ゴールデンウィーク最終日、今年も文藝春秋で開催された、
「高校生直木賞」の全国大会を見学させていただきました。
高校生直木賞とは、全国の高校生たちが集まって議論を戦わせ、
直近一年間の直木賞の候補作から「今年の一作」を選ぶ試みです。
そして、今年の候補作は・・・
須賀しのぶ「また、桜の国で」
原田マハ「暗幕のゲルニカ」
門井慶喜「家康、江戸を建てる」
恩田陸「蜜蜂と遠雷」
萩原浩「海の見える理髪店」
冲方丁「十二人の死にたい子どもたち」
でした。力作揃い!
はじめこそ、発言するのが緊張気味の高校生たちも、
次第に熱を増し、我先に、と挙手をし、忌憚のない意見を述べる述べる。
思わず、お腹を抱えて笑ってしまうことも多々あり。
初めて気付かされる視点に、うなり。
怒涛の、3時間半でした。
そして、今年も、「高校生直木賞とは、どうあるべきか?」ということが
真剣に話し合われました。
接戦になった、最後の二作「蜜蜂と遠雷」「また、桜の国で」の時は、特に。
高校生が高校生に勧めたい本なのか。
高校生が選んだということで、大人にも読んでほしい作品でもあるのだ、など。
激しい議論の末に選ばれたのは、
須賀しのぶ「また、桜の国で」
でした。
二冠獲った「蜜蜂と遠雷」は書店でたくさん見かけるけれど、
「また、桜の国で」は、高校生直木賞の候補作になって初めて知った、初めて読んだ、
という意見があったのですが、実は私もその一人でした。
見学させて頂くから、その前にまだ未読の候補作を読んでおこうと思い、
書店に行ったのですが、「また、桜の国で」は、三軒目でやっと見つかりました。
しかも、てっきり時代小説かと思ってその書棚を探していたのですが、
見つけた書店では「ミステリー」の書棚にありました。(書店によって違うと思いますが)
分厚く、手に取った時は、それほど惹かれなかったものの、
読みだしたら止まらなく、久しぶりに徹夜で読んでしまったほどでした。
舞台はポーランド。
第二次世界大戦の足音が近づいてくる中、ポーランド日本大使館に着任した書記生の青年が、そこで見た真実と、彼の選んだ道を、激しくも美しい筆致で描き切った作品です。
(この作品については、また改めて書きます。)
読み終わったときには、
「ああ、なんでこの本を今まで知らなかったんだろう。沢山の人に読まれるべき本なのに!!」
と強く強く思ったので、
「また、桜の国で」に決定した瞬間、本当に泣きたくなるほど嬉しかったです。
ああ、やっと、この本が、もっとたくさんの人に届く、と。
もちろん、「蜜蜂と遠雷」も大好きな作品で、会う人会う人にお勧めしていたので、
直木賞を獲ったとき、あちこちから「獲ったね!よかったね!」と、
まるで担当編集者のように(笑)お祝いメッセージが届いたのですが。
そして、最後の焦点になったのは、
「二冠獲ったから、高校生直木賞は違うものにしよう、という考えはやめよう」
「いいものは、いいんだ」
ということでした。
沢山賞獲ったから、こちらを、ではなく、純粋に。
どちらがふさわしいかを、真摯に選ぶ高校生が眩しくて。
その上で、「また、桜の国で」が選ばれたのが嬉しくて。
決定した瞬間の、高校生はじめ、見守っていたみんなの拍手が、
それはそれは温かくて、桜が咲いたみたいな笑顔で。。
今年も胸がいっぱいになったのでした。
参加校は、去年の19校から21校に増え、
去年参加した生徒さんが、今年はOBとしてお手伝いに回っていたり。
意見を聞きながら、ぶんぶんと首を縦に振る様子が可愛かったり。
去年よりも、更に層が増した感じがして、頼もしく。
この「高校生直木賞」が、ますます知られて、広がっていく予感しかなかったです。
高校生のみなさん、お疲れ様でした。
今年も、ありがとう。