240229(木)

まさかこんな結末になるとは……。

梅安さん。光と影を行き来する人。

善を行いながら悪を行う人の悲しい性。

でも光の世界では幸せだったのでは? 何もかも心を割って話せる無二の親友の彦さん、十五郎さん。そしてここ優しきおもんさん。実の母のように世話をしてくれるおせき婆さん。そして数多き梅安さんを慕う鍼医の快い患者たち。

池波先生は自らの死を自覚していたのだろうか。四巻あたりから急に登場人物が増え、話が急展開することが多く読んでいる側もついて行くのが大変だった。

 

長い読書歴の中で著者の死による絶筆は初めて。

しかし梅安さん。結末を知るより私たち読者にあれやこれやと展開を想像させてくれるわけで、池波先生の死により梅安さんたちは永遠に私たち読者の心に生きている。何とも皮肉なものである。

しかし最後のページに行きついて絶句してしまったのは言うを俟たない。
ハラハラドキドキの展開を池波先生、梅安さんたちありがとうと感謝の念でいっぱいだ。
なんだか芝居を観終わって舞台の幕に拍手を送っているようだ。