再読だったが、ほとんど覚えてなかった。
東京で音楽教師をしていた、踊場京香は故郷に帰ってきた。乳ガンが見つかり、すでに末期で、余命一年と言われた。仕事をやめ、故郷の海辺の町に帰ってきた。幼い頃に同じ病で母を亡くし、祖父母に育てられた。今は祖母が一人、実家の洋館で喫茶店を営んでいる。
実家に行く前に、海を見に行った彼女が出会ったのが、沖晴。自殺でもするかと心配し、声をかけたときに、彼が持っていたタイヤキをカモメが奪い、バランスを崩して海に転落。そんなおかしなであいだった。
沖晴は彼女の母校の高校2年に編入し、京香の自宅近くで独り暮らしをしていた。祖母の店の常連で、昼飯の弁当もつくってやっていた。
成績もよく、スポーツにも秀でた沖晴は部活に引っ張りだこで、六つのクラブに所属。京香がいた合唱部にいて、帰省してから、その手伝いをする京香は、沖晴と近づいていく。
沖晴の故郷は東北で、あの津波により両親と生まれる前の弟か妹を、一度に亡くす過去を持っていた。以来、彼に言わせれば、死神に要らぬ感情を奪われ、有り余る才能を得たという。唯一残された喜びにより、いつも笑っている無気味な存在だった。
そんな沖晴は、京香と親しくなるにつれて、なくした感情がよみがえり、才能をなくしていく。京香の病を知った時には、すべての感情を取り戻し、彼女をなくす悲しみに耐えなければならなかった。そんな彼に、生きることを望んだ京香。
彼女の死後、京香の元カレに世話になりながら、東京の大学に進んだ沖晴。四年生の時に、京香の元カレの嫁さんの出産に立ち会い、赤ん坊を見た時に、沖晴は初めて、京香の死を傷む涙が流れた。