相変わらず、猛暑に近い暑さが続く。

いつになったら涼しくなるかな?


仕事帰りに、市立図書館分館へ。

読み終えた四冊を返却し、新たにまた四冊借りた。

今日借りた本


五十嵐貴久

「交渉人  遠野麻衣子  ゼロ」

河出書房新社、202309


櫻田智也

「六色の蛹」

東京創元社、202405


中山七里

「祝祭のハングマン」

文藝春秋、202301


夏川草介

「始まりの木」

小学館、2020



久しぶりのしをん作品だが、相変わらずいいね。

都内で小さなホテルに勤めている三十代独身の続力つづき・ちから。

ホテルで上得意の死にかかわるお別れの会が開かれることになり、招待客への案内状の宛名書きが必要になる。何人かの筆耕士が登録されていたが、見本から選ばれたのは遠田薫。力には見覚えがないし、登録にはメールドレスしかない。退職した先輩に聞いてみると、遠田書道教室の主が登録していたが亡くなり、登録解除したあとに、跡継ぎが登録したようで、あったことがないという。

それでは挨拶方々、悔やみに訪れないとということで、力が向かうことになる。

メールには玉電沿いに五分歩く間にある、ぼろい家だという。

苦労して訪れた力が目にしたのは、イケメンだがずぼらそうな青年が、小学生たちに教えている書道教室だった。言うことや考え方には文句も言いたくなるが、書いた文字には圧倒された力。

無事に招待状の宛名書きもすんだものの、なぜか気に入られて、呼び出されることになる力。代筆の仕事を手伝わされることになる。依頼者の文字に似せたりして書くことだけは薫は見事だが、手紙の内容を考えるのが苦手な薫。人がいい力はホテルマンらしく、サービス精神で代筆の内容をひねり出す。

こうして、遠くへ引っ越す友人への小学生の手紙や、何でも受け入れてくれるが、気のない相手への別れを告げる女性の手紙を代筆したりする。妹が生まれて、家事の手伝いが増えたから、小遣いの値上げを要求する手紙を、小学生に頼まれたが、なぜか断り続ける薫。

どうやら普通の小学生の家庭のことがよくわからず、想像しにくて、筆が進まないらしい。

薫には特異な過去があることがラストでわかる。生活にだらしない母親と北関東の地方都市で育った薫。ネグレクトに近い生活で満足に学校にもいかなかった。母の死後、東京に出て、やくざの組員になる。その頃に入れ墨もいれていた。昔かたぎの極小な組で、貧乏ながら幸せな疑似家族を得た薫。故郷の友人に誘われて、知らずに鉄砲玉の手伝いをして、警察に捕まり服役した。

刑務所で書道を教えに来ていた遠田に見込まれ、出所後、組を抜け、遠田の養子となり、祖父母に近い年齢の遠田夫妻に育てられ、あとをついだ。

世話になった組長の解散式があると知った薫は、書道家として手伝うことを申し出るも、世間の目を気にして、力のホテルへの登録を解除し、力との関係も一方的に切る。

それが不満な力は、しばらくたってから薫のもとに押し掛け、ホテルとの関係は消えても、代筆の手伝いは続けることを認めさせる。

再読だったが、ほとんど覚えてなかった。

東京で音楽教師をしていた、踊場京香は故郷に帰ってきた。乳ガンが見つかり、すでに末期で、余命一年と言われた。仕事をやめ、故郷の海辺の町に帰ってきた。幼い頃に同じ病で母を亡くし、祖父母に育てられた。今は祖母が一人、実家の洋館で喫茶店を営んでいる。

実家に行く前に、海を見に行った彼女が出会ったのが、沖晴。自殺でもするかと心配し、声をかけたときに、彼が持っていたタイヤキをカモメが奪い、バランスを崩して海に転落。そんなおかしなであいだった。

沖晴は彼女の母校の高校2年に編入し、京香の自宅近くで独り暮らしをしていた。祖母の店の常連で、昼飯の弁当もつくってやっていた。

成績もよく、スポーツにも秀でた沖晴は部活に引っ張りだこで、六つのクラブに所属。京香がいた合唱部にいて、帰省してから、その手伝いをする京香は、沖晴と近づいていく。

沖晴の故郷は東北で、あの津波により両親と生まれる前の弟か妹を、一度に亡くす過去を持っていた。以来、彼に言わせれば、死神に要らぬ感情を奪われ、有り余る才能を得たという。唯一残された喜びにより、いつも笑っている無気味な存在だった。

そんな沖晴は、京香と親しくなるにつれて、なくした感情がよみがえり、才能をなくしていく。京香の病を知った時には、すべての感情を取り戻し、彼女をなくす悲しみに耐えなければならなかった。そんな彼に、生きることを望んだ京香。

彼女の死後、京香の元カレに世話になりながら、東京の大学に進んだ沖晴。四年生の時に、京香の元カレの嫁さんの出産に立ち会い、赤ん坊を見た時に、沖晴は初めて、京香の死を傷む涙が流れた。