草食系男子なんかじゃ物足りない。




やっぱりガツガツ来てくれると,

自分て結構いけるじゃん!とか,思ったり。





ねえ,どんなときに男の子になるの?


あー…意識されてないだけか。








いつもと同じ飲み。

いつもと同じ会話。

いつもと同じ…一方的な好き。







はふ~…おなかいっぱい!!


翔君さびしいだろうけど,お手洗い行ってきます笑



ん(笑) いちいち報告しなくてもいんだよ?(笑) 行ってらっしゃい






なんかいつもと違う気がする。

っていっつも思うけど,やっぱり今日も何もないんだな。



いつもはもうちょっとゆるい格好してるのに,

今日はジャケットなんだね。


それ,私のこと意識してたりとか(笑)

今日なんかあったりとか!!






…自分で考えてみじめな気持ちなる。






それでも私は,すっかり何の色もなくなったくちびるにグロスを塗る。

あなたに女と意識してほしい。

ただそれだけ。








たろいも



はい,おかえりなさい。…ねえ,くち乾燥すんの?



へ?



いっつもトイレ行ったらくちに塗ってるから。





あなたのためなんだけどね!!!!

あなたにとっては色気じゃなくて水分程度の問題なのね。





うん,くちすぐ乾燥する(笑)グロス,セクシーでしょっ





ってふざけて言う自分がイヤ。





セクシーだわー(笑)

でもそれ,また『うん』って言ったら,グロスとれちゃうよ?


『うん』って何?



なんか,女の子やるしょ。『うん』みたいな





翔君は,上下の唇をこすり合わせて口紅をのばす仕草をしていた。





ああ!(笑)何かと思ったよ。

それやらないと真ん中に色たまっちゃうから伸ばすんだよ。



あぁ,そなんだ(笑) いづいのかと思った(笑) そろそろ出る?



いづいとか色気なさすぎでしょ!(笑) そだね,でよっか!





ほんとに色気のない話。






いつもの公園の道を

いつもと同じように送ってもらう。

それだけでも,私は幸せだけど。


なるべく歩幅を小さくして,

少しでもあなたとの時間を長くしたい。







てか!!今更だけど,俺ちょっと今日ちがうしょ(笑)



あ,やっぱなんか違ったよね。

ちょっとジャケットとか着ちゃって,なんかあったのかと思った!

イケメーン(笑)



男としてちょっとかっこよくしねーとと思って気合いれてさ



いい感じだよ!(笑)





かっこいいよ。





ほんとに。




まあ,私に向かってもっと男っぽさだしていんだけど(笑)










男って意識しちゃう?(笑)




え?









そこは,『うん』って言って欲しかったなぁ~…ってずるいね(笑





え,あ……え?(笑)







立ち止まって,




私の真正面に姿勢を正して立つ。


















ちゃんと男に見られたくて,

気合いれちゃって,俺かっこわるいね(笑)











一気に私の体温が上がる。


のどがきゅっと締まるほど苦しくなる。









そんな目,するんだ。



















……俺のこと,男って意識したことある?








































『うん』って言ったら,




グロスとれちゃうよ?









出不精の私が最近スノボをはじめたのは、

付き合って2週間の彼のせい。

3つ上の彼は、佐藤隆太くん。

いま小学校3年生担任の先生。


どんな場所に行っても子供がいるとかまう。

子供と一緒にはしゃぐ彼の笑顔は、年上のくせに


イタズラにかわいい。


「明日晴れるみたいだから、スノボ行こう!」

スノボにでかける日は

友達のときから、決まって8時ちょっと前に

おっきなファミリーワゴンが私の家の前にとまる。


「もうすぐ家でるよー!」


彼からのメールを目をこすりながら見て青ざめる。




寝 坊 し た!!!!!!!!



現在7時半。

いつもはこの時間からメイクにとりかかるのに…

帽子はかぶるから髪はしばるだけ!

とりあえず顔洗って歯磨いて着替えて日焼け止め…


パウダーファンデを塗ってまゆげを描く。


ブーッブーッ 携帯にメール…

「ついたよー!二度寝してない?(笑)」


到着してしまった…

はあ…アイメイクは結局なにもしないでウェアを着て出発。


「おはよ!」


車からでてきた笑顔の彼は 私のスノボを受け取り車にいれる。


「おはよ…」

「え、元気ない??」


「今日全然目化粧してないの…」

「え!寝坊(笑)?化粧?あー……うん?」


「気づかないならいい!笑」

「笑顔ならなんでもかーわいいよ!行くよ!」


自分で言っておいて、慌てて乗り込む彼がいとしい。


信号待ち、彼は私の横顔をじっと見る。


「ほんとだ!いつもとまつげ違う!」

「正面から見てわかんないのに、まつげは気づくの??笑」


「…だって車で帰りいっつもマリコちょっと寝るしょ?

そのとき、あーかわいいなあって顔見てるから」

「…ねえ、そうやって言うの恥ずかしくないの…?」


彼はそれから顔を真っ赤にして無言になった。


「ねえちょっとメイクここでしていい?落ち着かないの笑。

 かわいいまつげになるね笑」

こちらを見ないで彼は「…うん。」とにやけた。

家から1時間半かかるゲレンデにつく頃には

私の目はぱっちりとしていて、

彼は晴天の空を見てすっかり上機嫌だった。


「今日もスノボ日和だー!!準備できた?」


こくんとうなずくと、私の左手が彼の右手を包む。


手をつなぐことがやっと自然とできるようになった関係。

自分たちでも初々しいと思うこの関係が、本当にいとしい。



「わあ!」

目の前で小さな子供が前のめりにつまづく。


私の手を勢いよく離し、子供の腕をつかむ彼の手。


「だいじょぶか?笑」






…いんだけどさっ








部屋の照明は暗いまま、カーテンと窓を少しだけあけた。


「さっきホントに用事あったの?」


目が赤いから顔を見れない。


「うそでしょ」

「なんでさっ」下を向いたままこたえた。


「わかるよ。なんか、ご機嫌ナナメだったしょ」

「そっちはご機嫌よかったね」

「まあね~ゆうこちゃん来たらね~笑」


ずきんとする。

ベタ惚れなんだね。


「仲良しだね。今年はマリコがあげなくてもチョコもらえるじゃん」

「あぁ~奇跡的にマリコ以外からももらえるかなあ?笑」

「あは笑。じゃあマリコからもらう必要ないね笑」



涙がどっとあふれてきた。

自分の言葉が自分をしめつけた。



「…なに言ってんの?」

「や~あんな可愛い子からもらえるなら、ホントあげる気なくすよ~笑」

「…それ、本気で言ってんの?」

「あははー笑」


嘘くさい笑い方をしてしまう。




「…泣いてるの?」



なんでコイツは色々気づくかな。


「窓もっとあけて。顔見せて?なしたの」



雄一のせいだよ…

カーテンはそのままで、窓だけそっとあける。


ちょっとした時間がたって、ガサガサ音がする。

次の瞬間、カーテンの前に人影ができた。



「!!」

カーテンがあけられる。



雪のつもったベランダに雄一がいた。



「ばっかじゃないの!?危ないしょ!!」

「しーっ!!危ないことはしないって笑

 俺も実はおっきくなったからね、これくらい余裕なの♪」


私の口は雄一の手でふさがれた。


びっくりしすぎて、雄一の顔を凝視していた。


部屋に入り、雪まみれになった靴下を脱いで自分の部屋になげる。

…自分の部屋に帰るときどうするんだろ。


ぼうっと考えていると

私の目の前で雄一があぐらをかいて座っていた。


「やっぱ泣いてたんだ」

「…危ないしょ…」

「あのね、危ないのはマリコだよ?俺が部屋にあがってんだから笑」

「なっ…!!」


自分でも真っ赤になるのがわかった。


「冗談だよ。…んな可愛い顔しないでよ笑」


雄一が目をそらすように俯いた。

なんてこと言うの?


居間にあがることはあっても、

お互いの部屋にあがることはもう何年もない。


こんなに近くにいたら、もう止めることなんてできないよ



「雄一はさ、なんでさ…」

「なあに?」

「なんでさ、マリコにゆうこちゃん…紹介したの?」


泣いているのはもう隠せない。涙声のまま話した。


「…それで泣いてたの?」

「や、そーゆうわけじゃ…」

「ゆうこちゃん、俺のイトコだよ?」





「は?」


「俺のイトコだよ笑。彼女だとでも思った?笑」


「……思ったよぉ~」


言い終わると同時にほっとして涙がさらにあふれてきた。


「ねえ、彼女紹介されたと思って泣いてたの?」

「…………ちがう」

「なに?ちゃんと言って?」





言ったのに。 本当に意地悪だ。



「………そうだよぉ…彼女かと思ってすっごいショックだった…


 いやだよ。やだ。

 雄一の彼女とか、紹介されたくない。

 雄一の隣にだれかいるのは…」

















気がつくと、私は雄一の腕の中にいた。











「大好きだよ」






さらにぎゅっと腕に力をこめて、私を抱きしめる。





涙があふれて、なにも見えない。














「今年のバレンタインは やっぱりいつもと違うのほしい。

 お前の気持ちがはいってるやつ。」








私は笑う。







「もうつくった」