何となく気まずくなって、ひとりで馴染みのショットバーに立ち寄った。

ビルの3階。重たい扉を開くと、ゆったりとした時間が流れていた。
キャパ15人、薄暗い店内は椅子もテーブルのメタルでそろえられ、
少し寒々しくもあるバーは戸仲兄弟の父の幼馴染が経営する店だ。


「こんばんは。ケイちゃん、いつもの作って。」
「お、久しぶりやな。どないしとった?」

そう声をかけながら、いつものと言えるほど、来てへんやん、と突っ込まれた。


「おまえね、相変わらず親父ほどの歳の人間つかまえといて、”ちゃん”はないやろ。
ま、ええけど、兄貴にべったりの双子の片割、ひとりか?」

何だかわからない皮肉を言われ、にやっ!といつもの笑顔をされた。

アルコールが飲めない頃に、鈴音に連れられて此処には初めて来た。
子供は来んな。と言いながらも、ノンアルコールのカクテルを出してくれていた。
20歳の誕生日に初めて出された本物のカクテルはマリブをベースに作ったもの。
甘めのベースをスッキリと仕上げたオリジナルは、涼のお気に入りだ。


「なあ、ケイちゃん、最近、イッちゃんにあった?」
「いきなりなんや?おうてへんけど、話はしたで。兄弟やし。
 お前、週末よ~行ってるらしいやん。で、今日はどないしてん?」
「ああ、それ、今は聞かないで欲しい。今日、食事会だっただけ。
 違うんだ、俺が聞きたいのは、イッちゃんとそんなで、寂しくない?」

そんなに会わなくても済むものなのか?と他人の兄弟の距離感を知りたかった。

両手を組み、顎に手を当てて考えながら、
俺等はこのくらいがちょうどエエんや と言われた。あげく

「お前ら兄弟には物足らんやろうけどな。」

と声おあげて笑われた。

それ、どうゆう意味だよ。とカクテルの残りを飲み干して、同じものを頼んだ。
客相手が忙しくなったケイにそれ以上の話が出来なくなった。



物思いにふけって居ると、荒々しく隣の席を引く音にビックリさせられた。
にゅ~っと顔をのぞきこまれて、2度ビックリさせたのは、風だった。


「なに、お前。どんだけ不機嫌そうなの。眉間に皺寄せすぎて、頭痛いんじゃねえの?」

(何で居るんだよ。帰ったんじゃなかったのか?)

「鈴が心配してたぜ。で、俺が様子見に来た。」
「和音、どうした?」
「ああ、教会ついて、鈴に渡した。かわいいよな、溺愛ぶりにはビックリしたけど。」
「それそれ、なんで?どういう関係?なんであんなに溺愛してんだか?」

お前ね~と呆れたため息をつかれた。なんで呆れられるかが分らない。