玉井さんは後で一杯だけと言い残し部屋へと戻って言った。
リンスーの匂いだけが、リビングに残っていた。
今日玉井さんが、どこで勝手に働いていたか気になるが、それは後で一杯の時、直接本人から聞くとして、それより明日どこで勝手に働くのか僕は気になった。

小林『明日早いって言ってましたが、玉井さんどこに行くんですか?』

山本『え?あぁ明日から一週間程、玉井さんには探偵をして貰うんです。』

小林『探偵?探偵ですか?』

山本『はい。実は別れた妻がいる妻の実家の和歌山に行って貰って、今妻は何をしてどういう生活をしているのか調査して貰うんです。』

小林『でもそんな事してどうするんですか?やっぱり山本さん奥さんと寄りを戻したいんですか?』

山本『勿論です…お互い嫌いになって別れた訳じゃないで…』

玉井さんがリビングに戻って来た。まだ十二分にリンスの匂いを放ち続けていた。玉井さんは山本さんの横の椅子に腰かけた。山本さんが冷蔵庫に缶ビールを取りに行った。
小林『あの~玉井さんは今日どこで勝手に働いていたんですか?』

玉井『今日ですか、今日はデパート2件でエレベーターガールです。内一件はエレベーターガールが居ない店でしたから結構長めに働けちゃた。』

小林『エレベーターガール?でも制服とかいるでしょ?』

玉井『制服ですか、ちょっとこっちに来て下さい』

と言い玉井さんは洋室の方え僕を案内した。

僕はリンスの匂いに促されるまま玉井さんの後を着いて行った。

ちなみに山本さんの家は、3LDKで洋室2部屋と先程、遺影が飾ってあった和室1部屋だった。玉井さんは、洋室2部屋の内その一部屋を玉井さんの部屋にしていた。案内されたのは玉井さんの部屋じゃない方だった。
玉井さんはその洋室の部屋の扉を開けた。するとそこには、様々の職種の制服がきちんとハンガーにかけられ整理されていた。

玉井『ここにある程度のそれっぽい制服が、揃ってるんですよ。凄いでしょ。山本さんが随時買い揃えて行ったんです。』
小林『ナースは無いんですね?』

玉井『ナースとか警察とか人の命に関わる仕事はしないんです。警察に似た制服着てたら単に犯罪になる可能性があるらしいからやらないんです。』

小林『そうですね絶対やらない方がいいですよね。レースクイーンっぽいのもありますね』

玉井『これは山本さんの趣味でしょ。やった事無いんですが、一度山本さんが買って来た時着さされました…』

奥さんと寄りを戻したいとか言ってなんやかんや楽しんでるんだなと思った。まぁ僕も山本さんの立場だったら着させるか…

玉井『佐川っぽいのとかクロネコっぽい制服もあるでしょこれ多分一番最初にやらされる仕事だと思いますよ。私も最初ヤマトの仕事しましたから』

小林『え、でも配達する荷物とか無いでしょどうするんですか?』

玉井『小脇に抱えれる位の荷物を持ってひたすら一日中街を練り歩くの…
正直目標も無いし、しんどかったけど、ただひたすらヤマトに成りきって頑張りましたよ。サボろうと思えばいくらでもサボれるんですけどね。でもこういう事って逆に真面目にちゃんとやらないと楽しくないし達成感も得られないと思うんで、

確かにそう思った、山本さんから給料は貰ってるとは言え、全く意味の無い事をしてる訳で、全く意味の無い事を一生懸命やる事、それは大事なことなんだなと、僕は働く前に教えて貰った。



まだまだ続く

★この話しは1月2日の喫茶店にてから読んで下さい。


★そして告知

『月亭遊方×チョップリンの 烏・烏・烏』

日時:3月8日(火)、午後7時開演(6時半開場)
会場:天満天神繁昌亭(地下鉄「南森町」JR「大阪天満宮」より徒歩3分)

出演:月亭遊方、チョップリン(らくごとコント)

料金:前売2000円、当日2500円

問い合わせ&予約:三栄企画 06-6631-0659
チケット販売:天満天神繁昌亭 06-6352-4874
チケットぴあ、サークルKサンクス、セブンイレブン店頭、繁昌亭窓口(11時~20時)
Pコード:597-700