エルザ・マルボ著「念入りに殺された男」が、新鮮で、面白かった…
フランスの片田舎で民宿を営む小説家崩れの主婦アレックスが、泊まり客のベストセラー作家の男ベリエを殺してしまう。
家族を守るため、死を偽装するため、アレックスはパリに出て、ベリエのアシスタントになりすまし、画策する。アレックスを殺すのにふさわしい人物は誰かと。
果たして、書けない彼女は、完全犯罪のシナリオを書けるのか?締め切りまでに…

面白いのは、今までは全然筆が進まなかったアレックスが、ベリエ殺害の偽装工作のためには、どんどんアイディアを思いつき、筆が進むのである。火事場の馬鹿力というか、人は追い詰められたら、やるしかなくなったら、力を発揮することができるのだ。
また、今まで、周りの人の人生を盗み、それを書き作品にしてきたベリエが、今度は書かれる側になるのも興味深い。
作家の業のようなものが滲み出ている。

他にも好きなところが沢山あるのだけれど、
ネタバレになりそうなので、やめておきます。


写真右の、武器にも見えるのは、
フレデリックマルの香水。
ローディベール(冬の水)
読んでいる途中で香りが欲しくなったので。

人が消えても、携帯やネットには様々なものが痕跡として残り、また、その人の、匂いも残る。

その、残されたものたちがリアルで、
匂い立つような小説だった。