時に政治のことなどをからめつつも、このブログでは最近は主にお試し移住体験記を書いています。

お試し移住体験記は自身で書いていてもワクワクするようなもので、書いているととても楽しいのですが、

その一方で、腐敗した政治の中に常にいることの嫌悪感・危機感・憤りの感覚も

私の中では決して切り離せないものとなっています。

このアンビバレントな感覚でいる私が、

自戒としていつも思っているのは「お試し」ができる「特権」についてです。

そのことについて簡単に書きたいと思います。


 

「特権」については上智大学の出口真紀子先生のお話・定義をよく使わせてもらっていますが

(主にはてななどで多く引用させてもらっています)、

あるマジョリティ側の社会集団に属していることで、労なくして得ることのできる優位性

のことを指します。


 

私は現在「お試し移住」をさせてもらっていますが、

「お試し」とは言え、「移住」が簡単にできるのは多くの「特権」を有しているからだと考えられます。

暮らしていけるレベルではないのですが、私はいまリモートワークができているため、

どこにいても(Wi-Fiがあれば)仕事ができるという「特権」を持っています。

エッセンシャルワーカーと呼ばれる方々は、

そこにいる人や場所と切り離せないために、容易に移動はできない仕事です。

コロナ禍においては、そうした人たちは危険を省みずにその業務に従事しており

(それによって私たちはどれほど支えられているか…)

私のようなリモートワークという安全な場で仕事ができるというのは「特権」以外の何物でもありません。


 

また、私はある程度(生まれつき)健康な体であるという「特権」を持っており、

車を所有し運転ができるという「特権」(車を持てる環境・免許を取るまでの道のりなどにおいて)を

持っているがゆえに、容易に移動することができます。

そうした人が容易に移動できる、移動が許される社会であるから「移住」ができていると言えそうです。

時代が異なれば、こうした経験はおそらくできていないでしょうし、

もし私がいわゆる健康な体で生まれていなければ、こうしたことはできていません。


 

「お試し」ということに関しても、これは自治体による制度であるため、

そうした制度を利用することのできる・申請などをすることのできる力を

私が偶然備えていたということも「特権」と言えるでしょう。

こうした制度がなければ、「お試し」などという位置づけの「移住」もできなかったと思います。


 

あげていくときりがないわけですが、リモートワークができることも、健康な体であることも、

車・免許があることも、移動が許されることも、制度を利用できることも、

どれもすべて「労なくして」得ることができていることです。

もちろん、これらは私が何も努力しなかったという意味ではありません。

リモートワークができるためのPC作業、健康維持のための食事や運動、

免許を取るための勉強と訓練、移動のための手段や情報の確保、

制度を調べ申請するための段取りなどができるまでにはある程度努力が必要であり、

私はそれらを習得するために確かに努力したと思います。

しかし、そもそも努力できることも、努力した結果それらが得られることも、

それは私がマジョリティだからです。それが得られる「特権」があるからに過ぎないのです。


 

誤解がないといいので書いておくと、

これは決して「私は恵まれている」アピールをしたいがためではありません。

「このことに感謝して生活します」アピールをしたいがためでもありません。

ここで言いたいことは、自身が「労なくして」これらを得られているのは

「特権」があるに過ぎないことを常に忘れず、傾いた社会の傾きに加担しないためにはどうしたらいいか、

社会的公正の実現のためにどうしたらいいかを考え、動かないといけないということを

自戒としていつも思っている、それが必要ではないかということです。

恵まれていることの自覚や、それに感謝して生活するということなどは前提にあるもので、

その先に進まなければこの社会は決してよくなりません。

それは何かを手放すことをも意味するかもしれませんが、

無理のない範囲で、その先に進まなければといつも思うのです。

政治や不正に対して考え声をあげることも、社会運動をすることも、

困難に陥っている(歪んだ構造上に陥ることになっている)人とともにあることも、

地域の暮らしをよりよくすることも、そういうことだと私は思っています。

もっと先がきっとあり、それを必要としている人がいるだろうということを想いながら、

日々生活をしていきたいと改めて思うため、ここに書いておきました。

そうした仲間と共に歩めたらうれしいです。

お試し体験記のことなどは私の喜びのためでもありますが、いろいろな地域や豊かな資源があり、

大事にされていってほしいという思いも込め、今後も書いていく予定です。