自分語り 後編 |   われら神の子カヌーの子

自分語り 後編

夏の大会では、まずグループリーグがあり、6チームのうち上位2チームが決勝トーナメント進出。決勝トーナメントで優勝チームが都大会出場。また決勝トーナメントで一回戦を勝ったチームは、隣の地区の同様の代表と最終のグループリーグをして上位のチームが都大会に行けるという仕組みだった。


予選リーグ、初戦を大勝する。


2試合目、都大会常連の強豪、木曽中との試合。同じグループで最強とされていたチーム。相手チームにはベンチに入れない部員もおり、グランドを囲むように応援団がいた。

圧倒的なアウェイ感だった。


開始早々セットプレーから押し込み、自分が先制点を奪う。


1試合でも多くこのチームで試合したいという気持ちがプレーに出ていて、その日の自分の調子は絶好調だった。正直この試合はボールを奪われる気がしなかったし、守備の硬いチームなため一点とれば勝てると確信していた。


試合後半から雨が強まり、大雨となって、試合のバランスが崩れた。中盤でボールを持つことができなくなり、前線への蹴り合いのサッカーになってしまう。粘り強く守ってはいたが、後半途中に失点してしまった。ゴール前で水溜まりにボールが止まり、そのボールを押し込まれてしまった。


試合終盤、快速サイドバックをワントップにして一発を狙いに行く。ラストワンプレーで裏抜けに成功した。しかしボールがとまりドリブルできずにキープが精一杯だった。それでも競り勝ってくれた。4人しかいない3年生のプレーだった。後ろから走り込んでいた自分にパスをくれた。ゴール前、ラストワンプレー、泥泥のピッチに足をとられた自分は上手くミート出来ずシュートはキャッチされてしまった。そのまま試合終了。


雨じゃなかったら、自分が最後冷静なシュートを打てていたら、何度も悔やんだが、なんとか望みは繋いだ。それまで弱小と思われていた他チームからの評価が明らかに変わり始めた。


第3試合も勝ち、グループで木曽中と同率の2位になる。


そして4試合目、グループ首位の七生中との試合。

前年度、都大会に行ってるチームでこのグループでは木曽中との二強とされていた。


この試合に勝てば予選を通過できる。

お互いにそう思ってる試合で、一進一退の攻防が続いた。


前半途中、自分が抜け出してドリブルで持ち上がったところから、後ろから上がってきたキャプテンに繋ぎ、キャプテンがミドルを決めて、先制。


そこからは守備を固めながら、要所でカウンターをし続けて何とか試合終了。


この時点でグループ首位。

正直、予選は抜けたと確信していた。

チーム全体がそんな雰囲気だった。


この時点で、一位で抜けた後に当たる隣のグループの2位チームを分かっていた。そこは練習試合を何度もしていて一度も負けたことがないチームだった。


決勝トーナメントで一回勝てば優勝できなくとも最終リーグにいける。隣の地区よりも自分達の地区の方がレベルは高く、そこまでいけばかなりの確率で都大会に行ける。


そこまで想像できた。

それを全員が見えたとき、既に負けだったと思う。


最終戦、ノーマークだった中学校に負けた。

開始早々からチームの入りが浮ついてるように感じていた。開始から攻め続ける一方的な試合展開。

キーパーまでかなり前に出ていた。


センターサークル付近の敵陣からのクリアがそのままキーパーの頭上を超えて入ってしまった。


その後は猛攻を続けたが、ポストやバーに当て続け。更には自分のゴールもオフサイドで取り消しになり、そのまま試合終了。


結果その日打たれたシュートは失点の一本だけ。また自分達がグループリーグでした失点は木曽中との一点とこの試合の一点で二点だけだった。


それでもグループ2位までに入れば、予選を抜けれる。まだチームの雰囲気は明るかった。


自分達の試合後に行われる木曽中 対 七生中

との試合を顧問の先生と3年生だけで観戦し、1、2年生は先に帰ることになった。


この時点で木曽中は3勝1分、七生中が3勝1敗、引き分け以外なら3勝1分1敗の自分達は勝ち上がれる予定だった。


結果は1対1の引き分け。

七生中と勝ち点も得失点差も並んでいたが、得点数の差で予選グループで敗退した。


試合観戦で引退が決まるというなんとも後味の悪い結末だった。

試合後、顧問の先生が最後の挨拶をしてあっけなく終わってしまった。帰り道、「よし!こっから勉強集中するわ〜」とか言っておちゃらけていたが、家でめっちゃ泣いた。数ヶ月最後の試合で外したシーンがフラッシュバックした。


実際、自分達のグループを首位で通過した木曽中は都大会まで行き、都大会ベスト8まで行った。最後の大会前に交流戦をした中学も都でベスト16まで行っていた。

この事実がより一層後悔を強めた。


そして同じ頃に、自分がいたクラブチームがクラブ選手権で関東大会まで行ったことを知った。


この時に高校でこそは何かで成功しようと決めた。


ただ高校では結局勉強にも部活にもやりきれなかった。


そんな自分を変えたくて、大学では4年間夢中になって何かに打ち込もうと決めた。





そして今、引退の時が刻々と近づく中、最近はずっとやり切れているか?と自問自答してる。


もう終わってから、あの時こうしていたらと後悔したくないし、なあなあにして楽しいだけの時間にはしたくないと思っている。


4年目にして、たくさんの後輩と楽しい同期、ライバルでもあり相方でもある最高の仲間、やっと理想に近づいてきた。


最後の夏は絶対に人生で1番熱い夏にする。