父はまだ家に居る。
父の生まれ育った地域では
数箇所の骨だけ骨壷に入れて持ち帰り
残りは火葬場でみんな一緒に供養されるらしい。
父はその風習に倣おうかとも思ったが
火葬場の方にうまく伝わらなかったため
大きな骨壷に納めた時に
いくつかの骨を小さな骨壷に分けて入れてもらった。
仏壇には小さな骨壷と過去帳が並んでいる。
毎月、月命日にはその日に備えた蝋燭を灯す。
この日だけは、ほぼ一日中火が灯されている。
母は、懺悔の気持ちなのか、後悔なのか
必ず月命日は仕事を休む。
そんなとある月命日。
母が怪我をした。
私が帰宅した後、蝋燭を見に行こうとして
階段から落ちたのだ。
その日は昼間にワクチン接種をした日でもあり、普段と多少体調が異なっていたのだろう。
母はそれを大事にせず、次の日に顔を合わせた私にも隠した。
そして2日後、職場の方に付き添われるカタチで病院を受診。
病院から私に電話があり
私は病院に呼び出された。
『階段から落ちて受診されています。先生からお話がありますので、今から病院に来られませんか?』
その時、私は運転中。
娘を送迎している時だったので
娘が携帯をスピーカーにしてくれていたため、その会話は娘にも当然聞こえていた。
バックミラーに映る娘の顔は真っ青だった。
私の祖父(父の父親)は急性硬膜下血腫で亡くなっている。
自分で救急車を呼んで、待っている間に意識を無くし、結果、そのまま覚醒することはなかった。
娘もそのことは知っている。
そして、連絡が来たのは父が通った総合病院。
恐らく、娘の中で《生きている姿には会えない》と思ってしまったのだろう。
そのまま病院に向かったが、娘は中に入れなかった。
子ども(私)と孫(娘)だという関係は問題なかったが
親と離れても問題のない年齢だと判断されたため、外で待つように指示されたのだった。


