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今年、叔父が事故で亡くなって。本も読めない、映画も観たくない
と、何かに触れ合うことを放棄していた時期に、唯一観に行った、ブリューゲルの「バベルの塔」。
 
この作品の前だけ、長い列ができていて。一人ひとり流れ作業のような形で鑑賞するようになっていました。
「立ち止まらず、お進みください」と言われながら、少しずつ絵に近づいて行って。
 
ぱっと目の前に現れた「バベルの塔」を観た瞬間、
絵の持つ力に感動して、、、胸がいっぱいになりました。
 
思ったよりも絵のサイズは小さいのですが、
塔の質感や、そこにいる人々の描写の細やかさ、
「美は細部に宿る」と言いますが、その細部の結集が、芸術の力として
押し寄せてきたのでした。
 
バベルの塔は、旧約聖書の物語が元になっています。
人間は昔、一つの言語を話していました。
そんな人間たちは、ある時、天まで届くような高い塔を建て始めてしまいます。
 
困った神様は、人間たちの言葉を通じなくさせて、混乱させ、
塔の建設を防いだ、というお話です。
 
急に言葉が通じなくなった人々は、お互いにどう思ったのだろう。
変なことを言い出した、なんだコイツ、って怒ったのか。
訳分からないから、話せる人とだけ、一緒にいようと思ったのか。
今まで「塔を建てる」という同じ目的があったのだから、言葉は通じなくても
なんとかやっていこうとする人はいなかったのか。
気になります。
 
 
今まで当たり前のように話していたのに。
急にあちら側に逝ってしまって二度と話せない。
これも、神様の、なにか、なのでしょうか。
 
先日、祖母が朝、仏壇に向かって、
息子の名前を強く何度も呼びかけているのを偶然聞いてしまったとき、
胸がつぶれそうになりました。
 
「あ、めぐちゃん、いたの?聞かれちゃったね。
おばあちゃんね、毎朝こうして呼びかけてるの。
でもね、もう、全然、返事してくれなくて」
と言って泣き出してしまいました。
 
祖母は毎朝、絶望に突き落とされているのだと。
言葉が、永遠に届かない、その辛さ。
 
だから、バベルの人たちは、どうしたのかなあって。その後。
 
その後の遠い未来が今で。
今は学べば言語は話せるようになって通じるけれど。
それでも通じないことが山ほどあるような。
 
何を想って、ブリューゲルはバベルの塔を描いたのだろう。
知りたいな。
 
話が長くなりましたが、そんなこんなで。
今年後半は、アートから力をもらうことが多くて。
 
そして2017年の美術館ラストは、
サントリー美術館でした。
 
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フランス宮廷の磁器 セーブル、創造の300年

マリーアントワネットから草間彌生へ

 

国王お抱えの彫刻家や画家たちが考案した、洗練された絵柄や形、

磁器というデリケートな素材の上に、いかなる形や絵柄も実現する、

技術者の卓越した妙技、両者の真剣勝負が創り出すセーブル磁器は、

優雅で気品に満ち、瞬く間にフランス内外の王侯貴族を虜にしました。

 

中には、使いづらいのではないか?と首をかしげたくなるものもありましたが、

貴族たちの考えは、そんなところにはないのでしょう。

カップと傘とドレスの柄を統一するのがお洒落だったそうで、

そのこだわりや理想が、セーヴル磁器を芸術品にまで高めたのだと。

 

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こちらは、写真OKの作品たち。
「ダンサー」
ダンサーが手にする衣の柔らかさ、肢体のしなやかさ。
今にも踊りだしそう。
硬質な磁器で、この動きを作り上げていることにため息が洩れました。