澤田瞳子著「腐れ梅」が意外な面白さだった。
平安時代、色を売って暮らす美しき似非巫女、綾児(あやこ)は、仲間の阿鳥から、菅原道真を祀る社を建て、金儲けをしようと持ちかけられる。
やがて道真の孫や、彼の学友である僧侶、最鎮とも手を組むことになるが…
怨霊×巫女で、宗教的な話になるかと思いきや、ひたすら俗っぽく、泥臭い人間ドラマが繰り広げられた。
人は、強いものに惹かれる。
例え、似非であろうと、周りの思惑と合致した時、それは本物になってしまう怖さがある。
それぞれの欲望が四方八方に散らばり、やがて猥雑なエネルギーとなって押し寄せてきた聖なるラストには、手を合わせたくなった。
始まりをよく知らないのに、手を合わせていたかも、と。