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朝の物語

作品名 サラブレッドのポコちゃん



ダンスインザダークとエアグルーヴの間に産まれた当歳馬は、5億3000万円でセリ落とされ、オーナーの気まぐれからポコちゃんと名付けられた



そんな名前でも、やはりポコちゃんは強かった



新馬戦は15馬身差の圧勝



そのあとも5戦5勝で皐月賞にのぞみ、ここでも後続に影を踏ませることはなかった



そこでむかえた日本ダービーは単勝一番人気の1・1倍



ポコちゃんに死角はないように見えた



いよいよゲートが開いた。まずまずのスタートをきり好位置をキープ、直線に入ったところでいっきに先頭に立ち、あとはどんどん差をひろげていった


誰もが勝利を確信した正面スタンド前で、酔っ払いのオヤジが大声で叫んだ。いいぞ、ペコちゃん~!!



ポコちゃんの耳がピクッとした



ペコちゃん…ペコちゃんて誰!?え、え、えッ、僕ってポコちゃんじゃないの


先頭を走っていたポコちゃんは、急に走るのを止め、騎手の制止をふりきってスタンドのほうに歩きはじめた


スタンドは悲鳴と怒号の嵐と化したが、今のポコちゃんにはそんなことを気遣う余裕はない


本当のことを聞き出さなくては。ポコちゃんは必死で、ペコちゃんと叫んだオヤジを捜した


しかし、とうとう見つけられず、大勢の関係者に取り囲まれて引き上げることになった、まさにその時



おしかったなペコちゃんビックリマーク



間違いなく、さっきのオヤジの声だ



ポコちゃんが振り返ると、そのオヤジのとなりにいたもう一人の男が、なんで負けるんだ馬鹿やろう!!オメエなんざポコちゃんでも、ペコちゃんでも、サッちゃんでもなんでもいいやッ!!と叫んだ



ポコちゃんの頭のなかに、選択肢がひとつふえた



サッちゃん…



ポコちゃんは自分がいったい誰なのかわからなくなった



それ以来、かいばも喉を通らなくなり、その後、8戦すべて最下位で引退となった



皐月賞馬ではあるが、狂気の血が流れる馬と評判がたち、繁殖馬になることはなかった



現在ポコちゃんは、馬事公苑で、みんなから日吉丸と呼ばれて幸せに暮らしている

END


=KOASA得意げ