされませんが,「弁護士に預けたお金は大丈夫だろうか」という不安を抱いてます。
3 お金を預かる仕事
お金を預かる仕事というと,銀行,証券会社,保険会社などがあります。
銀行が預かったお金を不正に使ったりするようなことがあると,顧客に甚大な被害を与えます。
そこで,銀行業を始めるには,厳格な要件が定められ,厳重な審査も行われます。
また,開業後も,金融庁や日本銀行が,定期的に検査を行い,問題があれば是正を指示します。
4 弁護士の場合
司法試験に合格し,司法修習を終えれば,弁護士登録ができます。弁護士登録ができると,顧客から財産を預かることができるようになります。預かる財産について上限などはありません。
また,弁護士に対しては,銀行のように金融庁が検査を行うという制度はありません。
それは,弁護士には高い職業倫理が備わっているからです。
実際に,99.9%以上の弁護士はしっかりとやっています。ところが,ごく一部の弁護士が不正を行い,ニュースになって,依頼者の不安につながっているのです。
5 不安の解消のために
弁護士が,「私はきちんとやっています」と言っても,それだけで依頼者が安心できるものではありません。
金融庁検査のレベルまでは行かなくとも,第三者が関与して預り金の管理状況を検査することが有効だと思います。
弁護士には監督官庁となる国の役所は存在せず,弁護士会が監督を行っています。弁護士会は,問題がある弁護士については預り金の調査を行うこととされていますが,すべての弁護士を調査することは適切ではありません。
6 公認会計士による検査
私の事務所では,公認会計士と契約して,事務所の預かり金口座,所属弁護士が受任している破産管財人の口座,後見人の口座などを定期的に検査してもらっており,そのことを事務所サイトにも掲載しています。
弁護士の預り金は,預り金専用の口座で管理することが義務づけられています。その口座からの出金が適切なものであるか,出金の根拠となる証票を一つ一つ確認しますので,かなり厳重な検査となっています。
このような公認会計士による検査を導入する事務所は他にも出始めており,これから広がっていく可能性もあります。
依頼者に安心を届けられるよう努力したいと思います。