決めれない人生ノープラン希さんのお話最終話です

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いつも不安だらけ。やりたいこともないのに年齢だけ上がっていく。辛い時はスピリチュアル本を読んで不安を沈めていた八代希さん。

元カレは22歳の時に一人だけ。しかも既婚者。今の仕事は飲食店の契約社員。

彼氏はできましたが、その彼から精神病で休職していたことがある事と薬の服用を打ち明けられました。

今の自分の仕事、彼の病気、将来の不安がどっと押し寄せます。

 

彼氏ができてしばらくして、希さんが住む地域で大きな地震がありました。

 

昨日のお話

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今日のお話は・・・

地震が起きた時の対応で褒められるとは思わなかった。今、街は非常事態なのかもしれないけれど、自分の人生はいつも非常事態で、安定なんてしていなかった。

 

将来の夢とか、やりたいこととか何にも思いつかないけれど、なんとか宿題だからこなした子どもの頃から変わらず、目標は相変わらず定まらず大人になっていった。

やりたいとか、やりたくないとかそういうのを頭で考えて決めるのはものすごく焦り不安になるけれど、地震の時の対応はやることが決まっているし、見て触って感じて体を動かし壊れたものを片付けるだけ。

 

店の賞味期限が近い食材を持って、浩二の家に向かった。

 

浩二「希ちゃん、来てくれたの?心配だった」

 

浩二は希を見て抱きついついてきた。

浩二の背中に手を回して、彼の呼吸を感じた。体中に安心が広がる。

 

希「うん。心配だったし、家の中グチャグチャなんでしょ。非常食とかある?」

 

浩二「いやー、そういうのないかな」

 

希「そうかなと思って店から持ってきたの。スーパーも閉店しているところあるし、コンビニもカップ麺とか品切れしてたよ。後で何か作るね。まずは、家を片付けよう」

 

浩二は目を感心したように希を見つめる。

 

浩二「希ちゃんタフだね」

希「そんなことないよ」

片付けをしていると、浩二のスマホがなる。

 

浩二「実家からだ。ごめん、ちょっと出るね。

あ、お母さん、こっちは大丈夫。会社は休み。うん。いまは、

彼女が家にきて片付け手伝ってくれてるの。あー、はいはい。分かった。今度連れて帰るね。

じゃ、電話切るよ。」

ポーン(ええええーーーー!連れて帰るってーーーー!)

希「えーっと、お母様はなんて?」

 

浩二「心配してた。ごめん、なんか一人で片付けれるのかって聞かれて彼女が来てるって言っちゃった。

そんなおつきあいしている方がいるなら、ちゃんと紹介しなさいって」

 

希「えー!まあいいけど、それってその…」

 

浩二「こんなタイミングでごめんね。

希ちゃんはなんでも話せるし、一緒に暮らしたいなって思っていて。今朝も真っ先に思い出した。」

 

希「それは私もそうだよ。」

浩二「嬉しいな。こんど連休とれそうなら、僕の地元に来ない?」

希「うん。ありがとう。」

それから、8月に希は1泊2日で浩二の地元(四国)に行った。

浩二の両親も90代の祖母もいい人で希を歓迎してくれた。

 

四国から戻り、希も母親を浩二を紹介し、順調に結婚に話が進んでいた。

順調すぎて怖いくらい。

2018年9月4日。台風21号が関西地方に上陸。

停電し、下水が溢れ、街はグチャグチャになった。

復旧ボランティアに参加し、ゴミ集めを手伝いながら、希は気がつく。

「こういう片付けとかゴミ処理って、私はそんなに嫌じゃないけどみんな嫌なんだなぁ

新しく企画を考えて作れとか、やりたいことは何かとか聞かれるとパニクるけど、

散らかってて、グチャグチャになって私がなんとかしなきゃいけない状況だと迷わないし、

マイナス状態を普段の状態にもっていくのは頑張りたくなるかも。

清掃とかゴミ処理関係の仕事って向いているのかも。

求人探してみようかな」

 

便利で普通の生活ができるときに、やりたいこととか、好きなタイプとか考えても分からない。

平和な毎日の中に溢れる自由な選択。やりたいこともなく、決められない私はその自由の中で溺れて迷ってしまいがち。

 

不謹慎かもしれないけれど、この状況で希は自分がどんな人間なのか確認しつつあった。

非常事態の時に、真っ先に顔が思い浮かぶ人は一生大事にしなきゃ。

 

(完)

 

連載は終わったのですが、希さんからその後、入籍のご連絡をいただきました。

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