▼△俺の妹が○○な訳が無い!〔桃矢の話〕△▼ | チョロ助を追いかけろ

チョロ助を追いかけろ

子育て奮闘記とHQとCCさくらな日々


やっと、あの友枝中学の制服姿に見慣れて来た。
相変わらず、慌ただしく出掛けて行くことがしばしばあるが、小学生の頃に比べるとだいぶ減った。

小学生と言えば、去年六年になった春は元気が無くてちょっと心配した時期もあった。本人には自覚がないらしく、それとなくその辺をイジると「さくら、元気だよぉ」と返事が返って来た。それも去年の今頃には、変に元気になって…この春には何するにも顔がニヤニヤしやがってって(ムカッ)
……それらの原因はイヤでも知ってるんだけどよっ!!!(ムカッムカッ!!)

この夏休みは、あのガキが香港に戻って……(このまま帰ってくんなって言ったら、さくらがまた元気なくなるのか…ちっ)……るから、元気がないのかと思いきや、毎日忙しそうに部活に行ったり、友達と出掛けたり…中学校生活を健全に送っているらしい。

そんな、妹の姿を見ながら、俺は大学行ったりバイトしたり…気付けば今日で夏休みも終わりだもんな。俺は今日、この日はバイトも入れずに予定を空けておいたんだ。あいつが寝てる間に、朝食を作り洗濯も終わらせた。あとは掃除を終わらせてから…手伝いだな。7時半か……いつまで寝てるんだったく。俺は扉を開けず、廊下から声をかける。流石に中学生だもんな、勝手に扉を開けるわけにはいかねぇ。

「おいっ!いつまで寝てんだ?怪獣。明日から学校なんだぞっ!寝坊の癖どうにかしろっ!…うわっ!!?」
「さくら怪獣じゃないもん!!それにとーっくに起きてるよっ!今日はお出掛けだから、仕度してたの。」扉を開けてさくらが見上げてこっちを睨む。パジャマじゃなく余所行きの格好で。
「なっんだよっ!いきなり扉開けんなよ…。って出掛けんのか!?」
「あ、もちろん、ご飯は食べて行くよ?」俺の言ったことが不思議なのか首を傾げてる。
「そうじゃねぇよ。」だって今日は8月31日じゃねーか。
「……?」


「わーい!ホットケーキだっ!いただきま~す。」好物を見て、さくらが満面の笑みを見せる。この顔が見たくて作るんだけどよ。この顔は昔から変わんねぇな。俺は自然と顔が綻ぶ。って、そうじゃなくて。
「……本当に出掛けんのか?」何度も言うが今日は夏休み最終日だ。
「なによぅ。良いじゃない、お出掛けくらい。私今日はお洗濯の当番でもお掃除当番でもないよ?……あ、もしかして…小狼くんとお出掛けだから怒ってるの?」
「な、なにっ!!あのガキと出掛けんのかっ!!?」
「……いいじゃん…。」

なんだその顔は!怒ってるとも、いじけてるとも取れるその表情…。あのガキと出掛けるってのは確かに、気にくわねぇが、俺の言ってるはそこじゃない。い、いやそこもそうだが…だって今日は…。

「……今日が何日だか知ってるのか?」
「……?さっきから、お兄ちゃんおかしいよ?…今日は8月31日でしょ?解ってるよそんなこと。夏休み最後の日だから、お出掛けするんじゃない。」

俺はきっと今、凄い呆気に取られて…口開けて間抜けな顔をしているに違いなかった。こいつが言った言葉『夏休み最後の日』というこの表現に驚いた。そうだその最終日にお前は出掛けるというのか?そんな俺の目の前を食べ終わった食器を持って通り過ぎる。

「自分の食器くらいは片付けるから。お兄ちゃんは今日は大学?バイト?夕食当番はお父さんだったよね?夕食には帰って来るから…。お兄ちゃん?」

固まっている俺の様子が気になったのか、食器を洗う手を止めずに顔だけこっちを見ているさくらに気が付いた。

「あ…いや…。お前…宿題は?」
「宿題って…夏休みの宿題のこと?」俺が辛うじて発した言葉を確認すると、顔を流しに戻しさくらが言った。
「そうだ、夏休みの宿題だ。やらなくて良いのか?」
「それならとっくに終わったもん。」
(はっ!!!?)さくらの言葉に又しても、俺の思考回路が停止した。
「それじゃ、戸締りよろしくね?いってきますっ!」

そう言って固まる俺の前を、可愛く着飾った妹が通り過ぎる。振り返ることも出来ずにいると玄関の扉が閉まる音が聞こえた。


終わった?この最終日を待たずに、宿題を終わらせたのか?
苦手な数学の問題集も、読書感想文も、自由研究も…全て終わらせたのか?あいつが!?
中学に上がって苦手な計算に泣きついて来ると思っていたのに。
自由研究だって、今までよりちょっと思考を凝らした事を助言してやろうと考えていたのに……。

そう、そうだ、俺はそのために、今日という日には何が何でも予定を入れずにいたってのに……。


『それならとっくに終わったもん。』


はは…ははは…そうか…、終わらせたのか…。
変な力を入れて構えてたのは、俺だけってことか………。

何がどうして、あいつがこんなことを成し遂げたのか…………。

考えただけでもムカつくっ!!!


「あーあ。やってらんねぇ…。」
朝からどっと疲れに襲われた。
俺は徐にポケットから携帯電話を取り出し、履歴ボタンを押す。
「………あ、ユキ?俺だけど…ああ…今日…暇?」











END









◆◇◆◇後書き的な◇◆◇◆
木之本家夏の風物詩。夏休みの最終日、さくらは宿題に追われる。という物。しかし私が去年書いたお話で、宿題は早くに終わらせた。という物を書いています。→こちら。その後日談的なお話。
さくらちゃん中学一年生の夏休みです。ちょっと早いですが夏休み最終日のお話。突発に思いついたので書いてみました。
タイトルは…そんなアニメ?ありましたよね…。
桃矢お兄ちゃんになり切れているかな?