「巨大な代償を払うことになると分かっていても、人は重大な国家の真実を明かすために声をあげるべきか?」
という不朽のジレンマを、鮮やかに、そして重厚に表現した作品「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」。
 
ニューヨークタイムズが政府の最高機密文書を一面で暴露するものの、ホワイトハウスから圧力をかけられる。
同じ機密文書を手に入れたニューヨークタイムズは、国家に対する反逆罪に問われても、
それを紙面に載せるべきかどうか悩む。タイムリミットは、明日の新聞を印刷する時。だから数時間!
 
ワシントンポストの編集主幹、ベン(トム・ハンクス)は真実の追求のために出すべきだと主張するが、
ポストの発行人キャサリン(メリルストリープ)は、出したために今まで築き上げたキャリアや財産、
更にはワシントンポストの社員たちすべてを路頭に迷わせることになるかもしれないという責任から、
すぐにGOとは言えない。
 
時間が迫る中、葛藤する彼らの姿を描く。
 
ネットニュースなどまだない時代、
その日の朝刊の記事が、最初のニュースだった。
トラックから束になって、どかっどかっと落とされる新聞。
それをいち早く手に取る人々。
そんなシーンに、郷愁を覚えてしまった。
時代の変化を感じつつも、
「報道の自由」についての論争は、この時も今も変わらないなあと!
 
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新聞繋がりで。
こちらは、スポーツ紙の熱き現場を描いた快作!
本城雅人著「トリダシ」
 
「とりあえずニュース出せ」が口癖の、優秀だが口が悪く、敵も多い東西スポーツのデスクの鳥飼。
彼に翻弄される部下たち。
面白いのは、スクープのライバルは他紙だけではなく、その日、誰が担当のデスクかというのも
とても大きいのだということ。
3人のデスクは自分の担当の日にこそ、スクープを出したいという欲望がめらめらと。
更には、スポーツ紙の上には親会社の東西新聞があり、
明らかにスポーツ紙を下に見ていて、いつでも優位に立とうとする。
 
もう、あっちこっちに争いがあって大変。
そんな中で、スクープ、それも誤報ではなく正しい情報をどこよりも早く出そうとする
スポーツ紙の記者たちの奮闘ぶりに、痺れまくりでした。
 
「この世界は抜くか抜かれるか。やられたらやり返せばいいだけの話だ。」
 
もはや侍の世界です。
ぎりぎりのところでずっと闘っているような、油断できない毎日。
 
たとえ勝っても、すぐに明日のための闘いが始まる。
余韻に浸ってなんかいられない。
 
作家の本城雅人さんは、新聞社でスポーツ記者として取材に携わっていた経験があり、
このあたりの臨場感が抜群。記者たちの個性もきらりと光ってる。
トリダシこと鳥飼のキャラクターがなんとも言えないんだよなあ。
強気に見せて、絶対背中に哀愁漂わせている感じ!笑