朝井リョウさん最新作「武道館」は、五人組アイドル「NEXT YOU」が、武道館ライブを目指す物語。
現代のアイドルの胸の内が、苦しいほど胸に迫ってくる。
リアリティたっぷりに描かれていたので最初は、
ドキュメンタリーを見ているような感覚だったけれど、途中から、
この現実と地続きのようなアイドルたちに、果たしてどのような未来を、答えを、
作者は描いたのだろう、と気になりながら読み進めた。
アイドルへの愛が放った贈り物のような幕切れに、体温が、急上昇した。
又吉さんの「火花」は、話題になりすぎて敬遠してしまっていた自分の愚かさを嘆きたくなった。
1ページで惹き込まれ、3ページで、一度、本を閉じた。あまりに。あまりに素晴らしくって。
電車の中で読んでいたので、これはもう、後日、落ち着いて一気に読むしかない、と。
お笑い芸人二人の哀しみとおかしさと優しさに、何度も泣き笑い。
この小説が生まれるために、又吉さんは芸人になる運命を背負ったのかもしれない、と。
多くの人に笑ってほしいのと同じくらい、いやそれよりも、
この人に笑ってほしい、という純粋な想い。
毒がなくても傷つけてしまう不器用さ。
顔に貼り付けた笑顔。
人間は哀しい生き物だけれど、それだけじゃ終わらないぞって。
底知れない意思を感じさせるラストに、言葉を失った。
花火のように、ぱっと咲いて、あっという間に散ろうとも。
この眩い瞬間は、生涯忘れないんだろうな。