180620(水)

ムッソリーニに関する二冊目の本。

第二次世界大戦 ムッソリーニの戦い 新評論刊

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※93年刊の古い本なので版元切れのようで残念

 

読めば読むほど不可解だ。一体ムッソリーニは何がしたかったのか?

共通の目的もない独伊両国が軍事同盟を結んでてんでばらばらに戦争を起こす。

ドイツは勝手にポーランド侵攻、西ヨーロッパを席巻、イギリスを襲うかと思いききや今度はソ連に参戦。

ヒトラーはソ連を植民地にし人口のが膨らみ、食糧が不足したドイツ人を移住させようとした。

イタリアは地中海から北アフリカ、ソマリア、エチオピアに侵攻。こちらはローマ帝国の栄光を追い求め、北アフリカ、東アフリカに植民地を作ろうとした。

軍事的には全くと言っていいほど共通目的がない。協力はすべて後付け。

 

日独伊はやってることは同じだ。日本は満州だった。

いずれも英仏その他からの解放が大義名分。こちらも大東亜共栄圏のお題目と全く同じ。

 

しかし読み進めて思うのだが歴史的に先に手を付けた英仏と後からやってきた新興国独伊。植民地の人々にとっては支配者が変わるだけで住処を略奪され、搾取されることには変わりがないではないか。まるでオーウェルの「動物農場」状態。

勝てば官軍。独伊ばかりが悪者にされるが英仏をはじめとし、世界を搾取してきた西ヨーロッパの国のことは何も問われないのだろうか、とも思う。

イタリアもドイツも19世紀に群列割拠していた小国が英仏に遅れてやっと国家統一。

ドイツは先の大戦で敗れ疲弊し、ヒトラーの強引な政策で軍事大国にのし上がった。

一方イタリア。戦勝国でありながら後塵を拝しヨーロッパの二流国。

いずれも遅れてきた国だった。

イタリアはドイツが戦争を起こしてから一年後にやっと参戦する。しかも瀕死のフランスに侵攻する。大戦末期に瀕死の日本に参戦したソ連と日本人の私にはダブって映る。ソ連への参戦もドイツの後追い。ドイツのおこぼれに預かろうとするコバンザメ戦略は見苦しいこと甚だしい。

 

イタリアが孤立してはやっていけないのでドイツと手を組んだのはわからないではない。

しかしここで疑問なのはドイツに果たしてメリットがあったのだろうか? 却って軍事力が弱くまとまりのない国、お荷物を抱え込んだ感が強い。対立していない中小国だから「とりあえず仲間にしておけ」ということなのか、ヒトラー個人が本当にムッソリーニを崇拝していたからなのか?

 

一党独裁という意味では両国は似ているが、ドイツはヒトラーがナチスを私物化した言わば一人独裁。一方イタリアは少なくともファシスト党内の10数名の幹部の中では権力の分散化は成り立っていたようで中身が全然違う。これがムッソリーニを実質解任し、イタリアの早期降伏につながったということは恥ずかしながら初めて知った。

あの時期イタリアは政府、国民ともに翻弄されて生きていたのだろうか。謎が多い。

 

良書なんで版元切れ(絶版?)は残念。文庫化、復刻が望まれる。

……でも専門書売り切るって大変ですもんね。私も端くれなんでよくわかります……ペコリORZ