警視庁捜査一課の刑事、川村警部補は、世田谷にある自宅近くで起きた事件現場に立ち寄る。男性の遺体が発見されたが、傷跡は見つからない。鑑識が到着する前に、厚労省の外郭団体ドールと名乗る男たちが現れ、遺体と共に事件まで引き取っていく。所轄の署長には話が通じているらしく、一介の刑事にはどうしようもない。
しかし気になった川村は一人、ドールについて調べてみる。この事件に関連して問い合わせに訪れたサイバーセキュリティ対策室の警官の技師、高倉竜生も加わることになる。
28年前に天才的な科学者が産み出した七体のクローン人間。政府はその存在を隠し、ただ彼らを密かに監視することにした。当時の有名人の体の核により生まれた彼らは、児童養護施設で育てられ、養子となったり自立して成長した。その一号から三号までが殺される。ドールの現場責任者である朝比奈に頼まれ、殺人事件を調べる川村と高倉。
一人のドールが親の能力を開花させる。かつての有名ピアニストのクローン。ドールズの監視により、音楽とは無縁に成長した夏川は、一人の男、馬場のお陰で、ピアノ演奏に目覚め、偶然にももとの音楽家と瓜二つであることに気づく。父親ではないかと、軽井沢に隠棲する音楽家を訪ねていく。同行する馬場。後を追った川村たちは、馬場が朝比奈であることに気づく。朝比奈はドールズに反旗をひるがえしたのか?彼の狙いはなにか?
認知症のために施設に入れられていた科学者が殺される。その正体は、なんと流産して落ち込んでいた高倉の恋人だった。なぜ彼女が?朝比奈にそそのかされたのか?
高倉も恋人も実はクローンだった。二人もまたドールズに監視される対象だった。
クローンを世間に公表することを画策する朝比奈は、科学者の息子だった。その技術を公表すべきと考える朝比奈。倫理的に認めたくない川村たち。
いのちとは何か?