ついにこの日が | 春風亭小朝オフィシャルブログ Powered by Ameba

ついにこの日が

業界関係者以外の方はあまりご存知ないかもしれませんが、近年の入退院の繰り返しや、酸素吸入器を使うようになるはるか昔から、歌丸師匠はつらい持病と闘っていらっしゃいました
 
 
 
師匠の噺家人生で、体調が万全だった時期はそう長くはないと思います
 
 
 
それでも日々の稽古を怠らず、幕があがればお客様の期待に応えて熱演する姿は後輩たちの良いお手本でした
 
 
 
特に僕が素直に頭を下げたくなるのは、楽屋での様子と落語会の舞台袖で働いている方たちへの心配りです
 
 
 
色々な先輩方を見てきましたが、少しでも体調が悪いとブスッとして口をきかなくなったり、イライラして前座を怒鳴る方がほとんどです
 
 
 
もちろん、歌丸師匠も納得がいかないことがあれば本気で怒ります
 
 
 
ただし、体調不良で機嫌が悪くなり、楽屋の後輩たちを無駄に緊張させるようなことは決していたしません
 
 
 
前座の頃から先輩たちを見ていて、いちばんたちが悪いと思うのは楽屋で不機嫌な態度をとりたがる人たちです
 
 
 
歌丸師匠は、呼吸をするのが苦しい時でも
 
 
 
噺に集中するために話しかけられたくない時でも
 
 
 
笑って若手の話を聞いていたり、高座に上がる前は舞台袖にいる会館の若いスタッフたちに宜しくお願いします、と丁寧に声をかける方でした
 
 
 
車椅子で楽屋へ入り、ゼイゼイ言いながらもまわりの人たちを不快な気分にさせないように気をつかう、このバックステージでのメンタルの強さは並みの人間に真似できるものではありません
 
 
 
そんな師匠を支えていたもののひとつが反骨精神でした
 
 
 
会長に就任してからは、誰からもなめられたくない、馬鹿にされたくないという気持ちがいっそう強くなったようにお見受けします
 
 
 
口にはださなくても、協会のトップとして、落語協会や上方落語に負けてたまるかという気概が伝わってきました
 
 
 
最近は以前のように落語芸術協会イコール新作落語というようなイメージはなくなってきましたが
 
 
 
会長自らが圓朝作品をはじめとする古典落語に真摯に取り組むことで、古典が弱い協会という偏見をなくしたいというお考えをお持ちだったように思います
 
 
 
お亡くなりになる少し前、見舞いに訪れた後輩へ遺した言葉を聞いた時、そこにすべてが集約されているような気がしました
 
 
 
それについては、いずれ託された御本人が何かに書くことがあるかもしれません
 
 
 
 
我々の世界は、先輩が高座からおりてくると、お疲れさまでしたと挨拶を致しますが
 
 
 
この言葉がこんなに似合う先輩はかつていなかったのではないでしょうか
 
 
 
歌丸師匠には本当にお世話になりましたお茶