笠岡市でのお試し暮らし体験記⑬では、⑫に続いて総社市のことを書きたいと思います。

 

⑫でも少し触れましたが、総社市は人口が増えている地域として有名で、

また西日本豪雨の災害対応でも注目され、よく耳にする自治体となりました(と少なくとも私は思っている)。

それ以来、私的には総社市のことはずっと気になっており、

今回の訪問を機に少しだけ調べてみたところ、このような記事を見つけました。

以下、引用します。

 

 

少子高齢化に伴う地方自治体の人口減少がいわれて久しいが、こうした状況の中、

人口増の更新を続けている地方自治体がある。人口6万9414人の岡山県総社市。

平成30年に西日本豪雨で被災したが、その後も人口は増え続けている。

同市は「市民ひとりひとりに寄り添う行政」をかかげ、障害者千人雇用を実現。

外国人労働者、LGBT(性的少数者)、ひきこもり、災害時の被災者の支援に取り組む。

 

この文章を目にするだけでこの自治体がきちんとした自治体であることが伺え、

「そりゃそうした町に住みたいと思う人も増えるわな」と率直に感じています。。

「体験記」を書きまくっているので、このブログを読んでくださっている方はおわかりと思いますが、

私は現在、新天地・多拠点を探すためにお試し移住を複数の自治体でさせていただいています。

「移住」に関する取り組みは自治体によって異なり、自分自身はもちろん、

人はどういうことを基準にして「移住先」を決めるかを日々考えながら暮らしていて思うのが、

「あまり目を向けられないところ」にきちんと目を向けられている自治体かどうかが

結構重要なのではないかなということです。

いつかこの件はまとめて書こうと思いますが、

いざ移住の話となると「豊かな自然があっていいところ」、「人がやさしいところ」などが前面に出てきます。

自治体側からしたら「移住してほしい」のでそうするでしょうし、

豊かな自然は絶対的に必要であり、

人がやさしいことも間違いなく重要であるということはもちろん理解しています。

しかし、そのキラキラとした言葉だけを出して、

実際にはあまり目を向けられないところーたとえば差別の問題や災害対応・社会課題ーを

放置しているような自治体もあるのが実際だろうと感じています。

そもそも統一協会と自民党の問題で(より)明らかになったように、

日本という国は差別の問題に積極的に取り組めていません。

それどころか積極的に差別構造を残し抑圧し続けているのが現実です(日々憤ります)。

また、コロナ禍で満足な補償や給付金は届けられず、

エッセンシャルワーカーなどの賃金は相変わらず低いままであることからもわかるように、

災害対応や社会課題においてもこの国は自助や共助ばかりを求めます。

それでもこの国が好きな人たちはもちろんいるわけですが、この国から出たいという人(私を含めて)もかなりいる・増えたのではないかと思うのです。

それは自治体単位でも同じです。

単純に考えて「こういう人しか受け入れません」というメッセージを出している自治体と、

「どのような人(反社会的なものを除く)でも受け入れています」というメッセージを出している自治体とでは

「対象」の幅が違うわけであり、後者の方が人が集いやすいでしょうし、しなやかな町になるのは当然です。

私は東日本大震災の「復興」を見てきたので、

そのメッセージ(もちろんここで言うメッセージは実践されているという意味です)があるかどうかで、

人々の生活や生活の基盤となるまちづくりがどれだけ左右されるかということを強く実感してきました。

その町が何を大事に考えているか・どの目線でまちが見られているのか…。

普段「あまり目を向けられない」そうしたことにきちんと向き合えているかどうかで全然違うのです。

同じ記事で、総社市の市長の災害対応についても記載されていたため、少し長いですが引用したいと思います。


 

西日本豪雨で総社市は13人の尊い命を失った。これまで総社市は全国どこへでも、

市が判断すれば支援に駆けつけることのできる災害支援条例を制定し

年間1000万円の予算を計上している。私自身もチームの先頭に立ち現場での支援活動を行ってきた。西日本豪雨では私自身が被災地の災害対策本部長になった。あの夜の恐怖は忘れない。

(略)

災対本部で直感的に決心したことが3つあった。

1つ目は「法律や条例を破る覚悟」。法律に従ったままで市民は救えない。

2つ目は「決断は1分以内にすること」。リーダーが迷って判断が遅れれば市民の命は失われる。

そして、3つ目は「公平平等は追い求めない」。

できることを瞬間的に行おうとすると平等は遠ざかるからだ。

この3つのことを肝に銘じ、腹をくくることにした。当然、自らの進退をかけて行うことになる。

(略)

危険だが町内会長を土砂降りの夜中に緊急招集した。

「1軒1軒ドアをノックしてお年寄りを担いで逃げてくれ!障がい者を誘導して逃げてくれ!」と

私は絶叫した。

(略)

そんな時、アルミニウム工場が水位上昇で大爆発し、1つの集落が被害を受けた。

住民はみんな血だらけだという。

「すぐ迎えに行け!マイクロバスの免許証は不要だ!今すぐだ」と指示した。

市が流されるかもしれない恐怖の中で激闘8時間の末、明け方にかけ、

われわれは8635人の市民を避難させることに成功した。

そして、安堵するいとまもなく、避難者を守るために全力を傾けた。

「明日、床上浸水した方に現金5万円、即刻お渡ししよう」と言った。

職員からは「無謀です。罹災(りさい)証明ができないと公平ではありません!」と反対されたが、

「今何が必要なのか、被災者の立場になって考えよう」と、実行した。

のちに被災者から聞かされたのは、混乱がピークの被災直後に

5万円の現金が支給されたことがなにより一番うれしかったという喜びの声だった。

避難所の前にあふれかえったペット同伴者のためにペット避難所を市役所に設けた。

ペットも家族の一員だからだ。

避難所から最後の1人が卒業するまで私は最速スピードを落とさなかった。今年も雨期が迫る。

また襲いかかるかもしれない災難に、西日本豪雨の経験を生かし同じスタンスで対応する決意でいる。


もはや書くまでもありませんが、、平時から災害支援条例を制定して多額の予算を計上していること。

「法律を破る覚悟」「リーダーの判断の重さ」「公平平等は追い求めず瞬間的に行う」という方針を掲げ、

「お年寄りを担いで逃げてくれ!障がい者を誘導して逃げてくれ!」と叫ぶ、

「免許証は不要だ!」と指示する、被災後即座に5万円を給付する、

ペットのための避難所を市役所に設ける…今後もその対応をする決意を忘れない…。

聖人君主で万能な人はいないですし、市長さんのことは知らないので

実際についてはわかりませんがー判断のミスがあれば逆の結果も起こりうるわけですしー

少なくともこの記事と当時の動きからは「あまり目を向けられないところ」に

きちんと目を向ける市長さんであり、そういう町を目指していることがわかります。

ダイバーシティ・多様性・インクルージョンとよく言われる時代になってきましたが、

これは○○ウォッシュ的に使われる可能性もあるものであり気をつけねばならないと思いつつ、

それを実践できているところは確かに危機に強い=しなやかで安心して過ごせるだろうと思ってきました。

移住先の町が自然が豊かでも、人が「やさしく」ても、

しなやかではなく、特定の人だけを優遇する構造になっていれば本末転倒で、人はいずれ出ていくでしょう。

たった一日訪れ、少し調べた程度ではありますが、総社市から学ぶことは本当に多いように思います。

最後に(話変わりまくりますが笑)総社市で人気の「総社小学校ライスカレー」。

なつかしさ全開で最高おいしかったのでおすすめしておきます~

(おすすめしたい気持ちを起こさせるかどうかも大事な要素だと思うのでその意味ではリンクしているかと)