今作では、生き方が違う二人の女子高生が偶然出会い、奇妙な友情を育んでいく。

長距離走の天才的なランナー定本と、ストーリーには人を救う力があると信じ、学業そっちのけで、小説の執筆している明戸。

怪我がもとで、スランプになった定元は、今まで考えたこともなかった疑問にとりつかれる。何で私は走るのか?

知り合った明戸に勧められて、太宰治の走れメロスを読み始めるが、わずか一行さえ読めないほどの、読書音痴な定本。

結局、読み終えたものの、なにがなんだかわからないまま。

明戸は、定本をモデルにした郵便夫のファンタジー小説を書き始めるが。

定本は、明戸が好きだというサンテクジュペリの星の王子さまを読み始める。

二人が出会った図書室が工事で使えなくなり、二人は明戸が暮らす、大伯母のブックカフェで会うようになる。

離婚間近な両親のもとを離れて、ここに居候する明戸。伯母は引退した書物の修繕士で、傷んだ蔵書を直したいと、伯母に習う織合さんが、お礼がわりに店番もしている。店には常連の近所の本屋の店主や、織合さんの弟で、高校を中退したものが出入りする。

そんな彼らと接しながら、定本は考え続ける。生きることに意味などあるのか?今までただ走ることしか考えていなかった定本。ストーリーなんて必要か?

結局、彼女が導き出したものは、人生なんて、白紙のメモ帳みたいなものではないか?その上をただ歩いていくことが人生。何かを書き込むことがあるかも知れないが、それを読み返すこともなく、生きていく。

最後まで二人の女子高生は交わらないようだが、互いに気になり、付かず離れず、続いていくのかな?

再読だが、ほとんど覚えていない。今回もいい感じ。

父親を病でなくし、編集者の母親と暮らす高校生の亨は、何にたいしてもクール。図書委員として、図書室に通いながら、父親が残した本棚にある本を、借りて読む日々を続ける。

そんな亨は、同じ図書委員で後輩の女子、小崎優子の奇妙な行動に付き合うようになる。昼休みの屋上で、まるで雨乞いをするかのように、クラゲ降れと念じる不思議ちゃん。彼女はなかなか実現しないために、クラゲについて、専門書を借りて読むほどの熱心さ。

そんなことがありエルのか?彼女の目的な何か?

そんな優子が泣くのを目撃した翌日、なぜか、その地域だけに、クラゲが降ってきた。騒ぎにはなったが、優子が望むテロにはならなかった。

優子に会おうとするなかなか会えない亨。

クラゲが降るという話は、実は亨の父親の作品に出てくる話で、それに感動した優子の友達が彼女に教えたらしい。

売れない作家で、家族に迷惑かけたまま病死した亨の父親。わずか二冊だけの父の作品を読まないことにしていた亨。

優子の友達で読書好きな遥。彼女が死んだことがきっかけでクラゲは降った。彼女の死という理不尽さに立ち向かうために、優子はクラゲを呼んで、騒ぎをおこし、世間に復讐しようとしたのか?

亨は実は生前の父を好きだった。父のような作家になると、幼い亨は言っていた。父の作品に向かい、それを思い出した亨。そしたら再び空一杯にクラゲが降った。

久しぶりの万城目ワールド。

たわいもない話なのに、そこに、この世にはないものが登場。怖くもなく、なんか優しい、心暖まる存在。

二編収録。

最初は、京都の都大路を走る駅伝大会にはじめて出場する学校。直前にメンバーの一人が出られなくなり、急遽、補欠の一年生が選ばれる。方向音痴で、早いわけでもない彼女は、走路がはっきりわかるアンカーを勤めることに。同じ時間にスタートし、前後してゴールした他校の上級生と、翌日の京都観光で出会い、心を通い会わせることに。そのきっかけになったのが、彼女らが走っているときに、歩道を並走していた新撰組隊士たちを見たという、二人だけの経験だった。


二編目は、四年生なのに、就活も卒業のことも忘れてだらけていた若者。彼女にもふられて、暇をもて余す夏休み。友人から頼まれごとをする。借りた金も免除し、食事をおごってくれるという。祇園でのバイトが忙しくて、理系なのに卒業論文の見込みもない友人は、教授に頼みごとをされた。それは夏の最中の早朝に、御所にあるグラウンドで野球をするというもの。今は七十台になる、もと売れっ子芸子に世話になった六人の男たちが、毎年行っているとか。教授になったものや社長になったものたちが、身近から九人の人を集めて、野球をしているのだとか。主人公は、人数あわせのために雇われる。

そんな野球試合がお盆前後の御所グラウンドで行われる。

そして、人数あわせで来てくれた人のなかに、往年のプレイヤーがいる。戦前に活躍したピッチャー沢村など。

盆だからあの世から現れたのか?何より戦争のために、野球ができなくなった彼らが、それだけ野球が好きだっただけなのか?

一見あり得ないが、しみじみさせる物語。万城目ワールドだな。