警察小説ではなく、異色の作品。作家とはいかなるものか?
ベストセラー作家岩佐がなくなった。作家仲間とは親しくしない孤高の作家だったが、大量の作品を書き、葬儀には多くの編集者や出版会社が参列した。
主人公は後輩の作家の古谷で、同じ盛岡の出身で、高校も大学も同じだった縁で、唯一の友人だった。
火葬を待つ間に、喪主の岩佐の息子悠が、一人の編集者に持ち出した話が、新たな物語の始まりとなる。
生前の父が、すごい原稿があると言っていたという。遺構?未発表原稿?
そんなものがあるなら是非見てみたい。出版してみたい。ということで、その原稿探索を始めたのは編集者の美知と、後輩作家の古谷。
四十年前に、純文学作品で受賞しデビュー。第二作では、うってかわって、明治時代を舞台にした歴史物で評判となり、以後その路線で有名になった作家。
美知にそそのかされて、岩佐の評伝を書こうかと思った古谷は、その下調べのために、岩佐に縁のあった編集者たちを訪ねて回るようになる。
デビュー作には盗作の噂があった?
果たして岩佐の過去には秘密があったのか?犯罪がらみだったのか?
故郷の文学サークルの後輩で、優れた才能持ちながら、運悪くデビューをはたせず、自殺した男。その男が持ち込んだ傑作小説を隠匿し、次回作を、自分のものにしてデビューした作家。
結局、見つかったのは作家の遺作ではなく、他人の作品だったし、作家の過去を暴くこともできないから、評伝もかけない。ゼロのままにするしかない。