カツを揚げるのは面倒と思う向きもあるだろう。
キッチンが汚れるのを嫌う中流の白人アメリカ人は、
絶対というほど、揚げ物をしない。
大学3年の春休みにL.A.の郊外に3週間程ホームステイをしたが、
そこの家の奥さんも、先ず、揚げ物はやらなかった。
ご夫婦ともに肥っていて、
それでいて、ダイエットコークをよく飲んでいた。
料理は肉を焼いたりはするが味付けなどはされておらず、
ダイニングテーブルに何本も置かれた既製品のソースで喰え、
という仕来たりだった。
サラダも野菜をただ刻んだもので、ドレッシングも5種類以上既製品が用意された。
要は、味付けは各自好みでやれ、ということだ。
肉をスライスする電動カッターや、
野菜を刻む電動包丁みたいのもあった。
とにかく電動、既製品、で、味気ない食事に耐えるしかなかった。
朝は、ワッフルとかトースト、シリアル等で、
それも既製品であったり、スーパーで大量に買い込まれた工業品であり、
オレンジやグレープフルーツジュース、(ローファットと書かれていた)牛乳を飲んで、
美味しくない薄いコーヒーが用意された。
昼飯にはこれまた信じがたい品が紙袋の中に入っていた。
バナナかリンゴのいずれかがそのまま。
そしてスニッカーズ、一本。
たまにサンドイッチかとかぶりつくと、
単に、ピーナッツバターが塗ってあるだけのもの。
アメリカで体重が減った。
膚にシミが多いボインはやけに多いが、
食事が貧相だから、である。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210416/19/kobacabana/52/59/j/o0607108014927358896.jpg?caw=800)
夜が来た。夕方に家族でパターゴルフ場に行き、生まれて初めてゲートボールみたいな、
あのゲームを興じた。
そして車に乗り、外食するのか、と車窓からフリーウェイの流れる看板を眺めていた。
所々、中華系の文字が掛かれたネオンが見えて、
「ここにしない?陳さんの店、ってトコロ」と言いたいが我慢した。
帰宅して入浴をすることになり、髪を整え階下に降りると(二階にバスルーム)、
ダイニングテーブルに用意されていたのは、
なんと、
タコス、だった。
トルティーヤは間違いなくトウモロコシのでなく、小麦粉のもので、
サルサソースにしたって、ベースはトマト。
挽肉が乗っていて、それをまた、ダイエットコークで胃に流す作業となった。
これが、バイデンが育ったアメリカの強烈な思い出である。
★
私の朝食は、平日でもかなりの頻度で、自作である。
前夜、都内のテラス席で会食であったため、
残り物のカツを発見し、すぐにタマネギを刻み、麺つゆに味醂を足し、
甘めに仕上げてみる。
別に天才でもないけれど、この程度なら、それこそ3分で出来る。
バイデンやその同胞たちは、
朝、昼、晩に、違うメニューを食べている、
と彼らは思っているのだろうか。
小麦粉、肉、トマトソース。
それだけの品を、別の仕立てにしただけのことで、
腸の中では同じ排泄物に昇華すること、間違いなし、である。
私は狭いニッポンが一番好きだ。
そして、奥地で肩身は狭く不便であっても、
緑豊かで、ちょっぴり噂話好きな美マダムたちが山盛りの、
このバダイが、やはり、一番大好きである。