第1回神戸市地域公共交通活性化協議会を傍聴して | 神戸電鉄「粟生線の会」のブログ

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第1回神戸市地域公共交通活性化協議会を傍聴して

2016年6月 事務局 松本勝雄 

日本はいま大きな転換点を迎えていますが、将来に向けて豊かに生きていくために、公共交通の問題は大事になってきており、国鉄民営化や行き過ぎた規制緩和で危機に陥った地方鉄道などの運動の中から、すべての国民に「交通権」があることを認めよとの運動が広がり、交通政策基本法が不十分でゆがんだ側面を持ちながらも制定され、地域公共交通の問題でも、個々の交通の問題解決から、公共交通網の形成をめざそうとして地域公共交通活性化・再生法が改訂されました。

神戸市でも、この動きに沿い「神戸市地域公共交通網形成計画」が策定されることになり、6月3日に「第1回神戸市地域公共交通活性化協議会」が、3月1日の準備会を経て、学識経験者4名、市民団体2名、交通事業者15名、各種団体4名、関係行政機関12名の合計37名に、事務局4名が加わって開かれました。

この会議を神戸の交通問題に取り組んでいるみんなと傍聴しましたが、いくつかの大きな問題を感じましたのでここに記しました。

1、まず、この協議会の委員名簿を見て、市民代表の参加が少ないこと、傍聴席も少ないこと、こんな会議があることの周知の弱さなど、粟生線活性化協議会でも感じていることと同じ、市民の声を聴く姿勢、市民が主人公の立場が弱いことを痛感しました。

市民代表としては、住民団体代表の方だけでなく、交通問題に取り組んでいる市民を加えるべきで、われわれのような粟生線の活動に取り組んでいるものをはじめ、すみよし台くるくるバスやドングリバス、塩屋しおかぜ号、北区の各地のコミュニティ交通実現の運動に取り組んでおられる方などを、市民代表として多く参加してもらうべきです。さらに障がい者の声が反映できるようにすることもとても大事であると考えます。

徹底的な情報公開と、あまねく市民の意見を、特に反対の声もふくめて聞いて、その中からもできる限り取り入れられる意見は取り入れる姿勢を持つことが、つくられる計画を実現し成功させるうえで必要なのは当然のことだと思います。

神戸のまちをもっと住みやすくする活動へは、すべての市民が参加する権利を持っており、その権利は最大限保証されることが必要です。

2、公共交通の現状について、現状もしっかりと掌握して検討するべきであり、その際、公共交通の何が問題か、どこに公共交通の空白地や不便地があるかなどを明らかにするべきであるが、現状ではまだまだそれらが明確になっていないと感じる。とくに、コミュニティ交通の問題、神戸電鉄粟生線だけでなく、有馬線なども将来的には不安が増大していると感じる。

それを明確にするためにも、各事項の定義が必要であると考えます。

3、つぎに、「網形成計画」が提案されたが、その目的とされている内容が、ネットワークや課題ごとの方針、交通事業者や行政、市民・企業の役割、方針の着実な実施などとなっているが、目的といえないことや、市民にまで計画の実施の役割を押し付けるやり方で、まさに「上から目線・お役所的」と言わざるを得ない。市民の協働をどう位置づけるのかしっかりと検討する必要があります。

①目的は極めて大事であり、その第一は、市民一人一人の移動する権利を尊重することをあげるべきです。交通政策基本法では一部の政党や官僚の反対で「交通権」を規定できなかったが、今の高齢化社会や環境面などからも市民の移動をどう支えるのか、ここをしっかりと目的に位置付けるべきであると考えます。

②さらに、神戸市の公共交通の現状分析にたって、開発優先、過大な需要予測、公共交通を運行するかどうかについてこれまで神戸市がとってきた「基本的に採算の成り立つ需要があることが前提となり、運行するかどうかは事業者の判断に委ねられている」としてきた問題などを、「正便益、不採算」(社会的に必要な交通は公的な力で支える)に転換することすることを目的で明らかにするなど、これまでの反省点と転換点を明らかにするべきであると思います。

③公共交通の整備の進め方の根本に据えるべきことについて、すべての市民に安くて、便利で、使いやすく、環境や省エネに優れたものを最優先にして、その他の交通機関を組み合わせることを盛り込むべきではないでしょうか。自動車交通・モータリゼーションへの反省にたって、交通の転換をめざすことを目的で明らかにすることが必要ではないでしょうか。

公共交通の問題を考える場合、市民にこれまでの自動車使用を抑制することを求める以上、その参画を求めることは極めて重要であり、情報公開や、市民の意見への誠実な対応、計画づくりへの多くの市民の参加と関心を持ってもらう訴えを、目的としても明確にするべきであると思います。

④公共交通の問題を考える場合、まず「交通まちづくり」を据えること。LRT、BRT導入検討が提起されているが、このうちでも人と環境にやさしいLRTを柱にした公共交通整備をめざすことをかかげてはどうでしょうか。いろんなものをばらばらでなく統一的に関連付けて作り上げることが重要です。都心部から自動車交通を抑制するにはLRTの役割を発揮させてこそできると思います。

バスターミナルは、LRT利用と関連させて位置なども検討する。観光バスの停車場所やタクシーまちの場所の要求も出ていたが、これもLRTと関連させて考えること、LRTは「横に動くエレベーター」としてはどうか。観光バスでの来客者にはLRTのサービス券等も考えられるのでは。また、ストラスブールなど欧州のやり方も研究してはどうか。

⑤さらに全国的な経験でも「お団子と串」(富山市)や、「多核連携のまちづくり」(熊本市)、「歩いて楽しいまちづくり」(岡山市)など、それぞれの町の特色を強調した取り組みが行われているが、神戸では特に、神戸の魅力を生かしたまちづくりを公共交通整備と併せて目的に掲げるようにしてはどうでしょうか。おしゃれな神戸のまち、おしゃれな公共交通(LRT)、海と山に囲まれた空間を演出すれば、必ず「訪れてみたい神戸」を作れると思います。

4、「会議」を傍聴して、強く感じたことの一つに、交通事業者の参加の姿勢を改めてほしい点です。各事業者から、次々と自社の要求が出されていたが、要求を出すなとは言わないまでも、要求を出し合う場ではなく、神戸の公共交通を作り上げるために参加者が「協働」する場であること、それにふさわしい発言を求められていることを肝に銘じてほしいと感じました。

この会議の主役の場に座るべきは市民だということを明確にしないためにこのようなことが起こったといえると思います。

 

これらが会議の感想ですが、こちらの反省点としては、市民レベルで公共交通に取り組もうとする結集が弱いことです。全国の先進例では、交通問題に取り組む熱心な市民の運動があり、行政を動かしている、神戸でもぜひそのようなものを作り上げたい。神戸でも先進的な取り組みはいくつかできているので、その力を神戸市の公共交通政策を変えていくために生かせたらと思います。