ヘビが苦手なくせに穴子とウナギが好きだ。


ウナギの寿司なんかは昔は東京になく、関西に帰るたびにパクついていた。


安いすし屋に入っていきなりウナギ三人前、などとヘンテコ注文も数多くしてきた。



わたしはヘビとウナギはアットー的に差別してしまっている。


差別はいかんが、ここんとこだけは許してほしい。「見逃しくれヨォーー」って感じなのである。



中国ではヘビを食うのが流行っているらしい。


そりゃ、マムシドリンクなんていうのがあるから、滋養強壮に効くのかもしれない。


でも、わたしゃ、ヘビ関係は断固NO.だ。


・減棒するといわれてもやだ

・野球の打球の飛距離が30メートル伸びると言われてもやだ

・精力絶倫丸出しムキムキマンになると言われてもやだ

・ほしのあきちゃんが「ウッフーーン」などといって迫ってきてもやだ。……かな??

・サンシャインビルから生きたまま吊るすといわれたら……ちょっと考える


高いところとヘビは、昔から苦手なのである。



でも、なんでヘビが苦手なんやろうねえ?


これにはトラウマがある。


ちなみにヘビのトラウマができたのは、夏の琵琶湖バレイ(滋賀県のスキー場)。


ガキのときに先頭きって「ふふふのふーーん」といい気になって山を歩いていたら、


なにやら1メートルほど手前の草むらが動いた。



ごそごそ、ごそごそ、ザワザワと……。



「なんやろ」と覗いたのが間違いの始まりだった。


知らない方がいい、ということは世の中ままあるものだ。


なにやら黒く太長い物体が、のそりのそり、ガサッガサッとわが前を横切っていく。


私の鼻先30センチのところを、である。



攻撃するでもなく、逃げるでもなく。泰然自若、まったくのマイペース。


私はその貫禄に圧倒されたのかもしれなかった。


最初は巨大なウ○コかと思った。


ジャイアント馬場さんでもこんな長いのはしないだろうとも思った。


踏まなくてよかったとも思った。


動くウ○コはそれまでの人生で小学生の私はまだ見たことがなかった。



「ぎゃーーー」との悲鳴が出る予定であったが、それすらもでない。


「ひょえ、ひょぇ」と力なく、言葉にならない言葉を吐いてらしいのである。


脳と筋肉をつなぐ回路の糸が確実に切れていた。


かろうじて、


顔面蒼白、くるりと反転、前に腕をたらして、

ゾンビ状態でスタッスタッと機械的に歩いてあともどり。



アオダイショウかなあ。


ガキの私にはアナコンダに見えた。


だから、欧米人がウナギを嫌がる気持ちはわかる。




さてさて、むかし、物の本で読んだところによると「ヘビが嫌われる理由」は、

①擬人化ができないからだ、とあった。なるほどとも思う。
マンガにしたときに人間のようにならない。手足がないから。ウナギちゃんはヒレがある。ヒレが手になる足になる。


②長いから嫌いだ

という人もいたが、世の中細長くて柔らかいものはいくらでもある。


③歩き方が波打ってて気持ち悪い

でも、ラーメンだってうどんだって細長くて柔らかいぞ。動きゃせんが動いたって、別に気持ち悪くないぞ。

④うろこがいやだ

という人もいる。でも魚だって……。

⑤下をペロペロする

こりゃまずいな。何かにつけいやらしい人みたい。


やっぱ①~⑤+あの恐竜のようないかつい顔かな。




で、ここからウナギ君の話である。

ウナギ君はえらいのである。……アナゴ君のことはよく知らないで、知ってる人いたら教えてください。

①ヒレがあるからえらいのである。
②顔がかわいいからえらいのである。
③舌をペロペロしないからえらいのである。


とはいってみたものの、どれも決定的な答えにはなってないような気がする。


でも、ウナギ君のえらいのである。


蒲焼にしても、寿司にしても、ひつまぶしにしても、さらにさらに焼きおにぎりにしてもえらいのである。


そして すんごい回遊魚 なのだ。


フィリピン海溝で生まれ、黒潮に乗って日本の川にきて、また、卵を生みにフィリピン海溝まで。


そこん所そこらのシャケのおっさんには負けないのである。


おまけに水陸両用である。陸だって走っちゃうのだ。


さらに、海水、淡水両用である。


この前うちに来たウナギ君が言ってました。


「有明海のムツゴロウにに50メートル走、勝ちました」って。……??





で、ここで再びふと思った。



身近にして最も肝心な問題が一向に解決されていないことを。


私の近所にはハチュー類専門のペットショップがある。


アナコンダもワニもみんな大集合しているのである。


だれや、こんなもん作ったんは……? と思いつつ、別に文句を言える立場でもなく……。



で、問題とは地震である。


地震が起こって、あそこの水槽が全部割れて、


あいつらがみんなわしの家にきて、周りを取り囲んだらどうよ?







いよいよもって、シンボーたまらんのである!


きっと私のことだ、囲まれた瞬間に動転し、


あっちへホイホイ、こっちへホイホイ。


オイッチニィ、オイッチニィ、


と走らずともよいところを走り回り、


豆腐の角から、その辺の電信柱~人の家の門まで、角という角で頭を打つだろう。


そして、あっという間に伸びてしまうだろう。


速攻、三分切れ負けの自信あり。



伸びてしまえば、首に巻きつかれようと、かまれようと何ともない。


伸びてしまえばみなおーなじぃー♪♪ 

チャンチャンチラララララッ、チャ♪ チャンチャンチラララララッ、チャ♪


カモンベイビー、ハチュー類どもよ! と一度でいいから言ってみたい。…せめてもの強がり


これでは今日も寝れそうにない。




えっ、そのペットショップ家からどのくらい近いのって?


そうねえー。


ヘビ的に言うと、くねくね・3000回くらいで

ワニ的に言うと、腕立て伏せ・2000回くらいで

カエル的にゆーと、カエルとびで5000回くらいかな???


やつら仕事が速いのである。腹減ってると特に。ピンチになると特に。




どうやら、私が一番怖いのは


地震よりもホントはシンボーたまらん日のようである。


今日も地震があった。


もうそろそろ逃げることを考え始めている。