面白かった、痛快だった。

無職の美晴がネットで誘われた高額バイト。深夜に塀で囲まれた屋敷に、二人の仲間につれられて向かう。ごみ屋敷の掃除だと思っていたら、二人は塀を乗り越えて侵入し、彼女まで入ることに。

金庫を開けたら空、主と思える老人が現れ、格闘技のできそうな二人は投げられ、美晴は気を失う始末。

目覚めてみたら、老人からある頼みをされる。彼は衆議院議員の百合根。前政権までは与党の重鎮だった。仲間だと思った二人は、もと自衛官で百合根の部下のようだ。

彼の依頼とは、なんと総理大臣の孫息子を誘拐すると言うもの。

彼女には昔誘拐された過去があり、それにまつわることで一家は壊れ、彼女自身もトラウマを持っていた。

嫌々ながら始まる誘拐、百合根は病のために途中で入院しリタイアするが、誘拐の要求の指示は書き残されていた。

この誘拐の目的は金ではなく、日本をよくするために政府に突きつけた三つの要求だった。

出産一人ごとに一千万円を支給すること

国会議員の給料を半額にすること

都内に集中する省庁を地方へ移転すること

国民にはありがたい話だが、政府にはとんでもない話。

誘拐事件として公表すること、政府への要求と返答を公開することを要求する犯人グループ。

警察の捜査が進まないなかで、バックで進むいくつかの動き。事件を知り報道したがるテレビ局、フリーの記者。政府内で時期政権を狙う官房長官。

不祥事でやめさせられた官僚が三人集められ、何者かに指示を受ける。首相が拒んでいる誘拐犯の要求をもしも受け入れるとしたら、どうすればいいのかを具体的に考えろと。

捜査本部に加わりながら、勝手な捜査を進めるはみ出し刑事と相棒になった若手刑事。二人はなんとラスト近く、犯人に肉薄するも捕まってしまう。そしてわかる、事件の背後にいた意外な人物を。

誘拐犯の要求が実現してしまうところまで描かれることで痛快だった。


朝から雨で暗かったが、昼には晴れて暖かくなる。

昨日の予報では、東京は雪になるかもといっていたが、どうなったかな?

こちらは水曜まで雨マークがついて、気温もまた一桁になるようだが、雪でなければいい。


仕事帰り、市立図書館分館へ。

三冊返却。うち一冊は途中まで、金曜が期限だが、平日だと読めないかと。しかも延長しようとしたら、予約が入っていて無理なので、ひとまず返すことにした。アミの会によるアンソロジー。架空の町を設定して、そこを舞台にした短編をいろんな作家が書いている。いつかまた借りられたら、最後まで読んでみたい。

新たにまた三冊借りた。

今日借りた本

 

大崎梢

「百年かぞえ歌」

角川書店、202410


井上真偽

「ぎんなみ商店街の事件簿Brother編」

小学館、2023


「ぎんなみ商店街の事件簿 Sister編」

小学館、2023




久しぶりの山本作品。やはりいいね。

東京近郊の人形作りの町。鐘撞町。

創業百八十年の森岡人形店の社長、恭平が主人公。跡継ぎになるつもりではいたが、一人前になる前に、先代の父をなくし、苦労して跡を継いだものの、苦労がたえない。

雛人形は部分ごとの分業で作られて、頭師、着付け師、髪付け師、小道具師、手足師の職人により完成する。

昔に比べ需要が減り、売り上げは落ちるばかり。しかも職人は高齢化し、跡継ぎの若手もいない。さらに、三十七才になれど、未婚の恭平では、家の跡継ぎもいない。

そんな恭平の前に現れたのは、なんとフィリピン人の若い女性。職人が通うパブで働くクリシア。酒の勢いで、弟子にしてやると言われたから、職人になるために来たという。いった職人は覚えていない。しかし、人形が気に入り、独自にしっかりと勉強しているのを知った恭平は彼女を受け入れる。

誰にでも優しい恭平は、人には好かれても惚れられたことがない。

また、高校時代、地元のボート部のキャプテンだった恭平は、部員が減り、担当職員もスポーツ音痴だと聞いて、母校のボート部のコーチもしていた。

お先真っ暗だった恭平が、クリシアをきっかけにした回りの人々の変化に巻き込まれ、結果的には店の将来が見通せるまでになるまでになる。

その顛末を描いた、心暖まる話だった。