僕と山本さんは、桜と言う定食屋の前に着いて店の中に入りました。店の存在は知ってましたが、中に入るのは初めてで、20人位が入れる感じで晩飯時でもあり、やや混んでました。僕と山本さんは二人テーブルに座り、おかずを取りに行きました。まぁどこにでもある感じのお店でガラスのショーケースにおかずが並んでおり、それを自分で勝手に取り味噌汁とライスは店のおばちゃんに注文する感じの定食屋でした。
て言うかこの定食屋で又勝手に働きだしたらどうしようかと思いながら山本さんを見てたら生ビールを注文してたのでその心配?はなさそうでした。
僕はやや薄めの豚カツともずくと山芋をトレイに乗せ、そしてライスと味噌汁を注文して席に戻りました。いつの間にか山本さんは既におかずを取り席に着いていました。
席に着くと生ビールが二つテーブルの上にありました。
山本『勝手に注文したけどビールでいいですか?』
小林『すいません頂きます!そういえば僕名前言って無かったですね…小林と言います。』
山本『ああどうも山本です』簡単な自己紹介を交わし、とりあえず僕らは乾杯しました。
山本さんはビールをぐびぐびと勢いよく飲みました。立派な喉仏が2~3 回上下するのが、なんだか妙に滑稽でした。それより山本さんのおかずのチョイスに驚きました。まず唐揚げとほうれん草のおひたしにサバの煮付けにライスと味噌汁。そしてもう一つサバの煮付け。全く同じサバの煮付けが二皿?なんでや?そんなに山本さんはサバの煮付けが好きなんでしょうか…僕はこれはどうしても気になるし逆に聞かないのもおかしいと思ったので山本さんに聞いてみました。
小林『山本さんサバの煮付け二つも食べるんですか?』
山本さんは『ええ、このサバの煮付けの横に付いいている生姜が大好物なんですよ。』
小林『え?じゃあサバは食べないんですか?』

山本『サバもちゃんと食べますよ。でもメインは煮付けの汁に浸った生姜ですよ。これが口の中で絶妙な甘辛さが広がってなんとも言えないんです。量は調度これ位がいいですよ』と軽く力説してくれた。特に例えずシンプルな説明だった。むしろ変に例えられるより全然良かった。
逆にそのシンプルさに異常さも感じ取れた。
なんせ定食屋でサバの煮付けを二皿トレイに乗せる人はこの人しか居ないだろうし…
僕は飯を食いながら何からどういう風に聞こうかと色々考えていたら、山本さんの方から僕に質問してきました。
山本『いきなりだけど、もし小林さんが連続強盗殺人事件の犯人で今も尚逃亡中で時効まで後1ヶ月、でも医者に余命3ヶ月を宣告されてたらどうします?ちなみに捕まれば裁判で死刑は確定なんです。後今は確か時効制度って無くなったんでしたっけ?その辺は無視して下さい。とりあえず時効まで1ヶ月で余命3ヶ月です。どう生きますか?』
え?なんか唐突な予想外な質問に僕は、困惑しました。えっと連続強盗殺人犯で逃亡中で時効まで… ちょっと待てよひょっとして山本さん…が正に今その状況って事か?この人連続強盗殺人犯で逃亡中なんか…?でもそんな人を殺すような感じには見えないし…でも人は見かけによらんし…でも勝手に働くと言う行動を取る位やから有り得るかもしれんし。僕は山本さんに恐る恐る聞いてみました。
小林『ひょっとして今逃亡中の連続強盗殺人犯って言うのは、山本さんの事ですか?』
山本さんは笑いながら言った。
山本『まさかそんな訳ないですよ。実は今、休みの日に趣味で小説書いてるんですよ。でその時効まで1ヶ月、余命3ヶ月の状況の人間が残り僅かの人生をどう生きるかってテーマで書いてるんでが、もし小林さんならどう生きるのかなぁ?と思ってちょっと参考にしたかっただけですよ』

なんだビックリした…と思うと同時に休みの日ってなんやねん、勝手に働いてるだけで今日も休みと違うのか?と僕は心の中で思った。て言うか勝手に働くと言う行動を取ってる自分自身の事を題材に小説すればいいのにとも思った。
とりあえず山本さんの質問に応えなければ。


まだまだ続く