警察小説ではなく、異色の作品。作家とはいかなるものか?

ベストセラー作家岩佐がなくなった。作家仲間とは親しくしない孤高の作家だったが、大量の作品を書き、葬儀には多くの編集者や出版会社が参列した。

主人公は後輩の作家の古谷で、同じ盛岡の出身で、高校も大学も同じだった縁で、唯一の友人だった。

火葬を待つ間に、喪主の岩佐の息子悠が、一人の編集者に持ち出した話が、新たな物語の始まりとなる。

生前の父が、すごい原稿があると言っていたという。遺構?未発表原稿?

そんなものがあるなら是非見てみたい。出版してみたい。ということで、その原稿探索を始めたのは編集者の美知と、後輩作家の古谷。

四十年前に、純文学作品で受賞しデビュー。第二作では、うってかわって、明治時代を舞台にした歴史物で評判となり、以後その路線で有名になった作家。

美知にそそのかされて、岩佐の評伝を書こうかと思った古谷は、その下調べのために、岩佐に縁のあった編集者たちを訪ねて回るようになる。

デビュー作には盗作の噂があった?

果たして岩佐の過去には秘密があったのか?犯罪がらみだったのか?

故郷の文学サークルの後輩で、優れた才能持ちながら、運悪くデビューをはたせず、自殺した男。その男が持ち込んだ傑作小説を隠匿し、次回作を、自分のものにしてデビューした作家。

結局、見つかったのは作家の遺作ではなく、他人の作品だったし、作家の過去を暴くこともできないから、評伝もかけない。ゼロのままにするしかない。

今日は暖かくなると言うので、いつもより薄着にしたら、寒かった。昼前は曇り空で、あまり暖かくならなかった。

昼過ぎには晴れて、暖かくなったが。


仕事帰り、市立図書館分館へ。

四冊返却して、新たに三冊借りた。

今日借りた本は


横関大

「誘拐ジャパン」

小学館、202411


ラウラ・フェルナンデス

「ミセス・ポッターとクリスマスの町」

上下巻

早川書房、202410



私はたぶん初見だが、主人公の二人の刑事宮下と真壁のコンピは、かつて奥多摩で起きた事件でコンビを組み、おお手柄をあげた。真壁はその後、警視庁に上がったものの、彼の自分勝手さがチームワークを乱すため、彼一人だけの窓際部署特務班に所属している。

一方、宮下は高円寺北署の刑事課所属。

そんな二人が再びコンビを組むことに。

警察官僚の身内である帰国子女の大学院生、小牧グレース未歩。彼女が研究のために警察捜査の実際を体験したいと、警察庁高官の伯父にたのみ、捜査本部に加わることに。そんな彼女のお守り役として選ばれたのが宮下と真壁。だから、捜査本部の通常の捜査員としてではなく、自由が利く。

事件は神田川の護岸にある排水口で発見された死体から始まる。リンチを受けたような跡があり、長い時間水中にいたらしい。台風による雨のため川が増水して流されてきたらしい。

その水路は暗渠と呼ばれる地下水。その水路をたどり、死体が遺棄された場所を特定しようとはりきる未歩。暗渠についても詳しく、前もって調べてきている様子。そんな未歩に二人は少し違和感を抱く。彼女は本当に女子大生か?

遺体は大学生とわかるが、バイト熱心だが周囲の評価もよく、事件に巻き込まれる原因が見つからない。

捜査本部の捜査は遅々として進まない。第二第三の死体も同じ状況で見つかり、遺棄場所と日時は同じではないかと思われた。

やがて宮下真壁は少し離れた住宅街で遺棄場所を発見するが、なぜか未歩がすでに見つけていた様子。しかも刑事以外の捜査官が辺りを探ったあともあり、不審を抱く。そして、彼女が失踪した。

彼女の伯父が現れて、二人に背後の事情を説明し、未歩の捜索を依頼する。

事件の背後にあったのは、警察官僚の一族が特殊詐欺にあい、殺された事件。面子のため、秘密にされたその事件が発端となり、殺されたものの身内が一人で復讐をした結果が今回の事件だった。

ラストの逮捕辺りのことは、通常の捜査にはない非現実的なようにも思えて、少し白けた。

犯人はもと公安の刑事で、潜入捜査を命じられたが、精神に異常を来たし、退職。身内の不幸な事件が公にされず、犯人も逮捕されなかったことから、自ら見つけ出し処刑したらしい。

正直、読み終わってスッキリしないし、あまり楽しくなかったかな。

でも宮下真壁コンビの活躍はまた読んでみたいかも。