皆さんは「コミュニティ・カレッジ」という言葉を御存知でしょうか?
コミュニティ・カレッジ(Community College)は、教育機関のひとつとされていて、国によって定義は様々であり、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、フィリピン、インド、マレーシアなどに存在しています。
意外と留学を検討したり、留学したことがある方の方がイメージしやすいかもしれませんが、日本ではあまり馴染みがない言葉かもしれません。
コミュニティ・カレッジの起源とは?
国によって定義の異なる「コミュニティ・カレッジ」ですが、
もともとの起源は、それぞれの地域社会に沿った教育を地域住民に提供し、地域文化を振興する目的で設立されてきたとされています。
例えば、地域のコミュニティーセンターや教会の地下ホール、集会場などに地域住民が集まって、関心の高い課題について専門家を招いての勉強会という形で始まったのが始まりだと言われていて、学問的知識の追求のみに終始するのではなく、趣味と実益を兼ねた勉強会的性格も備えていたとされています。
日本においては、あまり「コミュニティ・カレッジ」という言葉は聞かないかもしれませんが、最も近い概念は地方行政が主に開催している「市民大学講座」が相当すると思います。
市民大学講座は主には地方公共団体が開催しており、あくまで講座であり教育施設ではないのに対し、アメリカにおける「コミュニティ・カレッジ」は法的に教育施設として位置づけられています。
人生100年時代と言われる昨今、社会人の「学び」や「リカレント教育」が注目を浴びている。
“人生100年時代”と声高に叫ばれていますが、そうなってくると経済・社会システムも大きくパラダイムシフトします。パラダイムシフトしますというか、せざるを得ません。
今までの日本人の寿命の歴史を遡ってみると、
昭和22年(1947) 男性 50.06歳 女性 53.96歳
昭和45年(1970) 男性 69.31歳 女性 74.66歳
平成28年(2016) 男性 80.98歳 女性 87.14歳
戦後すぐの昭和22年頃は「人生50年時代」、
昭和45年頃は「人生70年時代」、そして今は「人生100年時代」。
(2016年の平均寿命が上記なので、今を生きている人たちの寿命はもっと長くなります。)
人生50年時代の頃は、特に働いている人たちは人生の多くを「働く」時間に費やしてきました。
寿命が伸びるにつれて、ずっと働き続けるだけでは、心も体も持たないことなどから、
「働く」+「休む」も大切だよねという流れができてきたり…。
もっと寿命が伸びてくる(=人生100年時代になってくる)と、
「(多様な)働く」×「学ぶ」×「休む」を組み合わせて人生を構成していかないといけない時代になっているのだと思います。
また、寿命が伸びただけでなく、時代が変化するスピードも早くなっています。
そんな中、最近特に注目されているのが、生涯にわたって教育と就労を交互に行うことを勧める教育システム「リカレント教育」です。
政府が提唱している、「働き方改革」や「人づくり革命」の文脈の中でもよく「リカレント教育」という言葉が使われています。
“リカレント教育とは…スウェーデンの経済学者レーンが最初に提唱し、経済協力開発機構(OECD)が1970年代に提唱した生涯教育の一形態で、フォーマルな学校教育を終えて社会の諸活動に従事してからも、個人の必要に応じて教育機関に戻り、繰り返し再教育を受けられる、循環・反復型の教育システムを指します。
リカレント(recurrent)は、反復・循環・回帰の意味で、日本語では回帰教育、循環教育と訳されます。教育制度はもとより、労働関連政策や企業の雇用慣行なども併せて再編し、教育機関での学びとそれ以外の労働を主とする諸活動とを、個人が生涯を通じて交互に行えるように、社会体制を改革するのが「リカレント教育」の目指す戦略的構想です。”
(日本の人事部より)
社会人になってからも多様な「働く」×「学ぶ」場が必要。
変化が大きな時代の中で、人生を100年と捉えて生きていこうと考えると、
働き方も多様化していかなければは、働きたいと思っていても働けない人が増えてしまうし、
生涯を通じて学ぶ姿勢を持ち、“自らを継続的に活かしていく”ということが必要な時代になっているのかもしれません。
リカレント教育として「学ぶ」と一言で言っても、実は目的の異なるいくつかの学び方があるように思うのです。個人的な意見ですが、簡単にまとめてみます。
例えば、
1)キャリアアップや、女性や高齢者などの社会進出などを目的とした、職業技術や知識を外部の教育機関で学ぶ学習機会
<例>職業訓練や資格取得など
2)社会人経験や職業経験を経た後に、大学もしくは大学院などの教育機関での修士課程や博士課程などで学位を授与されるような学習機会
<例>社会人経験を経て、MBAを取得するケースなど
3)もう少し広義の意味での“生涯教育”、つまり「人々が自己の充実・啓発や生活の向上のために、自発的意思に基づいて行うことを基本とし、必要に応じて自己に適した手段・方法を自ら選んで、生涯を通じて行う学習」(昭和56年の中央教育審議会答申「生涯教育について」より)
目的がそれぞれ違うのですが、混合して「社会人の学び」として取り扱われるので少しややこしい側面もあるかもしれません。
現段階でのリカレント教育とは、主に2(法律で定められた教育機関での学び)を指すと思うのですが、
個人的に日本のコミュニティ・カレッジとして注目しているのは、「3」を中心とした一番広義な学びの場です。
日本におけるコミュニティ・カレッジに近いものとして、地方行政が主催する「市民大学講座」以外にも、社会人のための開かれた学びの場は下記のようなものが多数存在しています。
<地域・社会課題系>
■自由大学 https://freedom-univ.com/
「大きく学び、自由に生きる」をテーマに、知的生命力がよみがえるユニークな講義を展開する学びの場。2009年の開校以来、およそ200種類のオリジナル講義を企画、のべ10,000人を超える人が講義を受講。
■丸の内朝大学 http://asadaigaku.jp/
運営主体はまちづくりに関わるNPOや一般社団法人によって組成される丸の内朝大学企画委員会。丸の内エリア全体をキャンパスに2009年4月に一般向けの講座を開講。 活動の目的は丸の内の朝の時間の学びの場を通じてコミュニティを形成すること。2017年で開講9年目を迎え、これまでにのべ1万7千人以上の方が受講。
■シブヤ大学 http://www.shibuya-univ.net/
『シブヤ大学』は、街を大学のキャンパスに"見立てる"ことによって、街のヒト・モノ・コトを再発掘し編集していく、「まちづくり」をコンセプトにした特定非営利活動法人。
街の日常生活の中に、常に新しい"何か"と出会い続けていくための機会をつくり、"何か"をはじめようとする"すべての人たち"の「場(=プラットフォーム)」となる活動をしています。
<メディア系>
■News Picks アカデミア
https://newspicks.com/academia/about
「リーダーの教養」をコンセプトに、書籍、イベント、講義、アート、体験などを通じて、「ビジネス×教養」という切り口から、新時代の学びと出会いを提供。
目指すのは、「教養×実学×行動」による新たな価値の創出。新しい時代を創るリーダーにとって、知的な刺激にあふれる場を、リアルとネットを横断しながら創り上げていきます。
アカデミアの講義+アカデミア書籍+News Picks有料記事など3つの体験がセットになっている。
<教える×学ぶのオンラインサービス>
■ストリートアカデミー https://www.street-academy.com/
世の中に存在するそれぞれの人間が自分の持ったスキルを、周囲の人たちにシェアする文化を育み、「身近な人から気軽に学べる社会を創る」学び場、学びのマーケット。教えるのにも学ぶのにもこれといった資格や肩書きも必要ない点が大きな特徴。
■Schoo https://schoo.jp/guest
365日、無料のオンライン生放送授業を開催。「未来に向けて今あなたが学んでおくべきこと」をテーマに、経済・テクノロジー・ビジネス・経営などの最先端を皆で一緒に学べる、生放送コミュニケーションサービス。
<女性向け>
■女子未来大学 http://www.joshi-mirai.com/
(※手前味噌ですが、女子未来大学もコミュニティカレッジの一つです!)
女性たちが自らの主体性を持って人生を選択するための“学びの機会”を提供する、女性なら誰でも参加できるプラットフォーム大学。「なりたい自分になる学部」「想いを磨き実現する学部」「多様な人を知る、人を理解する学部」「世界と繋がる 日本を知る学部」の4つの学部で構成した、キュレーション授業を毎月開催。2014年11月設立以降、10代〜70代まで様々な女性たちが学び、累計参加者数は1300名を突破。
■SHElikes http://she-inc.jp/likes/
21世紀を生きる女性達のためのレッスンクラブ。SHElikes(シーライクス)が提供する様々な習い事によって、「学び」と「お互いを高め合える仲間」との出会い、「わたしだけの好き」を見つけることができます。
生涯を通して学び続けられる環境や社会に変わっていく。
社会人が学べる場は確実に増えています。学ぶ選択肢や、学べる内容も様々。
民間企業も、教育機関も、そして働き方改革や働く環境も、少しずつではありますが、環境も社会も変化していく流れも感じます。
一方で社会や環境という面で、まだまだ大きなパラダイムシフトが起こっておらず、「働きたくても働けない」「学びたくても学べない」人たちが多くいることも事実。(そしてこのままだと、そういう人たちが増えてしまいそう。)
生涯の中で、一人ひとりの可能性を活き活きと発露できるような、「働く機会」×「学べる機会」が増えていくこと。
そして多様な選択肢の中で、できるだけ迷わずに満足できる選択ができるための、必要な情報と支援が行き渡ること。
今の時代においては、「学ぶなんて余裕がある人ができること、働くことだけ(もしくは家族のことだけ)で精一杯」と思う方も多くいるかもしれません。
ですが、未来においては「働く」と「学ぶ」の循環を繰り返している人たちがもっと増えていると思うのです。
今はまさに大きな変革の過渡期。
官民学一体で前向きな未来と社会を作れることができれば、今の「当たり前」とは全く違う未来が待っているのかもしれません。