「自転しながら公転する」がとても好きだった山本文緒さんの最新作「ばにらさま」は、
するすると読めるのだけれど、
うっすら怖かったり、
ミスリードに気づくのが楽しかったりする、
6篇からなる短編集。

数篇にsnsの文章が出てきて、改めて気づかされるのだけれど、
世に出しているものである以上、人に読まれるものなのに、不特定多数に向けて発信しているもののせいか、意外な人から、読んでます、と言われると、ドキッとしたりする。
反対に昔、同級生が匿名でやっているSNSを、他の子が内容で特定できて見つけたことがあった。
そこには彼女の、みんなには見せていない一面が書かれていた。
彼女は気づかれていないと思って、日々更新していたのだが、それをみんなも日々読んでいたのだった。

笑顔の裏には、何かある、ときもある。

そんなことを思い出したのは、
表題作の「ばにらさま」

この短編集の中では一番短い「20×20」は、主婦から作家となった「私」の、隣人たちとの日々を描いているのだけれど、最後にゾクっとする。
ただ、これはモノを書いて売る仕事をする人なら、味わうことがあるかもしれない怖さで、決して特別なものではない。

私は、あまりに悲しくて大泣きしている時、
ああ、こんな感情の爆発を演技でもできるだろうか、この感情を冷凍保存できないかと、ふと思ったりする。そんな自分に嫌気がさすこともある。

そして最後の「子供おばさん」は、急に我が身に降りかかってくるようなお話で。
早くここから抜け出したくなった。
もしくは、これを先に読んだ友人と白ワインを飲みながら語り合いたい気分です。