青森県南部にある町にある図書館に勤める主人公実。三十五才になるのに、いまだ独身、非正規職員で、安月給でアパート暮らし。実家の母親は、ちょくちょく野菜と一緒に、見合い写真を送ってきては発破をかける。将来のために家族を持つべきだと。通帳の残高を見ては、いかに安上がりに生活できるかを考える毎日。笑顔を見せず、まともに挨拶もしない、つまらない女だった実。
そんな彼女を変えたのは子犬だった。移動図書館の車で、山間部の村からの帰り道で、蛇を引いてしまう。様子を見に降りてみると、近くの草むらに、痩せ細った子犬がいた。熊もでる山においておけないと、拾う。病院で見てもらい、一時アパートで預かることにした実。
話し相手ができ、散歩をするようになり、同じようにペットをつれた人に会い、挨拶を交わすようになる。子犬は小さいと言う意味の言葉から、ちゃっけと名付けた。
体が弱そうなちゃっけのためにと、食べ物の心配をしているうちに、自分まで栄養のあるものを食べるようになり、体まで変わっていく。
少し元気になったちゃっけを、移動図書館の車にのせていくようになると、読者にも好評で、利用者が増える。
心身が充実すると、仕事にもはりがでて、的確なレファレンスができるようになり、一度は諦めた司書資格にも意欲がわく。
そんな犬による癒しと、読書の楽しみを教えてくれる、心暖まる物語。