再読だが、何年もまえだからか、ほとんど覚えていなかった。
主人公はアラフォー独身の学術書の編集者。母親と二人暮らし、小学三年生の頃、父親は家を出て失踪した。
変わった男で、仕事らしい仕事がないくせに、坂が好きで、ほとんど毎年のように、名前がある坂に暮らすことが好きだった。大学に勤める母親が家計を支えていた。
そんな父親の消息がわかる。亡くなり、遺言状があると知らせが来る。そこにはなぜか?父親が住んだ坂の名前が20くらい羅列されていた。どういうつもりで?
気になった主人公は、一人それらの坂をめぐることにする。
のぼり坂とくだり坂、どちらが多いと思うと、幼い頃に父親に聞かれたことがある。真剣に考えたが、答えられなかった。坂はのぼりとくだりがあるから同じだと言われた。
そんな昔を思い出しながらした坂道散歩。父親の人生とは何だったのか?
坂はどんな意味を持つ存在だったのか?
人生には山あり谷あり、のぼるときあり、くだるときあり。
しかし、後に無関心だったと思われる母親から、父はただ坂をくだるだけの人生だった、と聞かされる。
埼玉の裕福な実家を飛び出し、持っていた資産を食い潰すことだけを念頭に生きた男。
最後まで彼女には理解はできなかったが、しかし、一概に否定できない。