マンスフィールド・パーク (ちくま文庫)/筑摩書房

ジェイン・オースティン著/中野康司

(ストーリー)
 兄弟が多く生活が厳しい家に生まれたファニーは、伯母の家(マンスフィールド・パーク)に引き取られる。その家では、暖かく迎えられなかったが、従兄のエドマンドだけは、ファニーに優しく接してくれた。ファニーは、エドマンドに思いを寄せるが、エドマンドは他の女性を好きになり、ファニーは、別の男性からプロポーズされる…。

新植民地主義の文学として、授業で紹介された本の中で、『マンスフィールド・パーク』が一番読み易いと聞いて、読みました。『高慢と偏見』、『説得』に続き、ジェイン・オースティン著、中野康司訳は、三冊目です。やはり人間描写の辛辣さが面白い。

「人間が生まれつき持っている能力の中でいちばん不思議な能力は、記憶力だと思うわ。……人間の記憶力は、ときにはすごく長持ちして、すごく役に立って、すごく従順だけど、ときにはすごく混乱して、すごく弱々しいときもあるし、ときにはすごく横暴で、制御不能になることもあるわ。」ファニーの言葉、鋭い。

『インドへの道』に比べて、新植民地主義は前面に押し出されていませんが、マンスフィールド・パークの当主が、アンティグア島(西インドの諸島の一つ)の農園から収入を得ているため、このマンスフィールド・パークの豊かな生活自体が、植民地からの収入で成り立っていたということですね。