白川公園では、毎朝のラジオ体操の前後に園内をゆっくりと周回し、季節の移ろいを楽しんでいる。
園内ではビアカンサスの花があちらこちらで咲き始めていた。
すらりと伸びた茎の先に咲く淡い紫色の花は涼しげで、蒸し暑い梅雨空の下でも爽やかな印象を与えてくれる。
初夏の訪れを告げる花として、毎年この時期になると目を楽しませてくれる存在だ。
また、科学館庭園に植えられているニュートン由来のリンゴの木も、たくさんの実を付けていた。
春先に比べると実はひと回り大きくなってわずかに色づき、順調な生育ぶりがうかがえる。梅雨時特有の湿度の高い空気は人間には不快だが、植物たちにとっては成長に欠かせない恵みなのだろう。
午前中は、先日から取り組み始めた千手観音像制作の下準備を進めた。
三角柱状に加工した檜材に、完成形をイメージしながら要所ごとに墨線を描き込み、外形を定めていく作業である。
今回挑戦する千手観音は、頭上には化仏を戴き、足元の岩座には地蔵菩薩が納まる構成となっている。
さらに中央には合掌する両腕と蓮華を捧げる両腕の二組があり、そのほか胴体の左右には二十本以上の手が配される。
省略と力強い造形を特徴とする円空仏としては、加工箇所の多い難しい作品である。
写真の陰影や濃淡を読み取りながら、必要な部分を残して不要な部分を削り落としていく。そのため、最初の墨付けは完成度を左右する重要な工程だ。
一本一本の線に完成像を思い描きながら、慎重に材料へ描き込んでいった。
千の手を持つ慈悲深い観音様の姿が、檜の中から少しずつ現れてくることを想像すると、これから始まる本格的な彫刻作業への期待が膨らむ一日となった。





